第103話 冬のボーナス

探索を終えた俺はその足でギルドに向かい、素材や、食べきれない食材を売却した。

そして…目ん玉が飛び出るぐらいの金額が振り込まれる運びとなった。


深層の素材はかなり貴重とのことで、食材に関しては大富豪に需要があるそうだ。

あとは光る食材…これに関してはギルドが買い取り、一部のSSランク探索者にごく少量を摂取してもらい経過をみているらしい。


ある一定の効果はあったようで…MUKAKIN、パネェ社長、ブルッターズなどの配信者は下層を踏破するだけではなく、深層の探索をはじめたとのことだ。


さて…それはそれこれはこれ季節はそろそろ年末だ。

一般企業はボーナスの時期ということもあって、年俸制以外の人は、その額に一喜一憂する。


一般とは程遠い不安定な仕事を支えてくれる従業員には…しっかり還元したいと思う。

とはいえ、会社運営をしていく上である程度財務は気にしておかないといけないので…こういうことは亮に聞くことにした。


「かくかくしかじかで…どうすればいい?」

「ボーナスは経費に計上されるから会社としては節税になるが…今の状況だと従業員が目ん玉引ん剝くレベルの金額を振り込むことになるが…それでいいのか?」

「まあ…不安定な仕事だしな。払えるときは払っておきたいだろう」

「いや…ボーナス比率高いと従業員の厚生年金保険料が高くなるぞ?」

「うーん…とはいえ今年はどうしようもないから、来年ベースアップしてもいいし、うまくいくように調整してもらえるか?」

「なかなか無理難題を吹っかけてくるな…来年は今年以上の売上の見込みがないと成り立たないぞ?」

「そこはうまくやるよ。俺が探索するだけでカバーできるならどうにでもなるだろうし…」

「それを軽々と言ってのける探索者は和也ぐらいだろうな。まあいいだろう。調整はしてやる…っと言いたいところなんだが…」

「ん?どうかしたのか?」

歯切れの悪い亮…これはまた珍しいな。


「いやな。今いる会社を今月末で辞めて独立しようと思ってるんだ。だから俺が受け持ってる仕事は別の人に受け継ぐ必要があるわけで…」

「は…?いやいや困るぞ?ここまで気軽に相談できる奴なんて亮以外いないぞ?」

「だよなー…」

寝耳に水だ。それは…非常に困る。


「俺の会社の関連会社でも子会社としてでもどっちでもいい、都合のいいように利用してもらって構わないから、それで独立ってのはどうなんだ?今の契約もあるから調整は色々する必要はあるが、うちとしては今後も亮に任せたい、いや亮以外に任せる気はないんだ」

「おいおい…初めから後ろ盾があるのは助かるが…いきなりリスクを抱え込みすぎじゃないか?」

「正直うちで働いてくれるなら、歓迎するんが…亮のことだ。専属というより、やりたいことがあるんだろ?俺としては…リスクなんてどうとでもなるが…こうやり取りできる相談役に変わりはいないからな」

「ガハハ…なんというか…ぶっ飛んでるな。まあこっちとしてはありがたい話ではあるし、乗れる船なら乗らせてもらいたいところだ」

「じゃあ…一先ずはOKってことでいいか?」

「ああ…よろしく頼む。とりあえず収支と従業員のボーナス額については…とりあえず明日までにまとめておく。それでいいか?」

「それで頼む」

その後も少しやり取りをしたのち電話を切った。


電話一本で関連会社ができてしまった。

まあ…仕事に対して誠実な奴だし、正直俺としてはありがたい限りだ。

とはいえだ…飛ぶ鳥後を濁さず、亮の元々の雇先に連絡して、遺恨を残さないように調整するのであった。



色々あった翌々日、亮からOKの連絡が来たので、はじめと国立さんにボーナスの明細を準備して会社に向かった。

「おはよう!さて…今日は初めてのボーナスの明細を準備してきたから、手渡しさせてもらうよ!」

それぞれにボーナス額が書かれた明細を手渡しする。

いやー…こういう経験は初めてなのでドキドキするな。

「「!!!?」」

明細を確認した二人の息を飲む感じが伝わってきた。

「えーっと…働きに対して少ないとかだったら言って…ね?検討はするからさ」

前の会社はボーナスなんてなかったので基準がわからないが、一般企業の平均という記事に書いている金額よりは十倍ほど多いので…少ないということはないと思うんだが…。


「パイセン…」

頭を抱えるはじめ。

「ん?どうした…はじめ?」

「いや…この金額はやりすぎっすよ…くにやんを見てみるっす。白目向いて固まってるっすよ…」

はじめに言われるままに国立さんを見ると棒立ちして魂が抜けている…――


「って国立さん大丈夫!?」

「はっ…!?一瞬〇の数がおかしい明細を見ました」

改めて明細をみる国立さんは…数秒後に目が点になって固まっていた。


「正直、ここまで探索に取り組めたのは、はじめや国立さんが業務調整をしてくれたからだと思っている。本当はもっと支払いたいところではあるんだけど。会社としてもある程度は余力を残しておく必要があって…予想より少ないことに対して不満を持ってしまったら申し訳ない。来年はもう少し深層配信を増やして稼げるようにしたいとは思っているよ」

「えっ?不満?この金額で?逆に多すぎて戸惑ってますよ!?むしろ高円寺さんのボーナスはこれ以上ちゃんと払われてますよね!?従業員を優先しすぎて、全くもらってないは駄目ですよ!?」

「ははは…ボーナス額に関しては亮にも指摘されて申し訳ないけど、はじめや国立さんよりは多く貰っているよ」

「であれば…まだいいっすけど…それでもこれはやりすぎっすよ…不安定な仕事なんだから従業員の給金はある程度抑えるべきっすよ?」

「それは逆だぞはじめ、不安定だからこそ、渡せるときには渡すんだ。だから申し訳ないんだけど業績が悪いとボーナスが全くでない可能性もあるから、今回は良かったほうだと思ってほしい」

「これで普通だって言われたら…心臓飛び出るっす…ただここまでボーナス比率が高いと…年末の所得税追加徴収されるっすね…」

「むしろマイナスになるんじゃ…」

「そこは…すまん。今回のボーナスを使いすぎないようにしてくれ。あと…給料のベースアップはまた別途実施するし、来月から亮が色々見てくれることになってるから、来年からは大丈夫なはずだ…多分。あと考えているのは企業型確定拠出年金とかも導入を予定しているから…制度が整ったらまた連絡するよ」

「うーん…ホワイト通り越して恐怖を感じるっすね」

「ははは…私の年収一体どうなるんでしょう…」


「さて、ボーナスの話はこれぐらいにして、今日は昼ぐらいから料理配信に付き合ってくれないか?前の深層配信の時に手に入った食材が色々あるからサブチャンネルの配信をしたいなーっと思っているんだ」

「んー…いいっすよ!」

「はい、年末で仕事も落ち着いてるので大丈夫です!」


年末の案件は基本受けない方向で調整してもらっている。

炎上続きで職場で年越しがデフォだった苦い過去もあるんで、リスクはできるだけ取らずに落ち着いて年越ししたいからね!


とりあえず、知り合いに声を掛けて料理配信の準備をするのであった。


―――――――――――

「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!


もう年末ですねー

冬のボーナスは投資に全ツッパ予定です(新NISA始まるしね!)

一度は多すぎる!って感じるぐらいのボーナスが欲しいです(願望)


さて…今回の話は願望を3000文字も詰め込んでしまったので…

次回は食欲を詰め込みたいと思います!(※現在執筆準備中)

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