第117話 年始は氷山へ

ランキング戦の頻度はそこまで高くないというのと、無傷で大会を終えることができたので…

年始の探索を開始することにした。


本日は県をまたいだところにある未踏破ダンジョンに挑む予定だ。


ダンジョンへは電車で移動し、その間に調べた情報だと

下層はどうやら氷山フロアになっているらしい、深層に挑んだという情報はなかったので深層以降は未知数のようだ。


氷山ダンジョンといえば…過去のアイス・ワーム事件を思い出しつつ、今回はそんなヘマはしないようにしようと心に誓った。


「あ…あの?違ってたらすみません…かずやんさんですか?」

スマホの情報収集に集中していたのと、まさか声を掛けられるとは思っておらず、反応に遅れた。

「えっ、あっ…はい。かずやん…です」


「まじっ!生かずやんさんじゃん!ファンです!サインください」

男女のペアがこちらの存在に気付いたようで声を掛けてくる。


「サインですか?書いたことないのでうまく書けるかわからないですよ?」

そう言いつつ、特にサインなんて考えたことがなかったので、「かずやん」と書いたら…。

「うぉおおー!!これ家宝にします!俺かずやんさんに憧れてるんです!今日なんと…こいつと一緒にミノタを倒すことができたんですよ!」

サインに感動してくれたようだが…ちゃんとサインを準備しようと本気で思った。


この男女ペア…ミノタを倒せたってことはCかBランク探索者ということだろうか?

「氣ってのがまだよくわかってないんですが、わかるようになったら、いつか下層に挑もうと思ってます!かずやんさんはこれからダンジョン探索するんですか!?」

「そうだねー。これからダンジョンで配信しようと思ってるよ」

「まじっすか!今探索帰りなんで、こいつと一緒に家で探索配信楽しみにしてますね!」

「いきなり声を掛けてしまってすみません。彼かずやんさんのファンで…いつも配信を楽しみにしてるんです。つい先走って配信内容を聞いちゃうんですよー」

「おっ、おいっ!言うなよ!ほら俺らの降りる駅だぞ!かずやんさん配信楽しみにしてます!ほらっ!配信始まるまでに帰らないと!ここで配信内容を聞くなんて野暮なことはできないんだからさ!」

「ははは…配信楽しみにしてます」


そう言いながら二人は電車を降りると、ダッシュしていった。

最初はちょっとチンピラっぽい雰囲気を感じたけれど、めちゃくちゃ感じのいい人たちだったな。




さて…男女二人を見送り、電車に揺られてダンジョンまでやってきた。

ダンジョンに入ってから配信を開始する。


「こんにちはー!探索者ランキング戦が運よく無傷で終えられたので、本日は探索をしていきたいと思います!」

<こんー!>

<こんちゃー!>

<こんにちはー!>

<ランキング戦オンライン配信で見ました!>

<ワンパンでかっこよかったよー!>

<ワンパンだったから会場で見てたのに即終了で物足りなかったー!>

<【666円】「絶許」絶許!絶許!絶許!>

<絶許氏も荒ぶっているぞ!>

<かずやんが悪いというよりは…シュワちゃんが煽るだけ煽って自爆ってのが…微妙だったなー>

<【8,989円】今日の配信なにー?>


「ははは…次回のランキング戦は、ランカー相手になるので苦戦必須かもしれません…負けちゃったらごめんなさい。本日は未踏破氷山ダンジョンの深層に挑みたいと思います!…年明け早々なので深層踏破より、ダンジョン飯したいなーって思ってます!」

<深層でダンジョン飯w>

<深層はそんな気軽にいく場所じゃないwww>

<流石かずやんww>

<今回はアイス・ワームに食べられないでくださいよ!>

<そういやそんなこともあったなwww>

下層踏破の記録もないダンジョンなので少し不安にもなるが…

「あの黒歴史を覚えてる人はいますねー…今回はあんな醜態はお見せしませんよ!」


といいながら、年明けミノタを餅つきに見立てて、杵の変わりに拳を振り下ろし一撃で地に沈めた。


<うーん、今年初ミノタ…不憫>

<俺ついさっき彼女と苦戦しながらも必死の思いで倒したんだぜ…>

<二人で倒せるだけでも、十分すごいと思うぞ?>

<彼女とって…>

<【666円】「絶許」…絶許!絶許!>

<うぉー!絶許氏からエールを貰ったぜー!>

<やったじゃん!>

<うらやましい!>

……いや、えっ…あれエールなの?ただのひがみじゃないのか…?

…ん、さっき?


そう思いながらも、曲がり角で出会いがしらのアイス・ワームを短刀で一刀両断する。

<食われる前に斬る!>

<【500円】やられたらやり返す!倍返しだ!>

<昔のフロアボスは、今日の雑魚w>


そして…下層フロアボスがいるフロアに足を踏み入れた。

今までの氷山とは異なり、氷のフロアを囲うように水が張り巡らされている。


その中央にいるのは、つぶらな瞳でキュートに見えるモンスター海獣ウィンタートド――

見た目は可愛らしいが、肉食獣で硬い殻を持つダイヤモンドシェルを殻ごとかみ砕く狂暴な牙を持つと言われている。


もっとも、一番の脅威は群れで行動する習性があるので、1匹いたら付近に10匹はいるという質量攻めだ。

モンスターに優遇された地形だなと思いつつも、引くという選択肢はないのでボスフロアに足を踏み入れた。

フロア中央にいるウィンタートドがニヤリといやらしい笑みを浮かべる。


っと…ドンッっと水中から発射音が響き渡った。

大砲のように周りの水中からウィンタートドがこちら何匹もこちら目掛けて飛んできた。


それをなんなくかわしつつ、すれ違いざまに氣を纏わせた短刀で横薙ぎ一閃を放つ。

<下層のフロアボスは相手にすらならねー!>

<モブを瞬殺!>

<短刀でできる芸当じゃないってww>


部下トドを瞬殺したことで、目を見開くボスっぽいトド。

上下の牙をぶつけ威嚇音を響かせながらも、数百キロはありそうな巨体を氷上で滑らせ距離を一気に詰めてくる。


似たような攻撃パターンだなーっと思いつつ、短刀を振り下ろす。

勢いあまり氷が真っ二つに割れ、水柱が立った。


<…知ってたけど…ボスが真っ二つ…>

<下層配信…他を圧倒するレベルで安心して見れるけど…モンスターが気の毒すぎへんか?>

<【1,000円】下層に敵なし!>

<下層まで10層ぐらいあったから…深層もかなり深いんじゃ…>

<未踏破ダンジョンだからなー…ワクワクしてきた!>

「さて…食材も手に入ったのでこれからお昼にしていきましょうか!」


<トド肉ってうまいのか?>

<缶詰で売ってたの食べたけど…味はお察しだったぞ?>

<モンスターだから味はちょっと違うんかな?>

<うーん…謎だ>


―――――――――――


「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!


確定申告一通り終わりました

エンジェル投資やると確定申告の手続きがとてもメンドクサイですね…

別途書類を郵送しないといけないのが辛い


次回は料理回、どう料理してやろう

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