第116話 vsシュワちゃん

『ヘロー皆さん!今日という日をどれだけ待ち望んだことでしょう!

アノトキノ・シュワットビネガーことシュワちゃんが来日した時の衝撃を私は忘れられません。


し・か・も…ですよ!

来訪目的が長老に次いで日本が生んだSSSランク探索者、かずやんを探索者世界ランキングの土俵に上げてひねりつぶすためときたもんだ!


さあ…ジャイアントキリングなるか?それとも…日本の探索者の実力はまだまだ先進国に劣ってしまうのか!


注目の一戦が…今!始まろうとしているー!

両者登場してもらいましょうー!』

実況の人がマイクを持って熱く叫ぶ。


用意されたリングに案内され、リングに上がるとそこにはシュワちゃんが立っていた。

タンクトップからはみ出る筋肉を見せつけるかのように力を込めて、観客席にポージングを何度も行っている。


俺の存在を忘れているのではないだろうか…と思ってしまうぐらい、一通り行った後に俺に握手を求めてくる。

拒む理由もないので、握手をすると肩に手を伸ばし背中をバシバシ叩いてくる。

そして…二つに割れた顎が特徴的な堀の深い顔が近づき―――。


「クッキングモンスター…すまないが君は私の引き立て役になってもらうよ(英語)」

耳元でそう言い残し離れていく。


英語がわからず何を言ったか理解できなかったが…そのときの顔は格下を見るような顔をしていたので何となく馬鹿にされたようには感じ取れた。

だがそれも一瞬のことで、顔が離れるときにはいつもの表情に戻っていた。


なんでこう腹黒いんですかねー…。


「日本のSSSランク探索者、クッキングモンスターの配信は見せてもらっているよ。彼はとても力がある。今日のランキング戦は苦戦が強いられそうだ(英語)」

深刻そうな表情をしながら、溜めをつくる。

「…だがしかし、ダンジョン先進国の探索者の一人として、この戦い全力を尽くしたいと思う。よろしく頼むよ(英語)」


レフェリーが英語を翻訳してくれるので、少しラグはあるが内容が理解できた。

「あー…あー…マイクテスト。聞こえてますか?SSSランクになったばかりのかずやんです。日本の代表として恥じない戦いをしたいところではあるんですが…、先進国と後進国とで実力差ってのは簡単には埋められないと思うので、今回は胸を借りたいと思います」

「ハハハ。こちらのパンチでワンパンダウンしてしまっては観客も辛いだろうから、最初の一発は胸を貸してあげようじゃないか(英語)」

胸をドンッっと叩くシュワちゃん。

ジョーク…だよな?流石にイラっとする。


<かずやんwwwマイクテストするなww>

<さっきまでシュワちゃん使ってただろww>

<かずやん馬鹿にされてね?>

<大丈夫かよ?>

<んー…かずやんの額ピクピクしてね?>

<煽るだけ煽って…これ死亡フラグビンビンだろ…>

<んー…とはいえSSSランク同士の戦いだからなー…>

<かずやんから湯気出てね?>

<もしかして狂暴化バーサーク?>

<初手で終わるパターンwww>

<いやいや流石にそれはないだろwシュワちゃんのあの筋肉は打撃にはかなり強いって聞いたことあるぞ?>

<時速100kmのトラックにぶつかられても傷一つつかなかったとか>


『さあ…両者の意気込みを聞いたところで…試合を開始します…!!!



ーーーッファイッ!!』

レフェリーがリング外から開始を宣言する。

通常の格闘技はリングの中にいるのが普通だが、SSSランクの探索者の戦いをリング内で見守るのは自殺行為だ。

苦肉の策でリングから少し離れたところから試合の合図をすることとなっていた。



「さあクッキングモンスター、最初の一発は胸を貸してあげるからいつでも来なさい(英語)」

「では…若輩ものですが…胸を借りますね!狂暴化バーサークLv1!」

全身が熱くなり、こみ上げる氣を拳に集約していく。


<やっぱりLv1だよな?>

<そりゃLv2はヤバいだろ…死人が出るぞ?>

<でも相手もSSSランクだから…流石にダメージないでしょ?>


「普通の…パンチ!!」

ドゴンッっとリング上で音が爆ぜる。

遅れて暴風が発生し砂煙を上げた。


流石にこんなパンチ一発で終わることはないだろうし、胸を貸すといったのはこの一撃のみ。

この後、即反撃があってもおかしくないので、相手の気配を見逃さないように集中する。



砂煙が晴れる。

シュワちゃんは…リングの上に…立っていた。



やはり…一撃で終わるような人ではなかったか…。

自身の実力がある程度ついたと思ったが、まだまだだな…。

意識を切り替え、反撃に備える。




が…いくら待てど反撃はこなかった。



『あーっと…シュワちゃんが…動かないぞ!?

思った以上にダメージが入ったか!?


全く動かないシュワちゃんに、レフェリーが様子を見に行った!!』


レフェリーが手を何度かクロスする。


『おーっとこれは…まさかの…レフェリーストップだー!!!

胸を貸したシュワちゃん



…まさかの一撃ダウン!!



これは…マジかー!?


この試合結果を誰が想像できただろうか…


開始10秒かずやんの一撃で試合終了だー!!!』


マジかー…。

ブシューっと気が抜ける。


<えっ…>

<有言逆実行…>

<ワンパンでシュワちゃんがダウンwww>

<リアルワンパ〇マンじゃんww>

<Lv1でかー…>

<これはヤバいwww草生えるwww>

<胸貸すつもりが、貸すどころか座も明け渡したwww>

<かずやんが世界ランキング11位だー!!!>

<かずやん最強!かずやん最強!かずやん最強!>

<ダンジョン後進国なんて言われてたけど、これはもしかしたらもしかするかも?>

<かずやん最強!かずやん最強!かずやん最強!>

<かずやん最強!かずやん最強!かずやん最強!>

<かずやん最強!かずやん最強!かずやん最強!>



「えーっと、世界ランク11位になったかずやんです。

今回は胸を借りたらラッキーパンチが入っただけだと思うので…次回はきっとこうはいかないと思います。

それに他のランカーはきっとこうはいかないと思うので、気を引き締めて上位を目指したいと思います」



その後、荒れに荒れたシュワちゃん。

アメリカにトンボ返りするとギルドに呼び出され、こってり絞られたらしい。

実力はあるのでSSSランクは維持はされるようだが、探索者世界ランキングからは姿を消したのであった。


―――――――――――

「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!


かずやんが強いのか、シュワちゃんが弱いのか…

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