『下宿のおばさんに』 下の1


 『ぼくに、なにをしてほしいのですか?』


 すると、そのふたりの内の、背の高い方が、言いました。


 『まずは、あの、女王と戦ってください。』


 『はあ?』


 女王が言います。


 『あたしと戦って、あなたが勝ったら、みんなと共に、ここから天に旅立とう。』


 『ぼくが負けたら?』


 『ここの時間で、永遠に暮らしてもらおう。勝てば、おばさんの赦しも得られよう。』


 『イーブンではない取引のような気もします。』


 『そうか? スッキリするぞ。』


 『そうですか。ふうん。何をして勝負せよと?』


 『ほら。』


 ぼくの手元には、1本の日本刀が落ちてきました。


 『わ、重たい。』


 『あたしは、この、ひみこさまの一族から伝わるという、伝統の脇差しで戦う。その刀は、かつて、風魔小太郎の部下が使ったという、伝説の名刀だ。十分なアドバンテージだろう?』


 『切られたら、痛いですか?』


 『そりゃもう。血が飛び出るわ、内蔵が飛び出るわ。』


 『うな。むちゃくちゃなことを。』


 『やらなかったら、帰れないぞ。』


 『そんな、ごむたいな。』


 『やってください。相手は化け物ですよ。』


 背の低いほうが、泣くように頼んだのです。


 『うんだ。他にも沢山の幽霊が囚われています。あなたが、頼りなのです。あなた、お守りあるでしょう。』


 たしかに、ぼくには、お守りがある。


 見回すと、さきほどの1階の廊下で見たような、沢山の目玉がそこらじゅうに浮き上がり、さらに拡がって見えていました。


 『わ、わ、わ、わ、わ、』


 『闘え。ヒーローよ。』


 女王が、伝統の脇差しを、着物の懐に、がっちりと構えました。



      🔪


 

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