『下宿のおばさんに』 中の下の上


 そう。ぼくは、翔んだのです。


 階段の天井高く❗


 そうして、ぼくは、残っていた手裏剣全てを、怪人さんに、ではなくて、そこらじゅうすべてに投げました。


 すると、手裏剣は、沢山の美しい色とりどりの花々に変わったのです。


 それらは、はでに、拡がりつつ、ぐりぐりと回転しながら、怪人さんに降り注ぎました。


 その一本は、怪人さんの、胸のポケットに刺さりました。


 赤い染みが爆発する自分の胸を見やりながら、怪人さんが言いました。


 『ははは。やったな。さすが、伊達には歳を重ねなかったな。良くやった。さあ、2階に行くがよい。』


 怪人さんは、にやりと微笑みながら、消えて行きました。


 ぼくは、なんとも言えない、悲しみを感じたのです。


 『おやおや、うまくやったね。』


 まだ、玄関から眺めていた、あの魔女みたいな人が、人かどうかわからないが、が、言いました。


 『あいつは、あんたの、過去の一部さ。』


 ぼくは、うまく、階段の一番上に着地しました。


 『過去の一部。ってなに?』


 しかし、魔女は、もう答えません。


 そこは、つまり、2階の入り口です。


 2階には、四つの部屋がありました。


 右手前方が、ぼくのいた部屋ですが、いまは、光りも漏れず、やたらに静かでした。


 左手の部屋だけは、ちょっと小さいのですが、そこからは、明かりが見えていて、話し声が聞こえてきます。


 『ちがうよ、限界効用が低いんだから。』


 『それは、もう、古いです。』


 とか、言いながら、騒いでいます。


 ぼくは、思いきって、がら、と、扉を開きました。


 

       🔆


 

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