2.自宅
第7話:歓待の時間
ちびっこお泊まり会から数日後、俺は客人を自宅リビングに迎えていた。
「「お邪魔します」」
「いらっしゃい、二人とも。ユニさんガーベラさんもこんにちは」
「こんにちは。世話になる」
「こんにちは!」
双子のエディちゃんとストラくんと、そのご両親であるユニさんガーベラさんである。
「ミオ!」
「かわいい」
双子は、週に二日我が家にやってくるミオとお友達。俺の後ろで照れていたミオに抱きついてはしゃぐ。
「おやつとおもちゃ用意してあるから、和室で遊んでおいで」
「「はーい!!」」
きゃあきゃあと駆け出していく後ろ姿までもが超キュート。平和の象徴だ。
大人組はリビングにテーブルセッティングしてあるので、ご夫婦はそちらに案内。
「手慣れてるわね、光太」
「父親になった」
「ありがとうございます。ミオが日に日に可愛くなっていきます」
「わかるよ。我が子とはとことん愛くるしい」
「そちらの双子ちゃんも元気で可愛いっす。いつもミオのことありがとうございます」
「律儀ね。歓迎してくれて嬉しいわ」
ご夫婦はますますラブラブ。ソファに寄り添って座るだけでも、気品に満ち満ちた相思相愛ぶりが伝わるのがすごい。
「あら、どうしたの?」
「!」
不躾に見てしまった。
「すません。……お二人を見てると、俺も、お二人みたいな夫婦に、京と一緒になりたいなって思うんですよ」
「やーん、嬉しい! でも、ユニのおかげなのよ」
「何を言う。ガーベラが支えてくれるから、俺は生きていけるんだ。愛している」
「ユニ……♡」
さすがユニさん。逃げ場のない真っ直ぐストレートを投げる。
「今日は、子どもたちを見ながら、いろいろお話聞かせて欲しいと思ってます。本命の相談は、京が到着したらってことで」
「楽しみだ」
「なんでも聞いて!」
ではさっそく。
「お二人って何歳から結婚なさってるんですか?」
「俺が21、ガーベラが20の時からだな」
「へえー……勝手にご夫婦同い年かと思ってました」
「こちらの世界に合わせればずれるのよ」
「俺が冬生まれ、ガーベラが春生まれなので、実際は半年くらいしか差はないかな」
「なるほど」
竜の国では基本的に多少の年齢差を捉えてどうこう考える文化はないそう。なんせ寿命が人間より圧倒的に長いからだ。
「子どもはお互い22の時だったよね。シーラが夏に産まれて」
「そうだったな。おまえによく似て可愛らしく、利発な子だ」
「頭の良さはユニに似たと思うよ?」
「?」
「もー……」
ユニさんの天然は変わらずで、きょとんとする彼を撫でるガーベラさんもいろいろ変わらない。
「シーラさんにはお世話になりました」
ミオが生まれたばかりの頃、マルクトさんは産後でぐでっとしており、俺と京は新生児の扱いを知らず、しかし周囲の方々も多忙を極め……といったところへ駆けつけてくださったのだ。
テキパキと状況を整理して采配を振るい、赤ちゃんのお世話を教えてくれた。病院に行きたがらないマルクトさんを入院させてくれたのも彼女だ。
「派遣してくださってありがとうございます」
「京にはルナがお世話になったから、その縁だよ」
ルナというのは、京の友人にして、このご夫婦の娘さん。ルナさん自身も手伝いにきてくださった上で、シーラさんが適任であるとして頼んでくださった。
「お元気ですか」
「うーん……つわりでグロッキーしてるわね。でも体はほとんど元気だし、順調よ」
「!! おめでとうございます」
「ありがと」
「旦那くんとシーラと共に近々こちらに来る予定だから、その時にでもお祝いを伝えてやっておくれ。ミオにお土産を持ってくると張り切っていたよ」
「何から何まで……ありがたいっす。きっと可愛い子が生まれますね」
むっちりもっちりな赤ちゃんが無事産まれ、お母さんも元気でいてくれる。最上級の平和だ。
「ここ最近、ベビーラッシュだものね」
「いまではみんな大きくなって愛くるしいな」
「ですね。エディちゃんストラくんも、ほんとう大きくなって」
ユニさんと同じ虹黒髪に、ガーベラさんと同じ空色の瞳の双子ちゃんは、ミオにぴっとりくっついてお昼寝タイム。ミオもつられて寝ている。
「癒されますねー……」
「そうだな」
ユニさんは転移で三人にタオルケットをかけてくれた。
それからお互いの子どもたちの可愛さやら成長やらを話している最中、ふと思い出す。
「そういえば、アリス先生あたりからこういうプリントもらったりしてますか?」
不審者注意喚起のおたよりである。
「うむ。アリスからは不審者を殺すなと言い付けられており、3人殺——穏便に自首を促した」
「その流れで
「
失敗を恥じてもじもじとするユニさんは、男性ながら超絶的な美貌の持ち主であるから、問答無用で目を奪われる。
ガーベラさんは旦那さんにきゅんとしているようだ。実に通常運転である。
「ユニ、反省は次に活かしましょう。アリスも8割殺しじゃなくって半殺しなら怒らなかったと思うわ。ラインを探っていきましょ」
たぶんアリス先生が言いたいのはそういうことではない。
「そうだな、次から気をつけよう」
「……応援してます」
「ありがとう。善処する」
うん……何はともあれ、このご夫婦に心配はいらないか。
プリントをしまっていると、そばにエディちゃんが来ていた。
「不審者注意」
「……」
俺はタブレットを起動し、ホワイトボードアプリでの筆談を開始する。
『心からしんじられる人をしんじて そうじゃない人をてきどにけいかいしよう』
「心から。……」
彼女はいそいそとユニさんガーベラさんの間に挟まりに行った。お二人からハグを受けて満足げ。
近くにあったメモ用紙に書いて渡す。
『ミオとなかよくしてくれてありがとう』
「ミオ、ミオは、好き」
愛娘を好いてもらえて嬉しい。
「んー」
「……光太、いつもありがとうね」
ガーベラさんが微笑むと爆裂に美しい。
「いやいや、ほんと、こちらこそ普段お世話になってますから。そのお返しですよ」
エディちゃんは文字情報かテレパシーで情報を得ている。ユニさん曰く、3歳頃までの自分と同じなのだそうで、とある異能を持つ子どもに必要なプロセスなのではないか……との推測をしているらしい。
エディちゃんはユニさんに体重を預け、ユニさんは嬉しそうに抱きしめる。
尊くて素敵だ。
「京は元気?」
「元気っす。そろそろ来ますよ」
前のちびっこ大集合の場に参加できなかったことを大層悔やんでいたから、今日のことを知らせたら『予定速攻終わらせてくる』と気合が入っていた。
「京のこと、サラとアリスがよく褒めているのよ」
「ほんとですか。さすが京」
自慢の奥さんを褒められるととっても嬉しい。
そのとき、リビングにある白い扉が開き、京が飛び出してくる。
「……ただいま……!」
「おかえり」
「お疲れ様ね」
「お邪魔している」
京は満面の笑みでお辞儀した。
「ありがとうございます。ひゃわぁ可愛い……」
ガーベラさんに甘えるエディちゃんを見てメロメロだ。
「こうしちゃいられない! 手洗いうがいしてきますね!」
洗面所へ駆け出していく。子どもと触れ合うのならば清潔はなおさら大切だから、医者の卵な京はそれをよく知っている。
「京ちゃん来たの?」
「お、ミオおはよ。そうだよ、京が帰ってきたよー」
近くに来たミオを抱き上げる。
眠たそうにこちらに来たストラくんはユニさんが抱っこしていた。
「父上ねむねむ……」
「うん」
ちびっこたちは今日も可愛い。
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