第100話 深層のフロアボス(1)

そのフロアは今までのフロアと少し違っていた。

ダンジョンなのに空気が澄んでいる。そして壁には青白く光るクリスタルのようなものが散らばっており神秘的な空間だった。


その中心に横たわるように座るそれは…

<竜キタ――(゚∀゚)――!!>

<あれって…ティアマトやん>

<いやいや…まじかよ…>

<機械ばっかりだったからフロアボスも機械のモンスター化と思った>

<いやでもなんかおかしくね?>

確かに竜のように見えるが、なんというか…


ティアマトとはゆったり頭を上げる。


蛇のように長いこともあって、俺の数十倍ものサイズがあって、ダンジョンの中で退化したのか翼はない。

その代わり非常に発達した腕に大きく鋭利な爪、あれに掴まれたらひとたまりもないだろう。

顔から覗かせる牙に蛇のように長い身体、俺よりも何倍も大きい存在が放つ威圧感が肌を刺す。

ただ…その空気をぶち壊すかのように顔の半分が機械になっていて異様さを醸し出していた。

機械化された顔の中にある目がグルんグルんと動き回り、そしてピタリとこちらを捉え止まる。


「なんというか…気味が…わるいですね」

<いやいや…竜の顔の半分機械化してるやん…>

<目がマジで気持ち悪い…>

<なんだよ…こんなの…人為的になにかあったようにしか見えないんだが…>


そうつぶやいていたが、テリトリーに足を踏み入れたからかお構いなしにティアマトが腕を振るってきた。

回避が間に合わず、とっさに出した刃と爪が衝突し、衝撃波が吹き荒れる。

対格差もあり地面に踏ん張って耐えることはできずに弾き飛ばされた。


「今は余計な事を考えていられなさそうです!」

吹き飛ばされた先にあった壁に氣をぶつけ勢いを殺しつつも垂直に壁に着地し、ドンッっと壁を蹴る。

ティアマトと離れたところに無傷で着地すると短剣に氣を纏わせて一気に放つ、機械蜘蛛を切り裂いたそれは、ティアマトの腹部を捉えた。


…が、身に纏った鱗数枚がはじけ飛んだだけで、ダメージが中まで通っているようには見えなかった。


「うーん、もう少し色々試したいところなんですが…あまり時間を掛けても相手の防御力が高すぎて、取れ高につながりそうにないので…ちょっと巻きで進めますね!狂暴化バーサークLv1!」

ドクンッと鼓動が強く感じ、全身が燃えるように熱くなる。

手に持っていた短刀を纏っていた氣が溢れだし、大太刀の形を形成する。

<ビー〇サーベルやん!?>

<むしろこれライ〇セーバーだろ>

<どっちもどっちやろ…ただ胸熱やな!>

<あえて言おう…緊張感w>

<巻きってw相手は深層のフロアボスだぞw>

<フェンリルの時…めっちゃヤバかったのにこの差はなんだよ!>

<なんかしらんが安定感…というか安心感ありすぎw>



「おぉ…まさか大太刀になるとは…的も大きいので試し切りには丁度いいですね!」

<フロアボス相手に試し切りって…>

<ちょっとかずやん調子に乗りすぎだよ!>

<相手はあんなでも一応竜だぞ…もうちょっと緊張感仕事しろよ!>


今までは相手に攻撃を許していたが…こちらからも攻めるとしようか!

地面を蹴り、一気に距離を詰める。

振りかざされたティアマトの腕を身体を捻り避けつつも、捻った身体を戻すときの回転運動で得たエネルギーを刀に込めて振り上げた。


ティアマトの太い腕に刀が振れる――

確かな手ごたえを感じつつも勢いを緩めず振り抜くと、ズパンッっとティアマトの腕がはじけ飛んだ。


<まじかよ…>

<氣の刃も通さなかった鱗をもろともせずに一撃で断ち切ったぞ…>

<どんなけー!?>

<バーサーク…しかもLv1でこれか…>

<これ…フロアボスだよね?>

「ギャアアアアアアアーーーー!!!」

ティアマトの悲鳴がダンジョン内に響き渡る。

腕を切断され痛みで苦痛にゆがむ顔、目は充血し血走っている。

距離を詰めさせないように尻尾が振りかざされ、鞭のようにしなったそれがこちらに目掛けて飛んでくる。


「この尻尾…邪魔ですね…ふんっ!」

目の前に迫るしっぽを冷静に見極め回避しつつ、大太刀を力任せに振りかぶる。

尻尾に振れた大太刀の感覚に焦りを感じたのか、ティアマトが必死に抜け出そうと回避行動を取ろうとするが…

それを許すことなく尻尾を巻き込んだまま問答無用で地面に叩きつけた。


ドゴンッ!!


轟音と共に、地面が激しくエグレてクレーターが出来上がり、ティアマトの尻尾が宙を舞う。

<いやいや…これは切る動作じゃない…>

<力任せに叩きつけた一撃で、尻尾がブチ切れるんか…>

<かずやん…前から人外って言ってたけど…比較にならんぐらいマジでぶっ飛んでるな>

<どうやったらこんな一撃放てるようになるんだ…>

<SSランクとSSSランクの差に…まじで驚愕だわ…>


「ここまで来たら、あと少しで倒せそうですね!」

尻尾と片腕を失ったティアマトの顔に絶望の色が浮かんでおり、先ほどまでこちらを捉えていた機械化された中にある目玉は血走りながら挙動不審にぎょろぎょろと動いていた。

<【666円】「絶許」絶許!絶許!>

<これなんてフラグ?>

<ティアマトー!がんばって!最後にかずやんに一泡吹かせようぜ!>

<お前ならできる!>

なんでだよ!


「みなさーん!食材を応援しちゃダメですよ!竜ってどんな味するんですかね?」

竜にも色々な種類がいるから竜によって味が違うのかな?

あとは竜とドラゴンってそもそも違いがあるのか…未知数だ。

若干機械化してるから、食べられるか不安にはなるが…腕も尻尾も機械化してなかったので多分…大丈夫でしょう!


「ウォーーーーーー!!!」

尻尾と片腕を失ったティアマトが吠える。


ティアマトの周辺に召喚陣が複数浮かび上がり…そこから11の食…いやモンスターが出現した。


―――――――――――

「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!


100話ですね!いやーここまで続くとは…

現在ノンストック状態なので…また再び執筆の沼に浸ってきます!


次回は深層フロアボス決着と料理回にしたいなー(願望)

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