第107話 納会(2)

グラスの触れる音、一口飲むとシュワっとした飲み口と、爽やかな風味が鼻を抜ける。

取り皿にカルパッチョをとりわけて、全員に手渡したら…自分も食べる。

取り分けるのも最初だけ、後は自分の食べたいものをつまんでもらうスタイルだ。


煮魚とは違って、プリッとしたカンパチのような歯ごたえが特徴的だ、魚自体の味も濃くてこれは旨いな。

お次は魚とダンタマを一緒に…っとシャキッとした食感が合わさることで、さっぱり感が加わり次の料理を食べたくなった。


刺身もカルパッチョより身が厚く、食感と魚の味の濃さが強調されて美味しい。

藻塩にわさびで食べるとこれがまた魚の油を中和し、塩とわさびの甘さが際立ちこれまた旨い。

しっかり味わった後、日本酒をチビッと飲んだら…ほかの料理に取り掛かることにした。


流石に刺身と、カルパッチョだけだと足りないと思うので、事前に用意していたアラ大根と梅煮を温めて食べてもらえるようにしておいた。


「カルパッチョ…うまいっす!このダンタマと一緒に食べた時がまたいいっすねー」

シャンパンを片手にもぐもぐ食べるはじめ。

「お刺身もいいですね。油がしっかりノッてるのでわさび醤油がマッチします。あとこの日本酒もいいですねー!ぐいぐい飲めます。」

シャンパンを早々に飲み干し、日本酒をグラスに注いで飲む国立さん。

「梅煮というのも、さっぱり食べられていいものだな」

武蔵境さんもシャンパンを飲み終えて、おちょこに日本酒を注ぎ飲みながら魚をつついていた。


「俺は金色を飲ませてもらうな!ほかに欲しい人はいるか?」

「あー…自分もビール貰えますか?」

亮とパンプキンの浦和さんはビールにするようだ。

冷蔵庫に色々酒を詰め込んでいるから自由に飲んでもらうスタイルにしている。

飲みたいものを飲んで食べたいものを食べるのが、この飲み会のスタイルだ。


「さて…じゃあ料理していきますね!肉料理の煮込み料理も別動画で用意しているのでお楽しみに!

ミノタっぽいやつと魚は料理したから…グリフォンもどきを料理していきますね!

下準備としては…えのき、椎茸、焼き豆腐、しらたき、長ネギと玉ねぎ、あとは春菊、そしてグリフォンもどきの身体の部位は薄くスライスしておきます。

鍋にグリフォンもどきの脂身を溶かして、スライスした長ネギと玉ねぎを入れて両面に焼き色を付けていきます。

焼き色が付いたら、醤油とみりん、水に砂糖を合わせて煮詰めておいた割り下を入れて、肉と春菊以外の食材を入れたら…ほぼほぼ完成です!」

<あー…この季節絶対旨いやつ>

<ちょっと鍋やってる牛丼屋行ってくる>

<俺は白菜入れる派、くったくたにして食べたいよね!>

<野菜たっぷりいれて残った出汁にうどんぶち込んで食べるのが最高の贅沢>

<名脇役は春菊や!>

<春菊は最近マジで高い…代替食材ないんかな?>

「流石にわかりやすかったですか…そうです。すき焼きを用意しました!今回は肉を楽しむために白菜を入れてませんが、白菜を入れるといい感じに割り下の味を吸ってあれだけで酒が飲めるんですよね…あれ?私だけですかね?」

<いやーわかる。ビールが溶ける>

<下戸だから酒は飲めないけど、肉以外の食材も米泥棒してくるんだよね>

<米バウンドさせて、甘辛いタレご飯が至高>

<ビールもいいけど、日本酒も合うよね!>


すき焼きのタレが織りなす、魅惑の香りにつられ近くにいた姫っちゃんがこちらに来ていた。

「し、師匠…これはなんですか…めちゃくちゃ食欲を刺激される匂いです…」

「丁度すき焼きができたところなんだけど食べるかい?」

「SUKIYAKI!」

目を輝かせる姫っちゃんは、菜箸で肉を掴んでしゃぶしゃぶのように肉を割り下にくぐらせる。

色が変わって食べ頃に仕上がったところで、ロック鳥の溶いた卵の器にダイブさせた。

あとは牛肉を卵にしっかりとからめて…パクリっと、そして味わうように咀嚼し、口の中でとろける旨みの洪水に頬を上気させて恍惚とした表情を浮かべた姫っちゃん。

「師匠…、このお肉口の中でとろけて旨みが押し寄せてきます…」

最後に口についた卵をペロリと舐めて、日本酒をクイッと飲んでほうっと一息ついた姫っちゃん。

<うわぁああああああーーーーー!!!>

<【6,666円】「絶許」z絶許!絶r許!絶許!絶許!絶許!>

<絶許氏が荒ぶっておられるぞ!?>

<ま、まかさ…コピペじゃなかったのか!?>

<姫っちゃん…めちゃくちゃヤバい>

<牛丼屋が長蛇の列になってる…だと…!?>

<くっそ…こんな顔、姫っちゃんのチャンネルでは見れないやつや…>

<【50,000円】神はここにいた>

<【5,000円】これが料理で見せる表情なのか…>

<どれだけ…うまいすき焼きなんだよ…気になるわ!>

<【10,000円】ありがとうございます!ありがとうございます!>

「ははは…滅茶苦茶美味しかったようだね。良かった…」

「和也さん…これ以上はいけない…」

三鷹さんが頭を押さえ、ため息をつく。

俺…なにかやっちゃいました?


「このすき焼きは絶品だな!」

「寒い日のすき焼きってなんでこんなに旨いんっすかねー、春菊の独特の苦みがまた酒泥棒っす」

「モンスターの肉を好んで食べたいという人がいるのもよくわかる美味しさだ」

「局長…わかっていると思いますが、このお肉は普通のモンスターとランクが違いますからね?」

「ああ、わかっている…つもりだ。普通の人がこれだけの食事会をしようものなら…円ぐらいは必要だろうな」

亮とはじめはビールを飲みながらすき焼きを堪能していて、四ツ谷さんは肉を食しながらも、金額のことが脳裏から離れないようだ。

前から参加している姫っちゃんや、はじめに国立さん、あと亮については気にせず食べてくれているが、周りからするとそういう面は気になるのだろう。

パンプキンの面々も初参加で恐縮してしまっているようだ。


「食材は自分で食べたい食材は食べようとするんですが…、一人だといつまでたっても食べきれないし、解体して食べ始めると売るに売れなくなっちゃうし…探索するたびマジックバックの中が増えて管理が大変なので…じゃんじゃん食べてください!みてくださいよこのロック鳥の卵…まじで消費しきれないんですよ…。ほらほらパンプキンの皆さんも食べてくださいね」

溶き卵を入れた器を強引に渡して、出汁にくぐらせた肉を次々器によそっていく。


そうしつつも、自分自身も菜箸で肉をしゃぶしゃぶして肉の下準備をしたら、長ネギを肉で巻いてロック鳥の卵にくぐらせて食べた。

「くぅー…うまい!長ネギが肉の旨味を吸ってくたっとした部分とシャキッとした部分の食感のコントラストがいい塩梅、肉は口の中でとろけて…マジで旨いですねー!」

金色のやつをプシュっと開けて一気に飲み干す。

口の中が肉の旨味で一杯になったところを、金色のやつが洗い流してくれた。

肉、酒、肉、酒と肉も酒も進むなーっと思いつつも繰り返し、仕上がった出汁に追い麩して肉の旨味を吸わせたのを食す。

肉の旨味をたらふく吸った麩の旨さは別格よ。

ビールのお次は日本酒をおちょこに注ぎクイッと飲む。


「…」

「…」

「…」

誰も何も発さず、目配せしたパンプキンの面々は、肉を鍋に入れて食べ始める。

野菜が足りなくなれば、野菜を足して、あえてカットしてないしらたき麺をすするように食している。


甘辛い割り下で泳いだしらたきを、さらに溶き卵の海で泳がせるだけで酒の消える一品が出来上がる。

しかも肉をしゃぶしゃぶした旨みがしらたきにまとわりつくので、それはもう言葉にできない旨さだろう。


ガツガツ食べて、ビールを飲む手が止まらないのを微笑ましく見届けたので、次の一品を作っていこうと思う。


<いやいや…このすき焼きどんなけ旨いんだよ…>

<【5,000円】この出汁だけ売ってください…>

<確かに肉の旨味が溶けだした出汁だけで米食えそう>

<麩は反則w>

<しらたきはマジで神>

<こんにゃくとは違った旨さがあるよね>

<あえて切らないところはこだわりなんだろうか?>

<だが…それがいい>

<牛肉は高いから…牛脂と割り下に野菜としらたき、あと豆腐でなんちゃってすき焼き食べる俺>

<涙吹けよ…って言いたいが…普通に旨そうやな>

<酒飲みは肉やなくて酒に合う肴を求めとるんや。牛脂にしらたき、あと豆腐だけあれば肉がなくても案外満足するんやで?>

<そうは言うが…鳥のもも肉使ったすき焼きも、まじでうまいんだぞ?>


鳥のすき焼きもいいなー…地鶏を使えば、牛とは違った歯ごたえが合って美味しいんだよね。

コメントを見つつも、さて…お次の食材はどうしようかな?


―――――――――――

「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!


昨日書いていた分に色々追加してたら止まらなくなりました。

気付けば3,600文字…後悔はしてない(キリッ


いつものごとく6時投稿でもいいんですが…

あえてこの時間(22時半)に投稿します。


すき焼きって美味しいよね!

数日前にすき焼き作って、翌日はうどん入れて卵とじにして食べました。

1回で2度おいしい。

まだまだ寒いので、この冬は鍋料理を色々作りたい所存です笑

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る