第2話 また1人

当たり前の様に、文字は僕が読むとまた光を帯び消えた。

何かトリックがあるに違いないと思って、今度は何ページか飛ばして開いてみようとしたがやっぱり駄目だ。


仕方なく次のページを開くと、なんの問題もなく開けてしまう。


「そろそろ信じてくれたかな?そろそろ本題に行きたいんだけど」


なんだかおちょくられているみたいだ。

不気味に思いつつも僕は黙って次のページをめくってしまう。


「んじゃ、改めまして……おめでとうございます!!見事ノートを見つけた幸運なお客様!そもそもこのノートは特別な才能をお持ちの方しか……まぁその話は今はいいですよね!さぁすぐにノートの次のページを開いて下さい。そうすればあなたの糞の様な人生は終わりです。ゴミ溜めの様なこの国から、すぐにでも脱出しましょう!夢のような世界が貴方を待っています!さぁさぁ早く開いて下さい!あっ、一応言っときますけど次のページ開いちゃったらもうこの世界には戻ってこれませんから(笑)でも開きますよね?だって貴方の人生いいとこないじゃないですか(笑)捨てたっていいでしょ?ちなみにこのノートを閉じて家に帰れば今日の記憶は消えますし、このチャンスは別の人に渡りますから……ほら、何迷ってんだよ?こっちは別にあんたじゃ無くてもいいんだよ。ほら、ほら、ほら……早く開けよ……」


えっ、何?

怖い……それに夢のような世界?

本当なのか?テレビかなんかのドッキリ?

色んな考えが頭に浮かびぐちゃぐちゃになった。


帰れないと聞いて、一瞬家族顔が頭に浮かんだ。

だが、ページを開いたらどうなるのかという好奇心が抑えられない。

……いや、違う。

僕は……逃げ出したかったんだ……


指先が震えていた。それでも僕はページめくる。


その瞬間、ノートから眩い光が吹き出し僕を包んだ。

あまりの眩しさに、僕は思わず目をつむた。

光が出ていたのはほんの一瞬だった。すぐに目蓋が光を感じ無くなった。


次の瞬間、目を瞑っている僕の頬に、図書室にいては感じるはずのない冷たい風がふっと吹いた。


恐る恐る目を開けると、いつの間にか僕は草原にいた。

そこにあったはずのノートもいつの間にか無くなっている


本当に、別の世界に来てしまった。

それも一瞬で……。


恐ろしい程に大きく美しい太陽が、ゆっくりと大地に姿を隠そうとしている。

夕刻だ。


図書室にいた時間は確か5時頃だった。

時間は向こうと一緒なのかもしれない。


ここが異世界である確証はまだない。ひょっとしたら地球の別の場所に飛ばされただけかもしれない。もしくはとても鮮明な夢なのかも……。


いろんな事がありすぎて、胸がいっぱいになり、感情が溢れ流れ出す。

止めようと思って慌てて頬を拭うが、身体中が水になってしまったみたいに、いくらでも涙がこぼれ落ちた。


涙で歪む視界の中、遠く離れた先におそらく小さな町であろう、薄ぼんやりした光を見つけた。

完全に日が暮れてしまう前にあそこにつかなくては。


ここが本当に異世界だとしたら、弱虫のままではいられないのだ

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