第4話.ダンジョン

「遥斗様、紬様、はじめまして! アストラル専用イ・ティニのサラと申します!」


 小学生かのようなテンションで遥斗たちに挨拶をするサラ。


 手のひらサイズの妖精で、腰まであるふわっとした金髪の少女。自然に生まれた生命体ではないからなのか、もはや犯罪臭もするほどの可愛らしさ。


 2人は危険ではないことが分かった安心感と、宙に浮く少女という困惑で脳内がぐちゃぐちゃになっていた。


「その様子を見るに、本当にのことを知らない感じですかね?」


 紬は展開が急すぎていまだに理解が追いついていないが、遥斗はもう考えることを諦め、サラの話を聞いたほうが早いと判断した。


「そうなんです。急に大地震が起きたかと思えば、気づいたら異世界に来てる、ってところなんですよね」

「あ! 敬語はお止め下さい! サラはただの自立生命体に過ぎないので!」

「……理由になってない気がするが分かった」

「ありがとうございます! では本題に戻りまして、まず大前提としてここは異世界、というものではありません!」


(……え、魔法陣とかがあるのに、異世界じゃないだと?)


 遥斗の「ここは異世界だ」と割り切ろうとしていた考えをサラは全否定する。


「え、えーっと、ならここはどこなの?」


 理解が追いついたのか、遥斗のように考えるのを諦めたのかは分からないが、紬も話に加わる。


「ここは紛れもなく地球ですし、ジャパンですし、遥斗様たちの住所と同じ座標ですよ!」

「……ん? なら、なんでスマホは圏外なんだ?」

「それはここがダンジョンだからですね」

「ダンジョン?」


 出口かと思われたがこの部屋への入り口専用であった扉に近づいたときの声は遥斗しか聞いていないため、紬はダンジョンという初耳の言葉に首を傾げる。


「少し長くなりますが、一から説明させてもらいますね! まず初めに、お二方がここに来る原因となった大地震がありましたね? あれにより、世界の特定の場所に主要ダンジョンと呼ばれる、7つのダンジョンが出現しました。その原因はサラにも分かりません。そしてそのうちの1つ──主要ダンジョンの中で最も攻略難易度が高いダンジョンがここ、アストラルです!」


 遥斗と紬は比較的柔軟な考えを持てるタイプの成績の良さだったため、今までの常識を無視することでなんとか理解に至った。


「疑問しかないと思いますが、特に気になる部分はありますか?」


 サラも理解されにくいことは分かっているので、質問を聞きながら進める。


「うーん、やっぱりダンジョンそのものについてがまだよくわからないよね」

「そうだな。サラ、ダンジョンについて教えてもらえないか?」

「了解であります! お二方に理解しやすいように、基本的構造が同じなアニメとやらのダンジョンを思い浮かべてもらってほしいです! これを踏まえた上で、ダンジョンの説明をさせていただきます! ダンジョンとは、お二方が想像しているような魔物が徘徊しているものです。ダンジョンの形状はさまざまで、迷路タイプや洞窟タイプ、地下タイプやタワータイプのものもあります。ここまでは大丈夫ですか?」


 予め言われていたアニメのダンジョンを想像することで、2人が理解するのにそこまで時間はかからなかった。


 サラに2人が頷き返すと、サラは説明を再開する。


「ダンジョンは先程も言った7つの主要ダンジョンだけでなく、通常ダンジョンも存在します。不定期ながらも世界中のあちこちで生成されています。ここまで理解してもらえればダンジョンは大体大丈夫だと思います!」


 サラのわかりやすい説明と2人の頭脳により、スムーズにダンジョンの説明を終わらせることができた。


「アニメみたいなダンジョンがあるってことは、剣とか魔法とかもあるのか?」


 遥斗は、ふと気になったことをサラに質問する。


「よくわかりましたね! その通りです!」

「え、ほんとほんと!? わたし、魔法とか使ってみたいなぁ!」

「では、次にそこの説明に行きましょうか!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る