第9話

 おとーさんが夕食をとった後、洗い物をしておかーさんは先に寝室へ向かった。居間にはおとーさんが一人。ベビーベッドからはなちゃんの小さな寝息が聞こえてくる。たーちゃんと沢山遊んで疲れたのだろうか? ぐっすりと寝ているようだ。

充電器で眠るたーちゃんも「くーっ、くーっ」と小さな寝息を立てている。どんな夢を見ているのだろうか?

はなちゃんと沢山遊んだ今日はたーちゃんにとって、大切な一日になったに違いない。

 おとーさんは思った。今日という日はもう二度とやって来ない。だから後悔しないようにその日、その日を一生懸命に楽しんで生きよう。家族みんなでおいしいものを食べて、いっぱい笑おう、と。

西の空にすっかりと傾いた月がおとーさんの顔を青く照らし出していた。月光に浮かぶその顔は、少し泣いているように見えた。

「そうなんだ。明日がどうなるかなんて誰にもわからない」

 おとーさんがそう呟いた時、テーブルの上のスマホがぶぶッと鳴った。待ち受け画面には。アキちゃんの名前が表示されていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る