第147話 カ・マセ
時はかずやんが深淵層配信開始のときまで遡る。
「oh...ついにランキング2位も辞退してしまったか(英語)」
かずやんが深淵層の配信を開始して、軽々1層を超えた瞬間にマネージャーから連絡が来た。
深淵層を単独で攻略できる者は、俺の知る限り存在しなかった。
かずやんの力加減次第では選手生命が絶たれるかもしれないと逃げの一手を打つのは仕方がないことだろう。
「とはいえ…1位の私も辞退したとなると世界ランキングという制度の存在が危ぶまれるかもしれない」
深淵層に挑んだことはある。
だが…私は…私のパーティーは1層も踏破できなかった。
とはいえだ…モンスターと対人戦闘は全く異なるはずなんだが…。
配信からも伝わってくる圧倒的な力量差、こんなもの小手先の技術だけで盤上をひっくり返すことはできないだろう。
かずやんがこのまま深淵層を踏破するなんてことがあれば…
本人が望む望まないにかかわらず、マスコミは真っ先に世界ランキングに焦点を当てて、マッチングを設定されてしまうはずだ。
そうなると俺の今まで培ってきた人気を丸ごとすべてかずやんに食われてしまう。
結果は変わらないにせよ、かずやんが異常に強いということを示さなければ…。
「そういえば…(英語)」
かずやんがSSSランクになった時に、日本人がもう一人SSSランクになったと聞く。
たしか…長老の弟子と言ったか、当初はそっちの方が脅威なんて言われていたが、SSSランクになってから今までで全く話題になっていないことから…実力は大したことはないのかもしれない。
そうだな…これは使えるかもしれない。
ただ、そうなるとかずやんが深淵層にいるうちに行動に移す必要があるな。
世界ランキング1位兼、God Knowsの前衛でデストロイヤーの異名を持つカ・マセはマネージャーに連絡を取った。
~~~~~~~
『ヘロー皆さん!本日のタイトルマッチはー…
東洋が生んだ怪物かずやん!
…と言いたいところだが彼は今なんと深淵層をソロで探索中だ。
だが同時期にSSSランクになった武蔵境が殴り込みをかけてきたぞ!
彼のことを知らない人もいるかもしれないが…
東洋…いや日本の長老と言えば知らぬ者はいないはず…その一番弟子が武蔵境だ!
ちなみにかずやんも二番弟子とかいう噂があったりするんだぞ!?
世界ランキングに挑戦するのは初めてとのことだが…その実力は如何に!?
そして対戦するのは…な、なんと…世界ランキング1位!?
God Knowsの最強前衛と言えば知らない人はいないはずだー!
デストロイヤーの異名を持つカ・マセ!!
長老の弟子と世界ランキング1位の戦いの火ぶたが今ここに落ちる!
さあ…両者登場してくれ!』
実況の人がマイクを持って熱く叫ぶ。
ドンッ!ドンッ!!ドンッ!!!
火花が吹き荒れ、激しい音楽が流れるなか姿を現したのはカ・マセ。
両手に黄金に輝くドラゴンの顔がデカデカと付いたナックルをハメた拳を天に掲げ、ウォー!!!!と叫びながらリングに上る。
その反対側からスーツ姿に黒手袋、腰に刀を差した姿でリングに向かい歩いてくるのは武蔵境。
音もなく、演出もないだが凛としたその姿に会場がシンッと静まり返り息をのむ声が聞こえてくる。
リングに上るも顔は無表情、品定めするようにカ・マセを見る。
「滾らせてみせろ」
「oh…何を言っているかわからないがよろしく頼むよ(英語)」
「ファイ!!」
レフェリーが試合開始を宣言した。
「長老の弟子…相手にとって不足なし。最初から全力で行かせてもらうよ(英語)」
ドラゴンナックルのドラゴンの口に氣が集約しバチバチと音を立てる。
両手のナックルをぶつけると、雷がバチンッと弾け俺の全身を包み込む。
俺はこれをライトニングアーマーと呼んでいるが、これを纏うことで攻撃力と速度の身体能力の限界を突破することができる。
そしてこのナックルには俺の氣を増幅させる効果があり、近距離でも遠距離でも必殺の雷撃を放つことができる。
知名度の低いSSSランク探索者に対してやりすぎかもしれないが、一撃で沈めることでかずやんの強さが際立つはずだ。
ライトニングアーマーで身体能力を強化した状態で、限界まで氣を込めたナックルを振りかぶる。
「悪いな。せっかくここまで来てもらったが…この一撃でおしまいだ(英語)」
バチッ!ドゴンッ!!!
空気が爆ぜる。
雷を纏った一撃を放った。
「少々…いや期待外れだ」
何を言っている?
レフェリー兼、翻訳が放った一言に耳を疑った。
期待外れだと?
深淵層のモンスターともやりあったこの一撃が…期待外れだと?
なら受けてみろ!
さらに氣を雷に変え自身の速度をさらに上げる。
目で追える速度を超えた必殺の一撃。
「ドラゴンスマァァァァァッシュ!!(英語)」
武蔵境に叩き込んだ本気の一撃は――
届くことはなかった。
「これは…滾らん」
ギラリと光る刀を視界に捉えたと同時に視界が暗転した。
「安心しろ、峰打ちだ」
カ・マセの身代わり石がはじけ飛ぶ。
会場が静まり返る。
二人のやりとりを目で追えた者がいない中、爆音が響き渡ったと思った次の瞬間。
カ・マセが白目をむいて倒れていたのだがら無理もないだろう。
レフェリーが試合終了を告げる。
『ななな…なんと!?
勝負は一瞬…武蔵境がカ・マセを倒したぞー!!!
未だに信じられない。
不敗の記録を一撃で終わらせ、世界ランキング1位が入れ替わった!
ということは…かずやんの次の相手は…
日本の探索者同士の戦いだー!!
誰が想像したか。次のランキング戦を心して待てー!!!』
世界ランキングの舞台で、武蔵境と戦うことになったことをかずやんはまだ知らない。
―――――――――――
「★★★」「ブクマ」「コメント」いつもありがとうございます!
ランキング戦の登場人物と能力とか書くことなく
まさかの世界ランキング1位が交代するという成長チート…
この流れ…私…かずやんvs武蔵境の対人戦書くの!?(フラグ回収)
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