第127話 救助

「えーっと、遭難していた探索者の皆さんですか?」

小型翻訳機を取り出して話し掛けてみる。

「モンスター!?ここはセーフゾーンのはず…いや人?(英語)」

「クッキングモンスター…?(英語)」

「私たちは助かった…のか?(英語)」

「……」

これは便利だ。双方向のやり取りが非常にスムーズにできている。


満身創痍の姿で、セーフゾーンに身を寄せていた4人の探索者、しゃべることのできる3人と、しゃべるのもきつそうな1人は腕を失い顔色も青白い。


とりあえず傷が深い探索者に深層の湧き水を1人に飲ませると、ビクンッと跳ねて痛みで気を失ったようだ。

ただ青白かった顔色が戻り、生気が宿ったので多分大丈夫だろう。…多分?痛みで逝かないよね?

無くなった腕が生えてくるかは五分五分だが…そこは俺にはどうしようもできない。



モンスターの気配はもうないので、辺りを見渡してみる。

セーフゾーンの先にダンジョンポータルが見つかったので、ここが深層の最深部で間違いないだろう。


ただ…気になったのはダンジョンポータルのその先だ。


まだ続いているぞと言わんばかりの洞窟の入口…。

気にはなるが今優先するのはそこではないだろう。


「ここのフロアボスに挑んで早々盾役のそいつが腕を失ってな。そこからの展開は一方的だったよ(英語)」

「逃げ回っていたらこのフロアから逃げることも出来なくなっちゃってね(英語)」

「たまたまセーフゾーンを見つけて逃げ込んだものの、通信機器はあの雷でダメになって連絡できずだったんだ(英語)」

「ここは深層のフロアボスだろ?助けなんて来ないと思ったが…ありがとうかずやん。君の仲間にも挨拶をさせてくれないか?一人でここまでは来れないだろ?(英語)」

「……」

えーっと…聞いてもいないのに色々話してくる。それほど心細かったんだろうか?

ただ…俺ソロで来たって言いにくい空気だな…。


「そうか…ボスを倒すまでに亡くなってしまったんだな…俺たちが…無謀なことをしたから…すまない(英語)」

沈黙を、亡くなったと捉えたようだ。

なんかこのままにしておくのも気の毒だ。

「いや…俺ソロ探索者なんで…ここまで一人で来たんですよ?なので誰も亡くなってないのでそこは心配しなくて大丈夫ですよ?」

「は?(英語)」

「うそ…でしょ?(英語)」

「フェンリルの大群もいただろ?あんなのソロで踏破できないぞ?(英語)」

「いやそれよりフロアボスだろ…4人がかりで挑んだが、落雷と雷のシールドでダメージが一切入らなかった。どうやって倒したんだ!?(英語)」


答えるのも面倒になってしまった。

とりあえず、気になるようだったらあとで配信を見てくれと言いつつ…

「とりあえず…腹減ってないですか?」

「「「…ぐー…」」」

三人の腹の虫が一斉に鳴く。

「行動食は持っていたんだが…流石に量も足りなかった(英語)」

「ごはん食べたいです…(英語)」



「飯にしましょう。俺もお腹すいちゃいました」

マジックバックからフェンリルの肉とロック鳥の溶き卵を取り出し、フェンリルは薄切りにスライスしていく。


スライスした肉に薄力粉、カレー粉、塩コショウで下味をつけて、ロック鳥の溶き卵には粉チーズを入れてよくかき混ぜる。


あとはロック鳥の溶き卵に下味をつけた肉をくぐらせ、ホットサンドメーカーに並べて焼いていく。

今回は人数もいるので、二口コンロで大量調理していく。


「ダンジョンで飯…(英語)」

「手際良すぎだね(英語)」


「ここは…(英語)」

気を失っていた一人も匂いにつられて目を覚ましたようだ。


「おお…目を覚ましたか!?安心しろかずやんが俺たちを助けてくれたんだ!(英語)」

「かずやん…?…救助が来たのか!?(英語)」


「ははは…私も依頼で来ただけなのでそこまで気にしなくて大丈夫ですよ」

「依頼でここまで来れる探索者はいないだろ?かずやんの仲間は?挨拶させてくれ(英語)」

「ああ…かずやんはソロ探索者なんだ。ここまでもソロで来たらしい(英語)」

「マジかよ!?一人でここまで?クッキングモンスター…名前通りの怪物だったんだな(英語)」

褒められた感が一切しないのはなんでだろう?いや褒められてないからか。

それはそれで辛いぞ?


「しかし…なんだこの美味しそうな匂いは…ここはまだダンジョンなんだろ?(英語)」

「かずやんが飯を振舞ってくれるらしい。助けてもらえるだけで感謝しかないのに飯まで…なんていいやつなんだ(英語)」

「おお…かずやんは神だったのか。ありがとう(英語)」


「神なんて大げさですよ。」

目じりに涙を浮かべ手を合わせる姿は神に祈る信者のようだ。

いやそんな大それた存在じゃないからね?


<ただの食欲の化身だもんなw>

<まあ食のためなら手段を選ばないのがかずやんですし>

<平常運転だから問題なし>

<かずやんの手料理…うらやましい>

<【666円】「絶許」絶許!絶許!絶許!>

<しかし…神ってww>

視聴者…ひどい。


―――――――――――

「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!


作っている料理の正体は!?

次回に続く!

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