第134話 かずやんの春休み(4)いれぎゅらー

「ふぅ…終わりましたね」

<体格差をもろともしないのか…>

<正面で受けて吹き飛ばせるのがすごいわ>

<マジで人間辞めた一撃!>


完全に動かなくなったことを確認して、念のため軽く解体を済ませた後、時計を見ると時刻は19時を回ったところだった。

丁度良いタイミングだから晩御飯を作って、飯を食ったら明日に備え…って!?


色々考えていた矢先、ダンジョンに入る前に感じたのと同じ違和感を感じてとっさに振り返った。


「誰か…いるのか?」


<おいおいおい…どうしたんだよ?>

<妖怪がボスだったから幽霊でも出たのか?>

<…あれ?映像が見えなくなったぞ?>

<マジだ>

<おーい!かずやん配信が見えないぞー?>



「あらら…見つかっちゃいやしたね」

「見つかるように仕向けたでござろうよ」


尻尾が日本生えて二足立ちして、変わった語尾を付けて喋る猫が二匹、しかもサムライっぽい風貌で現れた。

「この配信は…ここで止めさせていただきやすね?」

そう言うや否や…配信していたドローンが急に動かなくなり地面に落ちて、強制的に配信がストップした。


「お久しぶりでございやす。あっし猫又のチュー吉と言いやす」

「おいらも猫又のチュー太でござる」

猫が二足歩行で立っているし、猫が喋っているし、猫なのにネズミっぽい名前だし…ツッコみ待ちの行列だ!!

それに何より…お久しぶりと言われるが…俺に猫又の知り合いはいない。



「自己紹介どうも…って、それよりもドローンに何をしたんですか?」

このドローン、止めるにしても俺が操作しないと止まらないはずだ。

目の前の存在は、一体何をしたというんだ?


「ああ…奴さんまだ気付いてないようでござるよ?」

「お主…鈍いでございやすね。このカラクリは便利でございやしたか?」

…カラクリ?ドローンカメラのことか?


「そうですね…ここまで配信続けられたのは、このドローンカメラがあってこそですね」

「それは良かったでござる。ただ…これより先にそのカラクリを持っていくと…速攻で壊れるでござるよ?」

「な、なんでそんなことがわかるんですか!?」

喋る猫と会話するという未知の経験に違和感を感じずにいられないが…この猫たちは何かを知っているというのか?


「あーもう鈍い男でございやすね。そのカラクリを送ったのがうちの者でございやす。下層・深層レベルであれば熱とか冷気あと衝撃に対応しておけばどこでも配信できましたが、空間の変化に作用する効果までは対応していないでございやす」

そういうとチュー吉は何もなかった空間から箱を取り出しこちらにポイっと放り投げてくる。


「ほれっ、受け取るでございやす」

受け取った箱から出てきたのは…ドローンカメラとライブグラス…じゃない?


「これは一体…」

「今の時代、眼鏡は旧式、時代遅れでございやす」

「それを言うと炎上するでござるよ?今はまだ眼鏡が主流でござるよ?」

「網膜に張り付けて使用する眼鏡…もどきでございやす!」

チュー太の話を華麗にスルーするチュー吉…眼鏡は目に入らないからな?

わかっていると思うけどコンタクトレンズな?


「ささっ…かずやん殿つけるでございやす」

「…なんでここまでしてくれるんですか?」

異質な存在だが、人をダマすような感じもなく…、若干の抵抗感はあるがコンタクトを装着した。



「投資でございやす」

「娯楽のない世界でも、娯楽は必要でござるよ」

答えのようで答えに全くなっていない…何を言っているのかわけが分からない。


口に葉っぱを加えたチュー吉が刀を抜いて掲げる。

「低級の物の怪の核を食らうことで一時的に力を発揮した過去から、物の怪を調理して食べることで物の怪の力をそのまま吸収して武士もののふへ変態していく過程…」


かわいい二足歩行の猫とは裏腹に…抜いた刀から放たれた圧に一切の身動きが取れなくなる。


「お主は不規則で変則的な存在、なうでやんぐな言い方をすればいれぎゅらーでございやす。その身に宿す化け物の生末を見届けたいと思う同族もいるのでございやす」

「…ちょっとしゃべりすぎでござるな。時間になってしまったでござる」

「もうちょっと話していたいところでございやしたが…こっちに来ると時間制限があるのは少々面倒でございやすね…」

「またいつか、我らの里でお会いできるのを楽しみにしているのでござるよ?」


一方的に話す猫は、そう言い残して二匹…二人?は深淵層へと続く道を下っていった。

姿が見えなくなると刀の圧が消えて、身体が動くようになった。


喋るモンスター…。

いや、モンスターというにはあまりにも人間らしさを感じられる存在…。



いなくなった安堵感、喉がカラカラに乾き、全身から汗が噴き出ていた。

狂暴化バーサークでどうこうなる存在ではないだろう。


味方かはわからないが、今の時点で敵ではなかったことに安堵した。



「ああ…配信を再開させないと…」

地面に転がっていたドローンカメラを拾い上げるも、役目を終えたのかうんともすんとも言わなくなっていたので、新しい機材を見たが今までと使い方に差はなさそうだ。



とりあえずカメラを起動する前に…水分を補給して、濡れた衣服を着替えて気持ちを落ち着かせた。


普段感じない緊張感で…腹が減った…。

はやく…飯にしよう。


―――――――――――

ダンジョンで配信する機械に、オーパーツを用いることはできるけど

どういう原理で通信できるか…この点は物語の七不思議になりそうですね!

((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

七つも不思議ないですけどね!?


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