第87話 はじめの実家訪問(4)
更衣室で剛三郎さんから受け取った道着に着替え、武道館の道場に向かう。
準備を済ませた剛三郎さんがそこで待っていた。
改めて相対すると二回りほど大きく見える圧を肌で感じる。
「さあ…高円寺くん…はじめようか?この武道館はダンジョンの素材でできてるから、ダンジョンと同様、氣を纏うことも出来るし、修復機能もあるから気にせず…そうだなこちらは手を出さないから高円寺くんの実力をみせてくれるかな?」
たしかに地上に出ると一般人より強いぐらいに力が落ちるが、この武道館はダンジョンと同様の力が湧いてくる。
探索者として実力があることは肌で感じるも、流石にSSランクの俺が全力を出して拳を振るうのは躊躇ってしまう。
「いきますよ…」
氣を纏い、5割程度の力を込めて拳を振るう。
「…こんな拳圧でSSランク…なのか?」
剛三郎さんの眉をひそめると、パンッっと俺の拳を手で受け止める。
「正直…期待外れじゃ。この程度では下層ですら普通に死ぬぞ?」
軽蔑するような目を向ける剛三郎さん、どうやら力量を見誤ったようだ。
「すみません!相手の実力も見極められず本気を出せていませんでした。本気を出して怪我をされると…と思いまして」
「怪我…ね。君が本気を出したところで、わしに怪我を負わせられるかな?」
剛三郎さんから放たれた氣にブワッっと毛が逆立つ。
これは…こんな圧倒的な力差を感じたことがない。
もしかしなくても…俺より圧倒的に強いのでは…。
「すみません。私は実力を見誤りました。もう一度チャンスをください!」
「ふむ…まあいいだろう。次で最後だ…本気できなさい」
「
全身が燃えるように熱くなる。血流が速くなり鼓動が急激に鐘を打つ。
身体中を巡る氣が膨大に跳ね上がり、自分の身体から吹き出し始める。
荒れ狂いコントロールの効かなくなりそうな氣を、この一撃ですべての氣を使い切るイメージで何とか制御し拳を固めた。
「これが今、私の出せる最強の一撃です!」
武道館が拳圧でガタガタと震える…しして氣を乗せた一撃を放った。
「ふむ…氣の乗ったわるくない一撃じゃ…な!!」
ニッと笑いながら、俺の一撃を…剛三郎さんは腹で受け止める。
ズドンッ!!!当たった衝撃音が響き渡る。
「うむ、これぐらいであれば十分SSランクといえる。破壊力だけなら深層のフロアボスにも十分通用するレベルじゃな。まぁ…すべてを吐き出した一撃という部分を加味すると…まだまだ足らんな。身体を鍛え、深層の食材を食って身体を作っていきなさい」
鋼鉄を殴ったような衝撃に、握りこんでいた拳がほどけて痺れている。
剛三郎さんの腹筋一体どうなっているんだ…。
氣をすべて消費したため強制的に
「はぁ…はぁ…全力の一撃で無傷ですか…、剛三郎さんあなたは一体…」
「ふむ…。そうじゃな…改めて探索者としての自己紹介をしようか。わしはSSSランク探索者、周りからは長老と言われとる」
「………」
「……?」
「…ええええええ!!??」
「耳元で…うるさいのぉ!!!」
いやいや…いやまあこの実力差だ…。
嘘を言ってはいないのは流石にわかる。
わかるんだが…えええええー???
脳が混乱している。
日本最強の探索者が、はじめのおじいちゃん…。
流石にそれは…想定していなかった。
「実力は見せてもらった。まだまだ…駆け出しじゃが…まあ十分見込みはあるだろう」
剛三郎さんの氣が霧散する。
「さて…実力は伝わった…さて、高円寺くん。少し昔話に付き合ってくれんかね?」
「はい…。それは大丈夫ですが…」
確認をしてはいるが、有無を言わさない空気を感じる。
「高円寺くんは、はじめの両親について、何か話を聞いているかい?」
「い、いえ…高尾さんのご両親は…」
「はじめの両親はな…新宿のダンジョンブレイクで亡くなったんだ」
―――――――――――
シリアス話は…サラッといきたいところ…
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