第92話 はじめの実家訪問(9)
道着に着替えた俺は、剛三郎さんと相対する。
「さて…昨日の今日でどれぐらい変化があったか見せてもらおうかの?」
手をクイクイっとかかってこいとする剛三郎さん。
地面を蹴って距離を詰めようとして…つんのめる。
「!??」
いやいや…一体何が起きたというんだ?
「はっはっは、想定よりも身体が前に進んだことで、意識が追いつかず無意識の内にブレーキをかけようとしたようじゃな。結果論じゃが、身体と意識がチグハグになってこけたようじゃな。まあ身体はいい塩梅で成長しとるようじゃし…さあ胸を貸すから色々試してみなさい」
な、なるほど…急成長に心が追いついていないのか…。
初っ端からダンジョンに行かなくてよかった。
ヘタすると中層辺りで詰んでいたかもしれない。
「お言葉に甘えて、色々試させていただきます!」
何度か拳を放つが、まだまだ身体と意識がズレているのかまともな一撃を放つことができずに10分以上経過していた。
10分も経過する頃には、じゃじゃ馬だった身体の動きに精神も追いついてきていた。
改めて地面を蹴る。
これが自分の身体か?と思うぐらいに動く。
一歩動くつもりが三歩動いている感じ?何を言ってるのかよくわからないが、自分でも表現しきれない変化だ。
距離を詰めて、拳を振りかぶる。
「ふむ…距離の詰めと拳がスムーズに流れとるな。あともうちょいか?」
拳受け流され、その流れでバッと腕が払われる。
腕が跳ね上がってがら空きになったボディーに向かって、トンッと掌底が当たったと感じた時には、ブワッと風が発生し吹き飛ばされた。
「氣を飛ばしたりしても大丈夫ですか?」
「うん?別にいいぞ?」
了承を得たので、両腕に氣を纏わせ刃を作る…。
「…んな!?」
氣の総量が莫大に増えたのか、自分が想像している以上の大きさの刃が出来上がり変な声が出た。
その刃を剛三郎さん目掛けてぶん投げつつ、弾かれる想定で距離を詰める。
「ふむ…ただ氣を固めただけで刃というには練度が足りんような…?」
剛三郎さんは刃を避けるでもなく、そのまま掴むとそのまま握り潰した。
「いやいや…ほんとなんでもありですね!!」
避けたり、弾かれる前提だったが…これは一応許容範囲内だ。
この刃はブラフ、距離を詰めて両手に纏った氣の拳を放った。
「刃はブラフで、拳が本命。頭の薄っぺらいモンスター相手には十分かもしれんが…対人向けだと…ありきたりじゃな」
放った拳を軽く受け流されつつ、その拳の勢いのまま…なぜか俺は宙を舞っていた。
背中から地面に叩きつけられる。
追い打ちの攻撃がなかったのでダメージはほぼないが、勢いを乗せて地面に叩きつけられたので肺から空気が抜け一瞬息が詰まる。
これが戦闘だったら命を落としていたことだろう、軽々と回避どころか反撃までされるとちょっと凹むな…。
なぜ宙を舞ったのか…。
これは地面に叩きつけられてから理解したが、俺が拳を放った動きを読み切られ、受け流しつつも体制を崩され…崩れつつ拳の勢いを利用して背負い投げされた。
対人戦の攻撃っぽいようにも思うが、一連の流れがスムーズすぎる…。
「ふむ…だいぶ身体と精神の差異がなくなってきたようだな。あまり対人戦をしすぎてもクセがついてしまうから、これぐらいにしておこうか」
崩れた道着を整え、剛三郎さんはふぅ…っと息を吐いた。
「ありがとうございます!何となく身体の動きがイメージできるようになりました」
「ああ…そうじゃな…ちょっと待っとれ」
そういうと剛三郎さんは少し席を外した。
―――――――――――
次で実家訪問編は終了です。
飯が…飯成分が足りない…
40万pv達成しました!皆さんありがとうございます
「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます