第99話 食材はいずこに

「さて…昼ごはんも食べたので…このまま深層に向かいますよ!」

<まじか…前回よりめちゃくちゃハイペースじゃん>

<かずやん…無理してない?大丈夫?>

<【10,000円】深層の情報料!>

<マジパネェなー…>

<急に強くなりすぎじゃないですかね…>

<これが長老効果なのか…>

「ははは…確かに長老の元での経験は…死ぬかと思いましたが効果は絶大かもですね」

酒飲んでつまみを食べただけとは言えないが、嘘は言ってない。

<どんな修行をしたんだよ…>

<マジでそれw>

<某有名漫画より短期間成長しすぎだよwそれだけ濃密だったんだろうな>

<かずやん×長老>

<長老×かずやんじゃね?>

「よし、それ以上はやめよう。ほら深層のモンスターもお出迎えです…っよ!」


糸が飛んでくる。

またか…と落胆しながら短刀に氣を纏わせ切り落とそうとするが、先ほどとは異なり糸はパキンッと弾けた。


「ん?なにやら…今までとは異なる手応えを感じます…」

まるで金属を切ったような感覚が手に残る。

そしてダンジョン内に響き渡るのは、ダンジョンには似つかわしい機械音…。

姿を現したのは蜘蛛っぽい形をした…機械だった。

<えっ?>

<機械?>

<ここダンジョンだよね?>

<どういうこと?>

視聴者も驚くモンスター…機械蜘蛛――

もちろん俺も理解が追いついていない。


そんな中、機械の蜘蛛が先に動く。

駆動音を響かせたかと思うと瞬時に距離を詰め、内側が刃になった2本の前足(?)を振りかざしてくる。


「蜘蛛なのか…カマキリなのか…どっちなんだよ!」

短刀を素早く振るい蜘蛛の前足を弾きつつ、開いた懐に拳を叩き込もうとするが、それを拒むようにケツから金属の糸が発射された。

「やりにくいですねー…」

飛んでくる糸を短剣で叩き落としつつも、バックステップで一旦距離を取る。

生き物特有の気配がないので動きが予測しにくいが…動きは速いだけで単調なんだよなー。


こういう時は…短刀に気を纏わせて一気に解き放つ。

蜘蛛からすれば機械的に糸を放ち氣の刃を防ごうとするが、糸ごときで刃の勢いを殺しきることはできず、そのまま蜘蛛の腹を切り裂いた。


「うーん…腹を切り裂いても動くのは機械ならではですね…」

腹を失ってもまだ動く蜘蛛、はらわたのように切れた部分から機械の部品を垂れ流しつつ、こちらに赤く光る眼をこちらに向けて迫ってくる。

「ただ…もうスピードもでないようなので一撃で終わらせたいとおもいます!」

迎え撃つように短刀を一刀し、蜘蛛に避ける暇を与えず半分に両断した。

<うーん…この蜘蛛強いのか弱いのか…わからない>

<たぶんだけど…普通の探索者は、あの糸切れないんじゃないかな?>

<モンWikiだと遠距離は鋼鉄並みの強度を誇る糸を無尽蔵に吐き出して、近付けば全8本の腕に付いている刃で何でも切り裂くらしい>

<鋼鉄か…実力者であれば切れないわけではないんだろうけど、あんな速度で飛び出た糸をスパッとは切るのは無理だろうな>

「うーん…とりあえず、食べられないけど素材にはなりそうですね」

金属片になった蜘蛛の腕をつかみ刃を見てみると、刃は鈍く光りつつそこそこ切れそうだった。

まあ品質面はなんとも言えないのでそのまま刃としてつかうというよりは、溶かして別のものを作ったほうがいいかもしれない…。

糸を無尽蔵に吐き出せるという仕組みは切れた腹の中を見てみたが特にそれっぽい仕組みはなさそうなので、全く理解できなかった。

まあこんなんでもモンスターですし、ダンジョンからなにかしら鉄分を摂取しているのかもしれない。


「さて…素材回収も済んだので、深層も油断せずに進んでいきますよ!下層は虫だらけだし、深層の早々は機械だし…変なダンジョンですね。せめてフロアボスぐらいは食材であって欲しいです」

<うーん…普通は食材探しは二の次で、化け物を相手するのが先行するはずなんだよね…>

<まあ…かずやんですし…>

<ここって間違ってなければ深層なんですよね…うーん…緊張感…>

<まあ…それもかずやんですし…>

<でも、ダンジョンって機械系のモンスターまで出てくるの?…ダンジョンってマジで謎だな…>


「うーん、謎ですよね…。とはいえ立ち止まっていても仕方がないし…機械蜘蛛も撃破したので次に行きましょうか!」

とりあえず深層の階をすすめることにした。


この後も深層の探索を進めていくが、電撃を放つ機械蜘蛛の亜種…ショックアーマードスパイダーや、ギアと歯車が組み合わさってできた巨大なギアガーディアンなど機械系のモンスターしか出てこない…。

普通のモンスターより素早かったり、攻撃力が高そうと感じる部分はあったが、いかんせん思考が単純ということもあって、苦戦することなくサクサクと探索を進めていった。


「うーん…機械系のモンスターを相手にしたこともあって、素材は色々手に入ったんですが食材が全く手に入らずですね…このままフロアボスも機械系とかだと…最後は雷鳥料理だけだと撮れ高が…」

<いやいや、撮れ高気にしてる場合かよ!>

<【30,000円】深層攻略だけでも、本来は十分撮れ高あるからね?>

<機械系って攻撃力とか強そうに見えるけど…なんかこう動きは単純だよね>

<単純のようにみえるかもだけど、攻撃を避けつつ破壊できるのはかずやんぐらいだろ…>

<もう深層も5階層まで来てるし、そろそろフロアボスの階層だったりするのかな?>

<かずやんみてると俺も実は下層ぐらいだったら行けそうに感じてしまうんだよな…>

<無能力ならやめとけ、ミノタウロスの顔を拝む前にお陀仏だぞ>

<ミノタww>

<今更だけど中層のフロアボスって探索者にとっては鬼門だからね?>

<前の配信と違って安心感ありすぎ…まじでどういう修行してきたんだ…>

<【10,000円】「姫っちゃん」師匠がまた遠い存在に…>

<姫降臨!>

<姫っちゃんキタ――(゚∀゚)――!!>

<姫っちゃんキタ――(゚∀゚)――!!>

<姫っちゃんキタ――(゚∀゚)――!!>

<姫っちゃん配信おつかれー!>

<Aランク昇格おめでとー!>

<遠いって…かずやんと比較したら駄目だよw>

<姫っちゃんもかずやんに出会ってから目覚ましい速度で実力ついてるからね!?>

<「姫っちゃん」ありがとうございます!でも次こそはグリフォンをソロで倒せるように頑張ります!>

<グリフォンをソロで倒したら…姫っちゃんも脳筋民族になっちゃうよ…>

<いやいや火炎のスキルを駆使して戦う立ち回りだから…脳筋のかずやんとは流石に比較できないでしょ…>

<そりゃそうだ>


「姫っちゃん配信してたんですねお疲れ様ー!あとスパチャもありがとう。遠い存在って…そんなに変わってないよ?変わってないですよね?ただ視聴者さん…脳筋ってひどい言いようですね!もう…怒りますよ?」

<【666円】「絶許」絶許!>

なんでだよ!

<絶許氏キタ――(゚∀゚)――!!>

<姫っちゃんの配信でもキレッキレでしたね!>

<切り抜きのツッコミポイントがまた痺れましたよ>

<かずやんは…今のままでいいんだよ(ニッコリ>

絶許氏っぽいアカウントから切り抜き依頼がきてたってはじめから連絡を受けたときはビックリした。

そして気付けば、絶許の姫っちゃん&かずやん公式切り抜きチャンネルなんてものが登場してオッたまげた。

内容については…今回は触れないが、切り抜き方が独特で一部の視聴者にはウケているらしく視聴者数は地道に増えているらしい。


「うーん、ツッコミどころが満載すぎる!!けど今はツッコんでばかりもいられないのでこのまま行きます!」

深層の階層を降りる。もうそろそろフロアボスまで来ていてもおかしくないんだけど…

「…このダンジョンどれだけ下に続いているんですかね?」

目の前に現れた複数の機械蜘蛛をサクッと処理し、深層のその先へと歩みを進むことにした。


―――――――――――

「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!


深層のフロアボスは食材なのか!?

それとも…機械になってしまうのか…

食材だらけのダンジョンで食い倒れ配信とかしてみたいなー…

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