第21話
「なによこれ!」
「サジタリウス宙域での小規模な戦闘ですね」
「小規模? 宇宙船がぶっ放しあってるこれが小規模だっていうの?」
「はい。銀河連合からするとこれは小規模な戦闘ということになります。暴徒鎮圧という意図が大きいので」
ピロリン。映像が更新される。白銀の一団には銀河連合第42師団の文字が、対するカラフルで無秩序的な船団には無垢なるケイオス教団と浮かぶ。
「やけに詳しいじゃない」
「そういったプログラムもインストールされてますので」
「ただのかまってちゃんじゃなかったんだ……」
精神の不安定な自爆装置付きアンドロイドだと思ってたけど、そういうわけでもないらしい。少なくとも、今のやり取りは頭の良さというのを感じた。
「政治的なものもわかるようにならないと、その星を通るときに困っちゃうので」
「それで、プログラムされてると。で、これがワープできない理由とどうつながるのよ」
「そのう。銀河の中心へ向かうためには、映ってる星系を通らなきゃいけないんですけど」
その言葉で、わたしにもなんとなくピンときた。
「ワープしたいけど、戦闘があってるからできないってこと……?」
「そ、そうなんです。銀河連合の船はワープを妨害する装置も持っていて、それを起動させた、という報告があって」
「遠回りとかできないの」
「近くに惑星がないから燃料補給ができなくて。たぶん、遭難しちゃうだろうし」
「マークちゃんの力でもどうにもならない?」
マークちゃんがぱあっとその表情を明るくさせた。と思ったら、悲しそうにうつむく。
「ワタシにできるのは自爆することくらいなので」
「できないってこと……」
力なくマークちゃんは頷いた。
わたしは、モニターに映されている艦砲射撃の応酬に、無性に腹が立ってきた。あの戦いがなければ、今ごろは銀河の中心へ向けて旅できていたはずなのに。
星の向こうに、あの憎たらしい自称女神の顔が見えた気がして、ますます怒りがこみあげてくるのだった。
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