『下宿のおばさんに』 最終回


 女王は、空中を、ぐわあっと、飛びながら襲いかかってきました。


 『うひゃ。』


 部屋の入口から、むかし、本棚があったあたりに飛び移ったのです。


 『ふふふ。あまいな。』


 さらに、窓の方向に飛びながら、短剣を振るいました。


 『あ、あぶないです。』


 『あたりまえでしょ。あぶなくない闘いはないです。』


 『す、すいません。』


 『謝るな。ほら、闘え。行くぞ。』


 女王は、かつて、安いレコードプレーヤーがあったあたりに飛び移り、さらに、再び入り口に飛びながら短剣を十字に切りました。


 ぼくの肩のあたりが、びりっと、裂けたのです。


 『うぎゃあ!』


 ぼくは、あまり良く見ないまま、刀を振り回しました。


 『わあ。やられたあ‼️』


 女王の首が、どさん、と、床に落ちたのです。


 あっけなく。


 『やったあ✨😍✨😍✨✨』


 あの2人が叫びました。


 『つ、ついに、天国に就職だあ。』


 しかし、ぼくは、頭がなくなった女王の身体に、釘付けにされていたのです。


 それは、次第に形が崩れてぐにゃぐにゃになり、さらに、また、再形成されてゆきましたのです。


 そうして、そこに最初に現れたのは、あの、たまずさがおんりょう、みたいな鬼さん。それから、たしかに、良く似ている、やや古い時代のような、若い美しい女性。最後に、紛れもない、下宿のおばさんの姿が浮かびました。


 『ほほほほほ。ちょっと、遊び過ぎましたか。あの姿は、わたしの若い頃なんですよ。』


 『あやあ〰️〰️〰️〰️😅 な、なんとお美しい。』


 ぼくは、まだ若かったとはいえ、おばさんの生い立ちなどは、聞いたこともありませんでした。


 両親は、もしかしたら、聞いていたかもしれませんが。


 その両親も、もう、いません。


 『まあまあ。時は移ろうもの。あなた、あまり、もう過ぎたことに拘りすぎずに、残りの人生を有意義に過ごしなさい。でも、わざわざ挨拶に来てくれてありがとう。みなさん、ご協力、感謝します。』


 すると、沢山の人の姿が現れて、盛大な拍手をしながら、ぼくの肩を叩いたり、握手をしたりしながら、空間に消えさって行くのです。さっき、階段で闘った、怪人さんも現れて、にたっと笑うと、すぐに消えて行きました。こう、言い残して。


 『まだまだ、がんばりなさい。まだ、いまだにこの世にあるなんて、もったいないことだ。』


 この人が誰なのかは、いまだに分かりません。



 最後に、あのふたりが、前に立ちました。


 『ありがとうございます。ぼくらは、天国で魚屋をやります。仕入れは、宇和島あたりでやります。じゃこ天を中心にしてね。なんでも、幽霊専門の卸があるとか。ははは。じゃ。お元気で。』


 最後に、おばさんが手を伸ばしました。


 『ありがとう。おばさん。ナマコの酢漬けは美味しかったです。』


 『成功を祈りますよ。では、さようなら。』


 おばさんは、静かに消えて行きました。



 ぼくは、もう、暗くなった、下宿があった跡地の駐車場に、ひたすら、突っ立っていたのです。

 

 ふと見ると、肩のあたりが、破れていました。


 それから、おばさんたちに手を合わせて、敷地内にある自動販売機でお茶のペットボトルを買いました。



      おわり




       🙇



      🍵😌✨


 

 


 


 


 

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『謝罪詩編集の主題による幻想的な変奏曲』   やましん(テンパー) @yamashin-2

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