第三日
むかしかみらいかいつのひか。
動物の国と鳥の国がありました。
二つの国はとても仲が悪いので、ながいながーい時間と時代、戦争をしていたのです。
それをその世界の神様がお嘆きになり、陸を空をまっぷたつに割りまして。
「きっちりと住み分けをするがよろしい」
と、戦争をやめさせました。
神様が仰るならと、二つの国の王さまは、それぞれの土地に一族を連れて移り住み、二度と戦争をしないと誓ったのです。
自分の一族をそれぞれの土地へ連れていく際、二人の王は言いました。
「牙のある者、動物の国」
「羽のある者、鳥の国」
王の声に応えるように、その場の皆は、自分の王の下へと、ぱーっと分かれて行きました。
そうして、ぽつん。
大きな二つの輪の中へ、そのどちらにも属せない者がいたのです。
二人の王は彼を見て言いました。
「コウモリではないか。牙を持っている。こいつは我が国の者だ」
「コウモリではないか。羽を持っている。こいつは我が国の者だ」
二つの国の二人の王は、顔を見合せて驚きました。
確かにコウモリは戦争の折り、自分の国にいたのを覚えていたからです。
それもそのはず、コウモリは自分の姿かたちを良いことに、戦争で不利と見るや、有利な国へと、行ったりきたりを繰り返していたのです。
二つの国の二人の王は、かんかんに怒って、コウモリを裏切り者として、どちらの国にも入れないことと決めました。
…と、ここまでは皆さんご存知ですね。
ここからが、教科書にも載っていない歴史の欠片でございます。
「たしかに。強い国に寝返り続けていたのは事実です。羽があるからといって、鳥ではないし。牙があるのに羽があるから動物の国の者ではないと、そう言われればそれまでですが…」
そもそもの話。同じ特徴さえ持っていれば、
絶対に裏切らないと言えますか?
そう言ってわたくしは、神様が割った陸の空のちょうど真ん中の深く暗い洞窟の中へと消えていったのです。
その後、二つの国が二つ以上に割れてしまった事なんて、やっぱり皆さんご存知ですね。
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