第13話

「ホントにいいんだな?」


 女盗賊の一件が終わりを迎えて少ししてのこと。


 わたしは、ハーキスに呼び出されていた。それで、言われたのが今の言葉。


「いいわよ」


「ホントのホントに? 今から冥王星に行くとなると、親御さんとか――」


「どうせなんも思わないわ」


「そ、そうか」目を丸くさせながら、ハーキスが言った。「それにしても、冥王星まで行ってどうすんだ?」


「おたくの人類保護プログラムの担当をぶん殴りに」


「は? 意味わからんが……」


「意味わかんないって、あんた、銀河連合ってとこの仲間なんでしょ?」


 わたしの言葉に、ハーキスがせき込んだ。


「そりゃそうだが、組織が無数に分かれちまっててよお。よくわかんない組織が生まれては消え、生まれては消え」


「それ、組織としてどうなの」


「返す言葉もない」


 遠い目をしてハーキスが言った。思うところがあるらしい。バカなんじゃないのって言いかけたのを、ぐっと飲みこんだ。


 その代わりに、わたしはこれまでの事情を話した。自分が死んでしまったこと、人類保護プログラムとやらによって生き返ったこと、世界を破壊できるというアンドロイドのエンドマークちゃんのことを……。


「なるほどなあ」腕を組んだハーキスが言った。「しっかし、そんな制度ができてたとは」


「マジで何も知らないのね。居場所とか聞こうと思ったのに」


「やめたほうがいいと思うぜ。うちの組織って銀河で一番偉いからよ。そのプログラムの管理者ってやつも、ぺーぺーなオレなんかよりずっと偉いだろうからな」


「知らないわよ。ケンカを吹っかけてきたのはあっち」


 思いだしただけで腹立ってきた。ぎゅっと握りこぶしをつくっていると、ハーキスが数歩離れて言ったのが見えた。


「人間ってやつと話したのは今回がはじめてなんだが、みんなこうなのか」


「なによ凶暴って言いたいわけ? ……ってか、あんたって人間じゃないの?」


「人間じゃねえよ。銀河連合に所属してるやつは、話しているやつの種族として認識されんだよ。じゃないと、オレが不定形のバケモンだった時ビビっちまうからな」


 なるほどね、とわたしは返した。意味はよくわからなかったんだけど。

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