第10話
「そうだ! みんなでたーちゃんの歌を作ろう!」
落ち込んでいる家族を励まそうとしたのだろうか? おとーさんはそう言うと埃をかぶった古いケースからギターを取り出した。
「悲しんでいたって、たーちゃんがつらくなるだけだよ。みんなでたーちゃんが楽しくなるような明るい曲を作ろうよ」
そう言うとおとーさんは笑みを浮かべて、キュイーン、キュイーンとギターのチューニングを始めた。
「たーちゃんの歌かぁ…」
おかあさんはそう呟くと、「よしっ!」と言って立ち上がり、押し入れの奥からトイピアノとおもちゃのタンバリンを取り出して来た。
一家での即席演奏会が始まった。「いち、にい、さん!」とおとーさんが掛け声を上げると、「たーちゃんはかわいいよぉ♪」とギターを弾きながら歌い始めた。するとおかーさんも合わせてトイピアノをジャンジャンと鳴らしながら、「たーちゃん、ありがとう♫」と歌った。
はなちゃんはキャッキャと言ってタンバリンをシャンシャンと鳴らし、たーちゃんも「キュー、キュー」とニコニコ顔で喜んだ。
「たーちゃん、ありがとう♫ 本当に楽しかったよ♪」
家族みんなの歌声と笑い声、調子はずれの演奏が続いた。みんな笑っていた。そして、みんな泣いていた。
「楽しかったよぉ♬」の歌詞はいつも間にか「楽しいよぉ♫」に変わり、何度もなんどもリフレインされた。
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