ゲート

「パパ、そっちじゃないよー」

 二人揃って、無事に出界審査を通ると、アーロが父親の袖を引く。

「え、でも……」

 シウトレア世界直通の電車は、すぐそこのホームに来る。

「こっちに、ワープゲートがあるの。ここの電車は、観光用だよ」

 そう言えば、大都市にはよく、一瞬で宇宙の端と端を、また、世界同士までもを、できるワープゲートがある。先進世界せんしんせかいであるグレアドルには、あって当然か。

「もう、パパってば、時代遅れなんだから。さっき、ぼくとパパは、別の星に移動させられてたんだよ。ワープゲートが無かったら、ぼくの乗った車が、パパが出てくるのと同時にあそこに着くなんて、無理だよ」

 アーロは迷いなく歩きながら、あきれたように説明する。

「あ、ママに、電話しなくちゃ」

 アーロは急いでペンを取り出すと、携帯電話に変身させて、母親に電話を掛ける。

「もしもし? あ、ママ? 今から行くからね。うん、ちょっと早いけど。うん、セストル駅から。うん。待っててね」

 アーロの握る携帯電話から、妻の声がする。何を言っているかは分からないが、それを聞くだけでサウズカトは、妻に会いたくて仕方ない気持ちがあふれ出しそうになる。

「あ、ほら、もう、ゲート通るから。切るね。はい、じゃあねー」

 サウズカトは、アーロをみちびくように手を引いて、青い光の中に足を踏み入れる。

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