第3話 妄想すること

それから神様は異世界のことや、そこで使える魔法のことを教えてくれた。異なる世界はいくつも存在しており、それは神様すらわからないらしい。"神様の神様"みたいなのがいて、目の前にいる神様は異なる世界の橋渡し役としているだけ。ということらしい。


「そのリューセイは以前にも別の世界にいたことはあるんじゃが、それ以前の記憶はないのじゃ。前担当の神様がそうしたのか、本人が望んだのかはわからんがな…」


担当って。近所にある不動産屋の営業じゃないんだし、そんなにころころと変わって良いものではないのでは…。

それはさておき、異なる世界を巡る運命にある殺し屋(リューセイという名前らしい)に巻き込まれて僕はここにいる。迷惑な話だが、困惑している神様を見るとトラブルの要因である僕の方が嘆くのも違う気もする。


「わかりましたよ神様。もう納得するしかないのは理解しましたよ。厳しかったけど育ててくれた両親に会えないのも、友達ともまた遊べたりしないのは悲しいですけど…ね。」


口に出すと涙が込み上げてくる。涙を堪えて話すと頭痛がしてくるのも久しい感覚だ。

だけど異世界とはいえ命があるだけありがたいんだ。少しでもプラスに考えていこう。少しでも、ね。


「それで、魔法やらスキルやらも使えるんですよね?一体僕はどんなことが出来るようになるんです?」


楽しみを作ろう。気持ちを切り替えるしかない。

昔読んだ漫画みたいに手から炎を出したり、空を飛んだり出来るなら悪くないのかも知れない。刀を自在に操って悪い奴らを次々と倒したり、ピストルでどんな遠くの的にも簡単に当てられたり出来るのも悪くない。瞬間移動で色んな景色を観られたり透明人間になって女湯の景色を観られたりするのもいいかも知れない…


「うむ…色々と妄想しているところ悪いが、そなたに授けられるものはあまり無いのじゃ…」


「え!?」


「何故かと言うとな、リューセイは次の世界では"勇者"として転生されるのじゃ。魔法やスキルがとても優遇されるのじゃが…そなたは、その付き人として平凡な人間で転生されるのじゃ!」


堪えていた涙が、溢れ出した。

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