第89話 はじめの実家訪問(6)
「はい!今よりも実力をつけて、娘さんを悲しませないようにします!」
「うん、頼んだよ。君になら…娘を任せられるかもしれないな」
ふぅ…と息を吐きだし、剛三郎さんは落ち着いた笑みを浮かべた。
さぁ話は終わりだ。
実力も見せてもらったし服を着替えようかという剛三郎さん。
「あ…あの?気のせいかもしれませんが、語尾のじゃっていうのは意識して言ってたりするんですか?」
そう、シリアスっぽい話もあって非常に言いにくいんだが…語尾にじゃが付いたり、付いてなかったりと気になって仕方がなかったのだ。
「ふむ…そうじゃな…長老なんて呼ばれとるようになっただろ?なんかそれっぽくせんとなんか締まらないと思ってな…。せめて語尾ぐらい長老っぽくじゃをつけようと思ってはいるんだが…つい忘れてしまうんじゃ」
まさかの自分でキャラ付けしてたのか…。
「しかし…15年前に勢い余って深淵層を踏破したんじゃが…。当時、ピチピチの60歳だぞ?…それなのに長老ってひどいと思わんか?」
60歳はピチピチではないかなー…っというか…。
「深淵層?…ってなんですか?」
あっしまった!って顔をする剛三郎さん。
「あー…気にするな。深層と言い間違えただけだ。」
60歳で深層踏破?この実力で?
…それは流石にないだろう。
そもそも20年前に新宿ダンジョンのダンジョンブレイクを止めたパーティーのリーダーだったと聞くし、深層はもっと前に踏破していてもおかしくない。
ということは…一般的に知られていない階層が存在するっていうことか…。
だが…正直この実力差、今の俺にはどうあがいても手の届かない場所なのだろう。
「そうでしたか…そういうことにしておきます」
「助かる。まあ君の実力なら近い将来、いやでも知ることになるんだ。今は忘れておきなさい」
はっはっはっと笑いながら剛三郎さんと着替えを済ませ武道館を後にした。
時刻はお昼、俺と剛三郎さんは自宅に戻ってきた。
そして良い匂いのする、食卓に二人の足は向かっていた。
「高円寺くんのところで働くことを認めよう。高円寺くんもはじめのことをよろしく頼む。だた…仕事が嫌になったらすぐに帰ってきていいんだからな!」
食事の準備をするはじめを見つけた剛三郎さんが、胸を張ってそういう。
若干、最後のほうに熱量がこもっているように感じたが…まあ認めてもらえてよかったよ。
「そうっすかー。まあ…仕事が嫌になったとしても…別に実家には戻らないっすけどね…」
脳筋には付き合ってられないっすと付け足しつつ、手を止めずテキパキと昼食の準備を進めている。
ガーンッという表情を浮かべた剛三郎さんの表情を見て、クスッっと笑ったはじめ。
「ほーら!お昼にするっすよ!おじいちゃんもパイセンも席に着いた着いた!」
背中を押されて席に着いた俺と剛三郎さん。
剛三郎さんの奥さんも席について4人で昼食をとった。
はじめが作ってくれた手料理はどれもこれもうまかった。
これは…いい嫁さんになるだろうな。
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