同行者

「ねえ、ソウさん、だっけ?」

 少年は寝転がったまま、襟巻の房を離して、想を見る。

「うん」

「何も知らないで乗ったんじゃさ、どこで下りるかも決めてないんでしょ?」

「うん」

 それは勿論もちろん、そうであった。

「じゃあ、一緒に行こうよ。イナホさん? 違う、キノミさん? あ、ホノミさんだっけ? 一緒に探してあげるからさ」

「一緒に……」

 想の探し方というと、地図にあろうが無かろうが、全ての道を歩き、全ての建物に侵入するというものだ。

 そんなことに、この少年を巻き込むのは、気が引けた。

「あのね、ぼくの住んでる町でさ、子供を旅に出すって言っても、きちんと、試験に合格した子じゃないと出せないんだよ。筆記と、実技の試験。二十か国以上の言語に、色んな世界の法則や文化、緊急時の対応とか。治安だって、世界や国によって色々だし、事故だって絶対に無いとは言えないし、色んなことがちゃんとできないと、危ないから」

 少年は、指折り数えながら、淡々たんたんと言う。

 それもそうだ、と、想は納得した。

 全く何も知らない自分が一人でうろうろすれば、彼女を見つける前に死ぬ。素性すじょうは知れなくとも、知識や実力があるらしいこの子を頼った方が、彼女を見つける確率は上がる。

「お願い。一緒に連れていって」

 頼むのは、想の方であった。

「やった!」

 少年は心底嬉しそうに笑って、想に抱き付いた。

 二人だけの車内に、埃がもうもうと舞う。

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