『下宿のおばさんに』 中の下の下

 そのふたりは、まるで敵対的な雰囲気ではなかったのであります。


 しかし、また、知らない人たちでした。


 『ぼくらは、あなたのあとに、ここに住んでいた幽霊たちです。』


 『え?』


 『このあたりは、戦時中に空爆された地域ですなり。ぼくらは、その当時の学生です。もっとも、勉強はできなかったが。』


 『だから、あなたがたが、みないなくなった後、ここで、学生の真似をしていたのだ。おばさんも、途中から加わった。』


 『う………… 』


 『気にするな。だから、なんだなんて、言わない。しかし、ぼくらも、もう、卒業したいと思う。そこで、きみは、おばさんに謝罪に来たのだろう?』


 『そ、そうです。』


 『なら、頼みがあるんだ。きみの、この懐かしい下宿における、最後の仕上げだ。ここには、たくさんの、幽霊たちがより集まっている。みな、ほんとうは、もう、休みたいんだ。しかし、きっかけがない。とくに、あの、女王がなかなかうんと言わない。』


 『ほー、ほっほっほ。』


 それは、あの、玄関の上に現れていた、むかしのテレビ人形劇の、『たまずさがおんりょう』。みたいなひとであります。


 いまや、かつてのぼくの部屋の入り口の上側に、上半身だけ、現れたのです。


 『あなたは、どなたですか?』


 『わからない?』


 『そりゃ、わからない。』


 『ふうん。………』


 そのひとは、神秘的な目を煌めかしたのです。


      👁️


 


 


 

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