序ノ廻ノ起 前ノ編
中華飯店「
「ずずずっ、ずぞぞぞぞっ」
音を立てながらラメーンを啜る。飛び散るスープ。普段なら”ヨハンソン”さんも驚いて行儀悪い! と怒るんですが。この場にいないので、東洋の言葉で「無問題」という奴ですね。こうして食べるとなぜかうまいと感じるんです。不思議、不思議。で、ぼくは、ラメーンをハシでつかみながら、目の前の分厚い本を開いて、ハシでページを捲りながら読み進めていました。ページが汚れる? そんなもん、ぼくには関係ありません。
「わかりやすい公式ですねぇ、ウケる」
ぼくの何気ない一言に、店の親父さんが「は?」と声を漏らしていました。
「なんじゃそりゃ」
「ん」
親父さんがそう聞いてくるもんですので、ぼくは親父さんの方をみる。
「独り言です」
「はあ……」
ぼくが親父さんにそう言うと、再び本に向き直った。親父さんの呆れたような声が聞こえますが、どうでもいいです。ラメーンおいしいです。
「ナンシー、そいつみとき」
「はいな」
親父さんの隣にいるスペイン人っぽい女の人の声が聞こえます。なんだか視線を感じますがどうでもいいです。目の前の論文を完読するのが、今のぼくの使命です。ぼくはそう思いながら、ギョーザをタレにつけてぱくり。うーん、もちもちの皮の中からあふれ出る肉汁、そしてミョウガのつんとしていながら優しい辛みと、ネギの甘みとかなんやらが口の中で爆発して……
「んん~、高まるぅ~!」
思わずそう叫ばずにはいられない。ぼくは隠し事ができません。
「……
厨房にいるはずのスペイン人の……あ、ナンシーさん。が、唐突に聞いてくる。
「
ぼくはそう答えました。
……おや、親父さんが何かを持って奥に行くようですね。あれは「ジグソーパズル」ですか。パリに出張に行った時に、枢機卿の部屋に飾ってあったのを見ました。確かあれは2000ピースの大きな絵画のような大きさでしたね。
こっそりついて行って見る事にしました。親父さんがテーブルにパズルを置いて、ピースを脇にやる。ふむ……。ピースは1000、完成までに約45分くらいを所要しそうですね。完成品はおそらくかの有名なフェルメール作の絵画「牛乳を注ぐ女」を模したモノでしょう。パチモン臭がハンパない。マジパネェですね。
ん……っ。あぁ、これ。
「1ピース足りませんね」
「……は?」
親父さんがぼくの存在に気が付いたようで、声が上擦ってるみたいです。驚いて振り向きました。それはいいです。1ピースどこかになくしたのか。まあ、ぼくには関係ないですね。ぼくはラメーンが伸びてしまう事を思い出し、テーブルに戻る。
「なんだがや……?」
「Oye,
そんな声が聞こえてきたような聞こえてないような。とりあえず、ぼくは目の前の論文を読み進めていきました。
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