第3話 教室
「この後なんか飯食いに行くって話してるけどいける?」
ホームルーム前に、帰る準備をしているとそう話しかけられた。友人だ。同じクラスになって長い。
隣にいた別の友人は、
「もっとはよ言ってや。親に連絡してみる。もう飯作っちゃってるかも」
と言っている。
「あーごめん、俺は無理」
僕はこの後魔女さんと会うので、断る。
「そっかー。まあ急だししゃあない」
窓に入ってくる風が涼しい。もう秋だからと冷房がつけられなくなってしまったのでありがたい。
外を見ると薄暗い。教室の白熱灯がより意味あるものになっていく。いよいよ本当に夏が終わったのだなという感じがする。
「女だ」
親に連絡をしながら友人が聞いてくる。
「うーん」
「即答できてないですこの人」
「お~」
二人の友人がからかうように顔を見合わせた。うーん。説明が難しいな。
「知り合いの人」
「魔女の人?」
どき、とする。だけど真剣に考えているのは僕だけで、友人たちは何の気なしに聞いただけの様だった。
「なんで知ってんの」
「この前お前が魔女の家に入ってくのを見たって」
「あー」
隠しているわけでもないけど、見られたのか、となんとなく考える。
「女子が残念がってた」
「面白がってるだけでしょ」
「というか、不思議がってた。本当にあの家、人が住んでたんだって」
まあ、本当に噂の存在だったしな。
「どんな人?」
ふたりが僕の顔を見ている。そういえば、あの人、あんまり目が合わないな。他人事みたいに考える。
「かわいい人」
開いていた教室の扉から速足で担任が入ってきた。ホームルームだ。
ちょっとざわめきながら多くの人が自分の席へと三々五々帰っていく。
浮いてるな、って自分のことをそう思って、やっぱりそれも他人事だった。
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