第12話 二人が本当に欲しかった者
「スゲーなこれ、恐らくは個人として歴代一位の討伐だ!それで相談なんだが、流石にこの金額を払うと他の業務に差し支える!今日は金貨100枚にして残りはギルドの口座に分割で入れる形でお願い出来ないだろうか?」
「セレス、どうする?」
幾らパートナーでも今回稼いだのはセレスだわ。
だから、セレスが決めないとね。
「マリルは今現在お金ってどの位必要かな?」
「少し贅沢をするとしても金貨5枚もあれば充分よ」
大体、私は今の生活で充分だわ。
独りじゃないそれだけで良いのよ。
「それじゃ、余裕を持って金貨10枚残して口座に入れて置いて下さい」
「すまないな1か月位で全額入れて置くからな、あと二人とも今日からランクはCだ。確かに凄いが、一度の狩であげれる限界が此処までなんだ!その代わりもう一回大きな依頼をこなしたらAにあげるから許して欲しい」
「別に構いません、寧ろ有難うございます」
「ああっ当然だ、ワイバーンを楽に狩れる程の人材はこのギルドには居ない。これからも宜しく頼むぞ!それじゃ悪いが、これからワイバーンの解体やオークションの手続きで忙しくなるから、これで失礼する」
「有難うございました」
◆◆◆
「凄いじゃないセレス、気がついたら私もCランクよ、私何もしてないのに。セレスありがとう」
「寧ろ、お礼を言いたいのは僕だよ」
「何で? 私、何もしてあげてないわ」
「美味しいご飯をくれました、暖かい寝床をくれた、廃棄された僕に居場所をくれました、何時も傍に居てくれた!これは僕にとってかけがいの無い物です」
そんなのは当たり前の事だわ
◆◆◆
違う、マリルは優しい。
自分の生活が厳しくても、僕には新品の服や靴をくれた。
お金が無いのに『僕に会えた事を喜んで豪華な食事をくれた』
そして、何より『傍に居てくれる』約束をしてくれた。
『パートナー』破棄された僕には一番欲しくて手が届かなった存在。
僕がゴミでなく人で居られる場所。
それがこの場所だから。
「そんなの当たり前じゃない、貴方は私のパートナーなのよ? 死ぬまで一緒に居るんだから、当たり前じゃない!」
「そうだね、ねぇマリル、マリルは何が欲しい? マリルが欲しい物があるならこれから買いに行こう…足りないなら僕がもっと稼げばいいんだから、あんな鳥やトカゲなんてマリルの為なら100だって1000だって狩ってあげるよ!マリルは何が欲しい?」
そう、僕にとってマリルこそが『本当に欲しかった者』だから。
他は何の価値も無い。
「セレス、私が欲しかった者ならもう手に入ったのよ」
「えーと?」
「貴方よ、セレス、それじゃ折角だから今日は『セレスにご飯奢って貰うわね』行こうか?」
「うん」
僕はおずおずとマリルの手を握ろうとしたら、マリルから繋いでくれた。
そうか、マリルも同じなのか、嬉しいな。
「あのね、2人とも私の前でイチャつかないで貰えます? それはそうとCランクおめでとうございます!用は済みましたよね? それじゃとっとと帰って下さい!」
「「あっ、すぐに帰ります」」
受け付けのお姉さんが居るの忘れていた。
二人して慌ててギルドを後にした!
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