第13話:初デート。
次の日、僕と紗凪は仲良く通学した。
紗凪はいつもと変わらず、発作で倒れたことなどなかったように元気だった。
朝も昼も、紗凪が席から立った時もトイレに行った時も僕はストーカー
みたいにクラスの誰かに気づかれないよう彼女が見える場所にいた。
なんて過保護な彼女。
お付きのものに面倒見てもらってるお姫様みたいだ。
そしてめでたく、なにごともなく週末までそういう日が続いた。
で、土曜日、待望の初デートの日。
朝の9時頃、僕は紗凪を迎えに行った。
「おはようございます、牧村です」
「あ、おはよう牧村くん」
「今日はありがとうね・・・紗凪のことよろしくね」
「あ、はい、頑張ります」
「紗凪、牧村くん迎えに来てくれたわよ」
「は〜い、ちょっと待って」
「朝からもう大変、どの服着て行こうかってバタバタしてるのよ」
「早くしなさいよ・・・彼氏を待たせちゃ悪いわよ」
「はいはい、お待たせ」
「・・・・紗凪、そんな格好で行くつもり?」
「そうだけど・・・」
見ると紗凪は短めの黒のトップスにデニムのミニスカートのヘソ出しスタイル。
最近の流行りなのか?
「ダメかな?」
「いや、僕はいいですけど・・・めちゃ可愛いし」
「牧村君がいいなら、いいけど・・・露出多すぎない?」
「今はY2Kって言って これが流行りなの」
「愛彦、いこ」
「じゃ〜行ってきます」
「はい、お願いね・・・楽しんでらっしゃい」
僕と紗凪はルンルンで、お手々繋いで、いつものバス停から街に出た。
映画の上映時間は11時だったので、それまでの時間つぶしに商店街を
歩いて「ひっそり佇む珈琲屋さん」に寄ってコーヒー飲んで、
スイーツ食べて、11時手前に映画館に着くよう、お店を覗きながら、
ダベって笑ってバカ言いながら歩いた・・・。
映画館に到着して場内の売店でフライドポテトとコーラふたりぶん注文して
いざ館内へ。
紗凪は寝ずに最後まで映画を観た・・・寝なかったってことは?
それだけ内容がすばらしくて面白い映画だったってことの証拠。
もちろん僕も面白かったんだけどね。
「面白かったね・・・私、
「病気、早く克服したいから・・・」
「大丈夫だよ・・・きっと克服できるよ、僕がついてる」
「これからいっぱい楽しい思い出作っていけば、自然とよくなって行くよ」
映画館を出た僕らは・・・とりあえず腹ごしらえ。
「紗凪、何食べたい?」
「ん〜・・・そうだね〜・・・あ、ここ」
紗凪が指差した先に、お好み焼屋さんがあった。
「あ〜いいね、賛成〜、入ろ 」
ふたり揃ってお店舗の階段を上がってお好み焼屋さんへ入った。
めっちゃ美味かった。
美味いものを食べると人は自然と笑顔になる、とくに好きな人と
一緒の時は・・・なおさら美味く感じる。
お好み焼屋さんを出た僕らは、その足で水族館へ。
水族館がお好み焼屋さんから一番近かったからね・・・。
まあ、動物園より暑くなくていいや。
そこから遊園地ってコースもあったけど、初デートから飛ばすのも、って
思ったからコスパが高いレストランで、仲良くオムライスを食べて
またまた、お手々を繋いでバスに乗って帰ってきた。
あくる日の日曜日は僕の部屋に紗凪が遊びに来た。
どこにも行かず、まったりとDVDを見たり、CD聞いたりして過ごした。
紗凪はとくに緑黄色社会にハマってる。
いい曲いっぱいあるから、僕もたぶんハマると思う。
紗凪はアイドル系にはあまり興味がないみたいだ。
そして週明けの月曜日、その日紗凪は学校を休んだ。
実はその日は紗凪の肝臓の「生検」細胞検査がある日だったからね。
細胞を摂取すると、熱が出るんだそうで否応無しに紗凪は一泊入院になった。
僕は身内じゃないから付き添ってはやれない。
それに、自分のことじゃないのになにかあるたびに学校は休めないしね。
ただ、いい結果が出ることを祈るしかなかった。
いくら恋人ですって言っても夫婦じゃないからね、結局僕らは他人なんだ
なってつくづく思った。
結婚して籍を入れるって家族になるってそういうことなんだ。
つづく。
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