第3話 彼らが消えても世界は回る
某県
某警察署
「では、市内全域における、市民の連続失踪事件の、対策会議を始めます!」
「船橋くん、もう少し小さな声で話さないか。
ただでさえどっかのアホが、捜査情報をうっかりマスコミに漏らしてしまったのだから」
そう言われ、新米の刑事である榊靖也(サカキヤスナリ)は項垂れる。
何を隠そう、今ニュースで取り上げられている女子高生失踪事件の情報を、記者の生田目(ナマタメ)に漏らしてしまったのはこの榊だった。
……
喫煙所で煙草を吸っていたところ、榊は
「いなくなった女子高生の近くに、白紙の大学ノート、か……」
と呟いてしまっていた。
「なんですか、その面白そうな話」
「な、生田目!」
「榊さん、もっと詳しく話して下さいよ」
……。
「あぁあ、榊が漏らした情報のせいで警察には問い合わせが殺到している。うちも白紙の大学ノートがいなくなった場所にあった。これは事件じゃないのか、ってな」
榊は何も言い返せなかった。
「まぁまぁ、いずれどこかで情報はもれていたでしょう。時間の問題でしたよ。榊くんはこの失態を取り返すために、より一層の努力をして下さい」
そう優しく言ったのは刑事課長の五十嵐(イガラシ)であった。
榊は
「はい!」
と力強く返事する。
「では早速本題ですが、ここ一週間の短い間で、市内では確認できるだけで、8人の人間が行方不明になっています。8人の者は年齢や性別は様々ですが、一つの共通点があります。現場に残された白紙のノートです」
「誘拐事件として扱っていいんじゃないかね?」
「それにしては犯人からの犯行声明や身代金の要求も何もない」
「いなくなった場所も点々としているし、組織的な犯行かも!」
「いずれにしても謎が多すぎる」
事件の資料に目を通しながら榊はこの事件へ並々ならねやる気を湧き上がらせていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます