第120話 豪雪

さて…フロアボスのいる階層に足を踏み入れると…

待っていたのは一面の豪雪


膝まで埋まる雪の中、ズシンズシンと腹に響く音が聞こえてくる。


毎度思うが…ダンジョンというのはなんでもありだな。


氷山フロアといえども、本当の氷山もあれば、雪山の時もあり、今みたいに豪雪地帯のようなフロアまである。

まあ…深層の情報が少なくて、下層からフロアの区分が作られているから仕方がない部分はあるのだろう。



さて、遠くにモンスターの影が…影が…


「うぉっ!?でっかっ!?」

<うぉ!>

<〇ノ国で見たやつ!>

<ワ〇国のゾウじゃん>

<この環境下だとマンモスか?>

<めっちゃ足音入ってる>


…これは倒してよいのか?

でも…これは…まさに…


<【2,000円】かずやん!よだれよだれw>

<絶望が先行せんところがかずやんやな>

<こんなん勝てるん?>

<一体何人前の肉になるんやw>

<おっ!姿が見え……めっちゃ毛深い!?>


ズシン、ズシンとこちらに向かって歩いてきたそいつは、こちらに気付いていなさそうだった。


高さ10mぐらいあるのではないだろうか?

その視界には俺を捉えていなさそうだ。


ミスリルアーマーマンモス――


俺の身長ぐらいのある太い足が地面を踏みつけると、新雪が圧縮されアイスバーンができあがっていた。

風圧で周りの雪が舞い、巻き込まれる形でガッツリ雪をかぶり雪だるまになった。



雪を払い飛ばす。

「ふぅ…、相手はこちらに気付いていないようなので…開幕の一撃をかましてやりましょうか!」

短刀に氣を纏わせると…その氣の刃をそのまま放つ。

足の一本でも落とせば自分の自重で自滅するだろう。


そう思っての一撃は…身を守るように生えた毛にはじかれて傷一つつかなかった。


『ブフゥウウー』

マンモスから鼻息が漏れる。

傷はつかなかったが、どうやら俺の存在に気付いたようだ。


ルビー色した瞳が俺を捉え、鞭のようにしならせた長い鼻が地面に叩きつけられる。


かわしたところに、叩きつけられたときに圧縮された雪、いや氷のつぶてになった無数の塊が飛んでくる。

あの巨大から生み出された氷のつぶて…ただの氷のはずなんだが…一粒一粒の威力がさっきのサボテンとは段違いだ。

氣の盾にぶつかり弾け水蒸気がカメラを覆い視聴者の視界をふさぐ。


「氣の盾が壊されました…これは予想外…でした…」

カメラの自動リカバリ機能で視界が晴れてくると…。


氷のつぶてによる無数の切り傷を身体に刻みつけられていた。


<うぉ…かずやん…大丈夫か?>

<まじかよ…いつもの余裕はどこ行った?>

<こんなかずやん見たくない!>

<【666円】「絶許」…絶許!絶許!絶許!>

<そうだ!かずやんこんなところで死ぬとか許さんぞ!?>

<あっ…>


「ははは…厳しいご意見ですね。安心してください。致命打はありませんから…ただ…見ての通り普通の状態だと勝てないかもしれないですね。…ってことで狂暴化バーサークLv1!」

豪雪で氣を纏っていたときも肌寒かったが、身体が熱を帯びてくる。

この状態にもだいぶ身体が慣れたようで…反動がなくなってきたようだ。


一度敵として認識したマンモスはこちらが生きていることにご立腹のようだ。

再度鼻を振りかざして地面に叩きつけようとしてくる。


少し距離を取り氣の刃を飛ばすと、鼻の強度を測ることにした。

ガンッっと氣の刃が鼻にぶつかり弾け飛んだ。


もしかしたらと思ったが…やはりあの毛の防御力がずば抜けて高い。

遠距離攻撃ではどうにもならんかった。


<まじかよ…かずやんの狂暴化バーサーク状態の氣の刃すら弾くのかよ…>

<深層のフロアボス硬すぎだろ…>


氷のつぶてを難なくかわしたが…、こちらのダメージが通らないと話にならない。

氣の刃を至る部位に飛ばしたが…全く傷がつかなかった。



うーん…物理攻撃を解禁するか?

いや…今の全力で殴ると多分かもしれない。


「困りましたね…マンモスのミンチは料理映えしない…」

<いや…言ってる場合かよ?>

<自分の置かれた状況を考えろよ!?>

狂暴化バーサークLv2を出し惜しみするなよ!?>


叩きつけた鼻を再度振り上げ、そして叩きつけようとしてくる。

…考えている時間が与えてくれないようだ。


「ああ…丁度いい技がありました!…居合、獅子〇ソン!!」

<【10,000円】ちょっとまてぇ!?>

<かずやんそれはあかん!>

<技名変わってるって!>

<おい!うそやん!>

<緊張感!?>

<【666円】「絶許」絶許!絶許!絶許!>

<絶許氏も流石にヤバいって言っておられるぞ!>

<なんでわかるんだよ!>


キンッ!

瑠璃色の閃光が走り、刀が鞘に戻る音が響く。


「GYA…GYAーーーー!!!!」

マンモスの鼻が重力を無視してはじけ飛ぶ、鼻から水の変わりに血を吹き出し悲鳴にならない声が響く。


「うるさいなー…ちょっと黙ってください。視聴者の耳が死んじゃいますよ」

短刀に氣を纏わせて力のまま振りかざす。



技名など何もないただ力任せの一撃。



ズドォォオオオオオオオオオン!!!!


轟音と共に、ダンジョンが揺れた。


辺り一面の雪が舞いカメラを白く染めた。


―――――――――――

「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!


三連休最後の日ですね!

珍しく時間があったので二日連続更新です。


さて…結末はどうなる?

ちょっと風邪気味なのでしばらく更新できないかもしれません…。


家族サービスはほどほどに…最終日はしっかり休みます!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る