第88話 はじめの実家訪問(5)
はじめの両親は二人とも探索者だった。
しかも二人ともSランクの実力者でな。
当時SSランクだったわしと、よくダンジョンについて話をしたもんだ。
そんな中、はじめが生まれた。
わしの気持ち的には探索者としての活動は控えてほしい思いはあったが…。
わしも探索者でな。
息子が生まれた時も、ずっとダンジョンに潜り続けててな…。
よくかみさんには怒られたよ。
そんな自分が息子たちに探索者としての活動を控えろとは強くは言えなかった。
ただまあそうはいってもSランク。
中層~下層ぐらいなら危なげなく踏破しとった。
そしてダンジョンから帰ってきては、はじめにダンジョンであったことをはじめに話を聞かせたりしてな。
きゃっきゃっと笑うはじめをわしは遠目で眺めとるだけで、幸せを感じとったよ。
まあ…はじめが覚えてるかはわからんがな。
だがな…そんな幸せは長くは続かんかった。
高円寺くんも話ぐらいは知っとるだろ?
20年前の新宿のダンジョンブレイクだ。
東京中にいるSランク以上の探索者が駆り出されたよ。
SSランクのわしのパーティーや、Sランクのはじめの両親も言わずもがなだ。
この話をする前に、新宿ダンジョンというのは、新宿駅と皇居の中央…そうだな大体四ツ谷駅あたりにあるダンジョンでな。
上層10層、中層20層、下層30層と下に進むにつれて層が増えていくんだ。
そして深層に至っては未だに踏破されておらん。
そんなダンジョンの深層で…ダンジョンブレイクが発生した。
わしらのパーティーは最前線に立って深層を鎮めるために全力を尽くした。
ダンジョンブレイクが起きたのが深層の浅いところだったから、SSランクのわしらでもダンジョンブレイクを収めることはできたんだが…。
収束するまでに、多くの犠牲者を出した。
その中にはじめの両親も含まれておったんだよ…。
その時、わしの中の何かが壊れた気がしたよ。
そこからしばらくは目の敵のようにダンジョンを踏破し続けた。
踏破したところで何も変わらんというのにな。
身体を動かすことしかできんかったんだ。
当時3歳だったはじめは、その当時のことを…
両親が探索者だったことは覚えてはおらん。
だから両親は交通事故で無くなったということにしている。
だが…聡い子だ。もしかしたら気付いているのかもしれない…。
だがまあ…ありがたいことに、はじめは探索者にならんかった。
しかし…探索者に関わる仕事についてしまった。
探索者はいつ命を落とすかわからない職業だ。
しかも…だ、高円寺くん。
君はSSランクだから有事の際、必ず最前線に立たされることだろう。
そして娘は君…の職場をとても好いているように見える。
身近な人が亡くなるのを経験させるのは…もうこりごりだ。
約束してくれるかい?
娘を悲しませないと。
―――――――――――
書くの難しい…
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