第93話 はじめの実家訪問(10)

戻ってきた剛三郎さんの手には短刀が握られていた。

「高円寺くん、これから氣の練度を高めるためにも武器を使いなさい。

今の君が使う氣の刃は、刃というよりただ力任せに引き裂いているだけで切れてはおらん。

武器に氣を纏わせることで、その武器がなくても刀をイメージできるようになったとき、きっと氣の練度が今とは比較にならないぐらい高まっていることだろう。

そして手合わせしたところ、戦闘スタイル的には刀よりも脇差より小さい短刀ぐらいの長さが丁度いいと思うんじゃ」


そしてその短刀を俺に手渡すと、抜いてみろと言ってくる。

短刀を抜くと、紫色を帯びた濃い青の刃が見えた。

「その短刀の名は瑠璃刀るりとう、見た目通り刃の色が瑠璃色だからそういう名が付いたようじゃ。切れ味は凡刀とさほど変わらんが、氣を流すことで真価を発揮する。…試しに氣を流してみぃ」


言われるままに、氣を流すと刀身が震えているような奇妙な感覚がする。

「ほれこの丸太を切ってみろ」

ポイっと人よりデカい丸太を軽々と投げてくる剛三郎さん…


って…

「いきなりすぎますよ!」

振り抜いた短刀が丸太に振れる。

普通だと重さに負けて弾かれるようにも思うが…木を切る表現としては異常だが…刃が振れたところからサクッと切れてしまった。

「はっはっは、良い感じに氣を乗せているようじゃな。あとはダンジョンで手になじむまで振るってみるとよい。

あとは…そうじゃな。あくまでその短刀は高円寺くんの氣をコントロールする手段の一つにすぎん。

武器に飲まれる出ないぞ?」


「…はい!あの…何から何まで、ありがとうございます!」

「ふむ…まあ…いいんじゃ。わしができるのはこれぐらいだしのー。まあまた…気が向いたら顔を出しなさい」

「わかりました。またお伺いします」


こうしてはじめの実家を後にした。



帰宅途中、電車に乗る前にスマホに通知があった。

「はい」

「和也様、あなたの専属サポーター奏です」

「……」

「こういうのも良いかと思いましたが…ウケませんでしたね。すみません。神田です。ただいまお時間よろしいでしょうか?」

うん、いきなりのキャラ崩壊に空気が固まったよ。

「ああ、大丈夫です。何かありましたか?」

「電話ではお伝えしにくい内容なので、ギルドに来ていただきたいのですが…お時間よろしいでしょうか?

強制ミッションではないので、日を改めることも可能ではありますが、できれば来ていただけると幸いです」

今日はオフなので、この後も特に予定はない。

「大丈夫ですよ。これからギルドに伺いますね」

「ありがとうございます!ではよろしくお願いいたします」

「はい、では失礼します」


電話を切る。

ギルドからの呼び出し…一体何かあったのだろうか?


―――――――――――

さて…次回はギルド編

そして…ダンジョンに行きますよ!


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