『下宿のおばさんに』 中の下の下
そのふたりは、まるで敵対的な雰囲気ではなかったのであります。
しかし、また、知らない人たちでした。
『ぼくらは、あなたのあとに、ここに住んでいた幽霊たちです。』
『え?』
『このあたりは、戦時中に空爆された地域ですなり。ぼくらは、その当時の学生です。もっとも、勉強はできなかったが。』
『だから、あなたがたが、みないなくなった後、ここで、学生の真似をしていたのだ。おばさんも、途中から加わった。』
『う………… 』
『気にするな。だから、なんだなんて、言わない。しかし、ぼくらも、もう、卒業したいと思う。そこで、きみは、おばさんに謝罪に来たのだろう?』
『そ、そうです。』
『なら、頼みがあるんだ。きみの、この懐かしい下宿における、最後の仕上げだ。ここには、たくさんの、幽霊たちがより集まっている。みな、ほんとうは、もう、休みたいんだ。しかし、きっかけがない。とくに、あの、女王がなかなかうんと言わない。』
『ほー、ほっほっほ。』
それは、あの、玄関の上に現れていた、むかしのテレビ人形劇の、『たまずさがおんりょう』。みたいなひとであります。
いまや、かつてのぼくの部屋の入り口の上側に、上半身だけ、現れたのです。
『あなたは、どなたですか?』
『わからない?』
『そりゃ、わからない。』
『ふうん。………』
そのひとは、神秘的な目を煌めかしたのです。
👁️
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます