第135話 かずやんの春休み(5)欲望に忠実に
「すみません!急な機材トラブルで配信が止まっちゃいました!」
<さっき人の声がした気がしたけど気のせい?>
<配信止まってマジビックリしたよ!?>
<カメラの品質上がった?前より画素が良くなった気がする…>
<あれ?眼鏡どこ行った?まさか壊れた?>
<ってことは、今コメント届かないの?>
<【666円】「絶許」絶許!絶許!絶許!>
<それは困る!って言ってますぞ?>
<なんでわかるんだよ!?>
「あー…それなんですが安心してください。コメントは見えてます」
<まっ!?>
<どういうこと?>
<えっ?眼鏡は?眼鏡がないかずやんなんて…いやこれはこれで…(俺男だけど)>
<【666円】「絶許」絶許!絶許!絶…許?>
<((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル>
「今まで使ってた機材が壊れちゃったんですが、深層で検証して欲しいって頼まれていた次世代型のドローンカメラとライブグラスを受け取ってたので機械を切り替えることにしたんです。ライブグラスは眼鏡からコンタクトに変わったみたいなんですよね」
言い訳にしては苦しい…苦しいが…許してほしい。
<マ?>
<前は普通に案件って言ってドローンカメラ投入してたのに…気配りができるようになったんかw>
<流石に…うそやろ?って言いたいが、かずやんコメント見えてるんだよね…>
<そもそも深層に対応するレベルの寒暖差に耐えられるドローンカメラ売ってないんだけど…かずやんのカメラどこで作られた機材なんだろう?>
<オーパーツ?>
<まさか…まさかね?>
スルーしてくれてホッと一息。
そうだよねー…疑問に思うよねー…俺も思うもの。
「さて、牛鬼を倒したので…飯にしましょう!もう腹が減って腹が減って…」
<見た目蜘蛛っぽい見た目だけどどうなんだ?>
<うーん…食えるの?>
<妖怪を食う発想はなかった>
「それがですね…この足の断面見てくださいよ!?」
うっすらと輝くプリップリでみずみずしい肉が詰まった足。
見た目は蜘蛛っぽいが…異なる存在のようだ。
この感じは…カニの足を彷彿とさせる。
6本中前足の2本が輝く肉が詰まっていて、残り4本は普通においしそうな肉がぎっしり詰まっていた。
お試しで…殻をむりくり引っぺがすと、甘い香りにうっすらと輝きつつも薄ピンクの肉が姿を現した。
ゴクリと息をのむ、魅力的な肉を前に我慢できるわけもなく…
一からだしを取る時間ももったいなかったので、昆布と鰹節の合わせだしに日本酒と湧き水で割った鍋を用意して肉をしゃぶしゃぶ…。
捌きたての新鮮な肉が華開いていく。
しゃぶしゃぶするごとに、口の中でよだれがあふれ出てくる。
うっすらと白みがかったぐらいの霜降りにした状態で、一口じゃ頬張りきれない巨大な足にかぶりつく。
ジュワっと、身体から失われたすべてを補ううまみがあふれ出てきて身体が震える。
モンスターが持つ生命力が…すべてが身体に染みわたって、疲れが吹っ飛んでいく。
<かずやんがつるつるテカテカしてるww>
<元の姿さえなければ…旨そう…>
<元の足を想像しなければ…>
<前のカニパを思い出すなー…>
「はぁー!空腹で死にそうだったんで…生き返りました!これは…味を極限まで濃縮させたカニですね!噛んだ瞬間カニの身からジュワっと出てくる肉汁に、口の中でほろほろとほぐれて口いっぱいに旨みが残りますね」
一本を一気に食べきり、ふぅっと息を吐く。
酒を飲むのも忘れて食べてしまった。
とりあえず…多少は腹の虫が収まったので、残りの肉を解体することにした。
蜘蛛の腹っぽいのは丸々と太っていたが、少し切ってみたがめちゃくちゃ油の乗った牛肉に近い肉質の肉が出てきた。
解体を進めていくと、毒袋のようなものを見つけたので傷をつけないように慎重に取り除きつつ、一通りの解体が済んだ。
牛鬼…牛の顔に、蜘蛛の見た目で中身はカニと牛肉…鬼の要素はどこにあるんだろう?
牛の頭に鬼の身体の牛鬼もいるらしいが…イメージしてみよう。
ミノタウロスと差別化できないだろうな。
遠い目をしながらさらに肉を部位ごとに切り分けて、今回使う分を用意する。
腹の肉はどこを見ても光ってなさそうだったので、牛鬼は足にすべてが詰まっているのかもしれない。
「立派なさしですねー!これはこれで美味しそうです」
<牛鬼からこんな立派な肉が取れるのか…>
<和牛って言われても違いが判らん>
<足はカニ、身は牛肉って贅沢の宝庫やん>
<※注意:狩れるのはかずやんのみ>
<武蔵境さんも狩れるはず!?>
<それもそうだなw>
さて、この肉を使って何を作ろうか?
何も考えずカニしゃぶしてしまったので、素材を楽しむというより料理した感があったほうがいいだろう。
<かずやんが本気で考え事しているだと?>
<一体何があったというんだ…>
<戦闘中でもこんな姿見たことないぞ?>
真剣に考える姿にコメント欄で心配されてしまった。
―――――――――――
かずやんが真剣に考えるシーンあったっけ?
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