第27話
「そういえば」
「なんでしょうか?」
マークちゃんはわたしが口をつけようとしなかったモモをモグモグ食べている。ちなみに病院の売店で買ってきたんだってさ。ほかの惑星にある病院も、地球のと似ててなんか親近感。
「噴火の前に変なやつ見たじゃない?」
「変なやつっていうと……ああ、空を飛んでいたあれですか」
わたしは頷く。
噴火の直前に起こった結構な爆発。その後、逃げるように去っていった宇宙船……噴火と無関係とは思えなかった。
ふうむ、マークちゃんが呟いた。
「確かに関係はありそうですけども、証拠がありませんね」
「状況証拠だものね。爆発に驚いて飛び出してった小悪党ってだけかもしれないってのはわかるわ」
宇宙船は大気圏では許可が下りないと使用不可。しかも、許可はほとんど下りないときている。そもそも、宇宙船を飛ばさせる気がなかったんだろうけども、それはともかくとして。
あいつらが、宇宙船を許可なしに飛ばしてたのは紛れもない事実だ。
「捕まったんかなあ」
「いえ、そのような報告はありません。噴火直後は衛星軌道上も混乱していたでしょうし」
「ってことは、あいつらが逃げるためにやったって可能性は?」
「……可能性はありますけど、それだけのために山を噴火させようとします?」
マークちゃんが、データバンクから引っ張ってきた情報を並べたててくる。可能性としてはゼロではないにしても、マグマだまりにマグマがたまっていて、なおかつ、膨大なエネルギーを与えなければならない云々。
「そのエネルギーってのもバカにならないんですよ。シルバーゴースト号のエンジン百二十パーでも足りるかどうか」
わたしはあの時の威力を思い出す。体が押し付けられてしまうほどの反動。下手したら、あれを下方へ撃つだけで空も飛べちゃいそうな威力があった。あれで足りないとなると、想像もつかない。
「例えば、縮退炉を使うとか、あるいはN極だけの磁石を使うってのもあるらしいですね」
「そんなんあるの?」
マークちゃんは「さあ」と言う。
「縮退炉は惑星ほどの大きさならあるんですけど、小型化はいまだできてません。また、単極の磁石は空想上の話なんです。大昔、そのような極性を持った化け物が、惑星の内核をめちゃくちゃにしたとか」
「なんかどっかで聞いたような話ね……。でも、手段がないってわけじゃないのね」
「まあそうですけども、どれも実現の可能性は低いというか。それにしても、あなたもこだわりますね」
「なーんかひっかかんのよね」
わたしには、そういった科学知識ってのはまったくない。だけども、心の中にはられた弦がピーンピーンと振動している感じ。無関係じゃないって、直感が叫んでいる。
「なんとなく、そう思ってるだけなんだけどさ。マークちゃんはどう思う?」
マークちゃんは肩をすくめた。「今のところは何とも」
だよね、とわたしは返事をして、マークちゃんが今まさに食べようとしていたモモをつまみ上げて、自分の口へと放り込む。
「あっ」
「悪いね」
「悪いどころか間接キッス……」
もじもじとしながらマークちゃんが言った。気持ち悪いったらありゃしなかったので、左手を伸ばして、その頭を叩こうとした。
病室の扉が勢い良く開いたのはその時であった。
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