第131話 かずやんの春休み(1)観光ダンジョン

現在、会社は春休み。


そんななか俺はというと、電車に揺られ…やってきたのは群馬県。

魅力度ランキング44位と47都道府県の中でも下位扱いを受けてしまう県、映画ではツッコミどころ満載でネタにされていたりする。


さて…そんなグンマー帝国…いや群馬県に足を踏み入れた。



群馬と言えば温泉が有名だが、そのうちの一つ草津温泉がダンジョン化してしまっている。


少し前は観光する人でにぎわっていたと聞くが、今はダンジョンの影響もあって探索者でにぎわっている。


朝早くから電車にゆられて飯を食う暇もなく、遠路はるばるやってきた俺がここまできて真っ先にやったのは…

焼きだんごを買って腹を満たすことだった。


串にみそダレがたっぷりついた団子が3つ刺さったものをじっくり炭火で焼いた一品。

味噌の香ばしく焼けた匂いと、甘じょっぱい味、外はカリっと中はもちもちの食感。


お手軽でサクッと食べられるので探索前にもってこいだ。

…いやきっと探索後にも疲れた身体にこの味はいい塩梅なんだろうなー。


一口食べれば昔懐かしい感じを思い出させてくれるほっとする味、モンスターを食べた時の衝撃を受ける旨さとは異なるがこういうのがいいんだよ。

味噌と炭水化物の偉大さを改めて思い出させてくれる。


「えっ?あれかずやん?」

「まじ?」

「うわっ!リアルかずやんじゃん…」

「なんでここにいるんだよ!?」

「Yで配信の通知きてたっけ?」

「めっちゃ団子うまそうに食べてる…」

「俺も探索前に食べていくか…」

「俺も…」


焼きだんごを食べていると、周りの声が耳に入る。

流石人気の探索者スポット、ダンジョンの入口付近にいるのはほとんどが探索者、視聴者以外も俺を知っている人が多いようだ。

「これから草津ダンジョンに挑むので、皆さんよろしくお願いしますね!」


「まじかよ!?」

「かずやんって観光ダンジョンにも挑むのか…」

「このダンジョンってそこまで深いんだっけか?」

「一応深層はあるってきくけど…どうなんだろう?」

「つっても、中層を軽々踏破できるような探索者って、まずこのダンジョンに来ないしね…」


朝食を食べ終わった後は、食後のデザートに温泉饅頭を食べる。


ダンジョン化して客層が変わってしまったらしいが、この近辺にあるお店を見るに変わったニーズに合わて商売を続けているらしい。

商魂たくましいというべきだろう。


しょっぱいものを食べた後に、あんこたっぷりの甘い温泉饅頭を食べると、食が刺激されてもう一度食べたくなってしまったが…

探索して食べる旨い飯もあるので、後ろ髪を引かれながらもダンジョンの入口に向かうことにした。



さて、このダンジョンが観光ダンジョンと言われていたのは、上層~下層の難易度が普通のダンジョンよりも難易度が低いかららしい。

中層のフロアボスもミノタウロスではなく、ミノタと比べると弱いとも言われている。


このダンジョンの探索に慣れてしまってから、別のダンジョンに行くと中層のフロアボス時点で難易度の高さに衝撃を受けることから初心者向け遠征ダンジョン、遠征するついでに観光もということで、観光ダンジョンと言われるようになった。

とはいえ深層以降はほかのダンジョンと同じぐらいの難易度に上がるらしいので、ある意味上げて落とす鬼畜ダンジョンと言えるだろう。


ここにいる探索者の中で深層まで行ける探索者はどれぐらいいるかわからないが…。


軽く辺りを見渡してみるが、氣を纏っている探索者はごくごく一部しかいない。

氣を抑えるにしても少しはにじみ出るはずだが、それがないということは氣を高度に制御できるレベルの高い探索者か、氣を扱えない初心者のどちらかになる。

ここにいる探索者は…中層…ちょっと下層を探索できる探索者の集まりかな?という感じかもしれないな。


「ん?」

探索者の中で異様な気配?視線を感じた気がして、辺りを見渡すが…その時にはもう違和感は感じられなかった。

「気のせいか…」


気にはなったが、ここで時間を消費するわけにもいかないので探索を開始することにした。



ダンジョンに入ってから…配信を開始しようかと思ったんだが――

「人多いな…流石観光ダンジョン…」

他の人の迷惑になるので上層での配信を諦め、中層に移動するもここも人が多い。

かずやーん!っと声を掛けられることも多くこれだと探索配信にもなりゃしない。


下層はどうだ?と思ったが…下層も浅い層は探索者がまばらにいて配信する空気にはなれず…

そのまま人のいないフロアまで場所を移すことにした。


ちなみにだが…中層のフロアボスは討伐された後で、姿を拝むことはできなかった。

見てみたかったなー…中層フロアボスの温泉モンキー。


下層フロアのフロアボスは討伐されずにいたので、このダンジョンを訪れている探索者は下層の浅い層を主に探索しているようだ。



「皆さんこんにちは!本日は…草津ダンジョンの下層フロアボスがいるフロアから配信を行っていきます!」


<配信キタ――(゚∀゚)――!!>

<こん!>

<ゲリラ配信!!>

<まっ!?>

<いち!>

<ざんねん!>

<春休みもかずやんに会えた!>

<【8,989円】今日の配信な、なにー!?>


「いやー…うちの会社も春休みで2週間ぐらい休みにしちゃったんで、今日はのんびりダンジョン探索をしていきたいと思ってます!」

今の段階では、深淵層に挑むことは言わなくていいだろう。

ゲリラ配信で長時間配信を予定しているっていうのもまた驚かれそうだが…まあ春休みだしいいよね!


<2週間会社を休み…だと…>

<そんなの絶対おかしいよ!>

<フロアボス真後ろにいるのに、のんびり配信って…>

<いくら草津ダンジョンの下層のモンスターが弱いって言っても…フロアボスだよ…>

<さすがかずやん…五大ダンジョンの深層を踏破しただけあるわー>

<かずやん、後ろ後ろ!!>

<緊張感ー!!>


―――――――――――

焼きだんご美味しいよね!

筑波山が群馬県にあると勘違いしたまま書き進め5000文字超えたところで、違和感を感じ検索したら茨城県だった時の絶望感。


現在物語を軌道修正中でございます…。


本物語、カクヨムコンの中間選考突破してました。

応援ありがというございます!


また「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!

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