第18話 セレス君は心配性
マリルに誘われて森に来た。
黒トカゲを食べて確かに強くはなったけど…
もっと強いのが山程いるんだから、心配だ。
出来る事なら街から出て欲しく無いのに…
「セレス、ねぇ、私ってどれ位強くなったのかしら?」
「ほんのちょっとですよ? 期待する程じゃありません」
「だけど、伝説の冥界竜バウワーの肝を食べたのよ?そんな訳ないじゃない」
「鳥や普通のトカゲならどうにかなるかも知れないけど、『我こそはこの世の支配者だー-』なんて変人に少し抵抗できて何とか逃げ切れる位なんです!やりあったら、運が良くないと勝てないんです!それしか強くなっていない。ああぁ、なんで周りは無責任な事言うんですかね?無責任すぎます...ただの黒トカゲの肝を食べただけなのに、まぁ大きい黒トカゲですけど」
「違うから!冥界竜バウワーだから!それに『我こそはこの世の支配者だー-』なんて言うのは変人じゃ無くて魔王だから!それは別にしても、私ってジョブが無いから魔法が真面に発動しないのよ!だからどんな魔法でも使えたら恩の字なのよ!」
「ジョブが無い? それはマリルにとって困ることなの?」
「そうよ、平民ならともかく貴族なら、最悪なのよ!おかげで家を追い出されたのよ!」
「それじゃ、マリルはジョブが欲しんだ」
「当たり前じゃない? どんなジョブでも例え『お針子』でも欲しいわよ!」
そうか、ジョブってそんなに欲しいものなんだ。
僕は出来損ないだけど、ほぼ全部のジョブを持っている。
そんなに欲しがるものだったのなら、もっと早く気がついてあげれば良かったな。
僕のジョブには『付与師』がある。
僕は鑑定でマリルのジョブスロットを見た。
う~ん二つしか無いのか?
勇者と聖女は特別だから、付与は難しいし、僕ですら上手く使えない。
そう考えたら、う~んやっぱりマリルが心配だから『剣聖』『賢者』が良いな。
うん、これが多分ベスト、間違いない。
「それじゃ、マリル『賢者』『剣聖』とかのジョブは欲しい?」
「四大ジョブじゃない?欲しいに決まっているわ!」
「そう?」
それじゃこの二つをコピーして付与と。
ついでだから、スキルも見るかな。
あちゃ~スキルスロットも3つしか無いのか…
だったら『全属性魔法の才能』『限界突破』を入れてあと一つは空けておこうかな。
「当たり前じゃない? そんなジョブが手に入るなら、死ぬほど努力するわよ!」
良かった、もう付与した後だよ。
「それじゃ『限界突破』とか『全属性魔法の才能』とかのスキルは?」
「それ伝説のスキルだから!欲しいに決まっているわってなんで私光っているのよ?」
それじゃ付与。
「マリルが欲しいっていうから『付与』してみました」
「それってどういう意味?」
僕はマリルに付与した事について話した。
◆◆◆
「ハァ~それじゃ私は『賢者』に『剣聖』のジョブに『限界突破』と『全属性魔法の才能』のスキル持ちになったというの?」
「一応はそうだけど、碌なもんじゃないよ?」
「何でよ!伝説みたいな話じゃない!」
「多分、剣聖グラフォードになら勝てるかもしれませんが、成長しても本当に強い『剣聖、ソード』相手なら確実に負けますよ? 魔法だってたかが知れています」
「ちょっと待って『剣聖グラフォード』になら勝てるって言ったわよね!グラフォードって伝説のドラゴンズレイヤーじゃない?ソードに負ける? 言葉使いはきもいけどソードは歴代最強の剣聖よ! ソードに負けるって少しは持つの?」
「少しは…ですよ」
「剣聖ソードってどんな相手も一太刀で倒したって言う伝説があるのよ?」
「まぁ成長したらですよ、マリルも『腐っても剣聖』なんだからってことです。それじゃ、折角ですから魔法の練習でもしますか?」
「私、魔法が本当にうまくいかないのよ…」
「それじゃ、簡単なファイヤーボールからいきましょう」
「そうね、私やってみるわ!ファイヤーボール...何?」
杖が光るとまるで小型の太陽のような輝きのボールが出たわ
どう見ても直径で10メートルは超えているわ。
それが木々を燃やし尽くしながら飛んでいき数百メートルの木々を燃やしてようやく止まったのよ。
「あああっ、あのセレス?」
「やはりこの程度かぁ~やはりマリルが心配です。できたら街から出ないでほ…」
「いあ…あのね、セレス…これファイヤーボール…」
「なんで驚いているのですか、こんなの初歩の初歩です」
「いや、これ只のファイヤーボール...」
「まだまだ未熟ですよ!僕がシュミレーションで戦った変人なんて『これが余のファイヤーボールだ』なんていって都市一つ壊滅させるファイヤーボールを投げるんですよ! もっと凄いのもいるんです!そのレベルじゃ、弱い変人とどうにか戦える位なんです!」
「え~と多分、それって確か物語に出てきた『大魔王』だからね、沢山の勇者が殺されたって話だわ!冗談よね!」
「ただの変人です。あとはこれ試しに使ってみてください」
ただの鉄の剣よね?
「鉄の剣がどうしたの?」
「折角だから使ってみない?」
「そうか、私『剣聖』でもあるのね!」
「まぁどちらも女神様がくれる物を解析して作った劣化版ジョブ、アレス様曰く『始まり』には届かないゴミだそうです」
「そうねって、アレス様絶対耄碌していたんだわ、岩も木も簡単に斬れるじゃない? 凄いわ」
「まぁ『腐っても剣聖』だからね!だけど、この程度じゃ、喋るトカゲには適わないからね、鳥や喋らないトカゲだって10も倒せば限界だから!本当に気をつけてね…僕は心配で仕方が無いんだ…マリルが怪我したら僕は、僕は…」
全く、それってワイバーンや地竜の10体位なら倒せるし、将来はあのグラフォードに勝てて並みの魔王には勝てるって事よね。
だけど、それでも心配するのがセレスなのね。
「そうね、セレスが心配するといけないから、気をつけるわ」
「うん、そうしてくれると僕も嬉しいよ」
本当にセレスは心配性なんだから…困ったもんだわ。
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