第31話 可愛がられて成長中
その後も琥珀は異世界に召喚され、日本に戻っての二重生活を続けていた。
お風呂で呼ばれたり、ベッドで呼ばれたり、食卓に呼ばれたり、トイレ(!?)に呼ばれたり……。
もはや召喚獣というか完全な愛玩動物扱いだったが、何度となく召喚され、ヘリヤに可愛がられたことによって琥珀のレベルはどんどん上がっていった。
―――――――――――――――
水島 琥珀(アンバー)
年齢:16
種族:人間(フロストフェニックス幼体)
職業:ヘリヤ・アールヴェントの召喚獣
召喚回数:7
レベル 20→25 UP!
体力 C
魔力 B
攻撃 D→C
防御 D→C
速度 C→B
器用 D→C
知力 C→B
魅力 A
スキル
・異世界言語
・フロストバースト(中)
・気配察知
・ヒーリング(弱)
・鑑定(人間)
・身体強化(弱) NEW!
・魔力強化(弱) NEW!
・根性 NEW!
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召喚獣がレベルを上げるために必要なのは、敵を倒して経験値を積むことではない。
主人を喜ばせること。主人の願いを叶えることだ。
琥珀はマスターであるヘリヤにペットとして扱われている。
つまり、琥珀はペットとして、可愛がられたら可愛がられるほどに強くなれるのだ。
(お風呂に一緒に入ったり、同じベッドで寝たり……それも全てはレベル上げのため、ヘリヤを守るために必要なことだ!)
「キュイ……」
などと言い訳を口にしてみるが……やっぱり、罪悪感は無くならない。
罪悪感の発生源は他にもある。
簡単に、女のことイチャイチャパラダイスをしているだけで強くなれるのが、申し訳ない。
真面目にコツコツと努力して強くなろうとしている人達に、後ろめたい気分になる。
(だけど……こうやって手に入れた力で、僕はヘリヤさんを守る。揚羽さんも、ついでに柊木と甘井も)
ダンジョンの入口。
広場にある巨大な門を見上げて、琥珀は決意を新たにする。
今日は二回目となるダンジョン探索の日だった。
メンバーは前回と同じ。
ヘリヤ、揚羽、柊木、甘井。指導教官であるシャーロット。
そして……召喚獣のアンバーこと琥珀である。
前回は草原エリアを順調に探索していたが、最後の最後にワームという予想外の怪物に遭遇してしまい、逃げ帰ることになった。
柊木とシャーロットがワームに飲み込まれてロスト。死に戻りしてしまった。
このダンジョンは死んだとしても手持ちのアイテムが無くなるだけ。
トル〇コやシ〇ンのゲームと同じシステムである。
しかし、生きたまま怪物に昇華されるという経験はトラウマになる。
柊木はどうにか立ち直ることができたが、下手をすると、あのままギブアップしていた可能性もあった。
(もう二度と、あんなことにはならない。みんなは僕が守る……!)
「アンバー。げんきいっぱい」
「キュッ!」
ダンジョンの扉を見上げている琥珀の頭を、ヘリヤが撫でる。
ヘリヤの横には他の四人も揃っていた。
「それじゃあ、入ろうか。前回のリベンジだ……柊さん、大丈夫か?」
「問題ないわー。つまんないこと訊かないでくれる?」
揚羽の問いに、柊木がつまらなそうに両手を広げて答えた。
「無理だったら、そもそもここまで来ないって。遠慮は良いからさっさと行かない?」
「柊さんが良いのなら、問題はない……シャーロット教官」
「ええ、それでは皆さん。今日もダンジョン探索をいたしましょうか」
鎧姿の美麗の騎士……シャーロットが穏やかに言う。
「前回の探索でもわかったと思いますが……ダンジョンにおいて、『絶対に安全』ということはありません。予想外のアクシデントは必ず起こるものです。第一階層から油断なくいきましょう」
「ん、がんばる」
「キュイ」
ヘリヤが頷いて、琥珀も鳴く。
他の面々も覚悟を決めている様子で、やや緊張した面持ちになっている。
「では……行きましょう」
淡々とした口調で甘井が言って、五人と一匹は二度目になるダンジョン探索を開始したのである。
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