第4話
幼なじみのケイトリンとようやく結婚にこぎつけた(結婚式はまだだけど)。
物語ならこれでハッピーエンド。
けれど現実には、ここからが本編が始まるんだと。
結婚式の会場選びとかドレスをどうするかとか。
結婚式の日取りとか招待客とかドレスをどうするかとか。
新居をどこにするとかとかドレスをどうするかとか。
頭の痛い問題が多すぎる。
はぁ。
ドレスどうしようかなぁ。
ジャスナには夢があった。
ひとつは幼なじみで初恋の相手のケイトリンとの結婚。
ひとつは結婚式。親しい人達に見守られて挙げる結婚式。
小さくてもいい。手作りの暖かい式を挙げたい。
ひとつは新居。王都の郊外に小さな家を持つ。古くてもいい。
ケイトリンと二人で少しずつ手を入れて理想の住まいに近づけていく。
カーテンは手作りしてもいいかな。
テーブルはケイトリンに作ってもらおう。椅子は座り心地が悪いと腰を痛めるわね、家具工房でオーダーしようか。
キッチンはモザイクタイルで飾って。二人の絵心が出来を左右しそうね。私は自信ないけれどケイトリンはどうだったかしら。
……村で猫の絵を描いたら橋に間違われていたことがあったわね。
まあ色を適当に並べていくだけでも可愛いんじゃないかしら。
業者任せにしちゃうと、愛着が持てなさそうだし、それに新居には他人を入れたくないわ。家族や友達以外の人はね。
調理器具に食器類は奮発してでも新しいもので揃えるわ。
料理は家族の口に入るもの。誰が使ったかもしれない中古品なんか選択肢にないわ。まぁアンティークには素敵なデザインのものが多いのも事実だけれど。実用品としてはないわね。
カトラリーは王室御用達のものにするの。銀製よ。勤め先のつてで少しはお得に手に入るわ。
新居に不釣り合いなのはわかっていたけど、どうしても欲しかったんだもん。
見積りしてもらったら、ちょっぴり値引きしてくれたけれどやっぱりお高かったわ。
一生モノと思わなきゃやってらんないお値段だったわよ。
でも持っているだけで幸せ。買って後悔はないわ。
リネン類も王室御用達の商人から手に入れたの。
これはケイトリンにはナイショ。
「……ナ、……スナ」
家が古いせいかしら。埃臭いわね。
換気しなくちゃ。
「……スナ、ジャスナ」
あら、ケイトリンが呼んでるわ。
もうそんな時間なのね、待って、今開けるから──
あら、このドアノブずいぶん固いわね。
「わぁ、奥さん。そんな強く引っ張ったらダメです」
「ジャスナ、危ない」
ゴッブッボ。
湿気た木材の割れる音と同時に手の中のドアノブが重さを増して、ジャスナは危うく取り落としそうになる。
それと同時に身体が天を仰ぐ。
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