第86話 はじめの実家訪問(3)

「そこまで言うぐらいだ…高円寺くんにとって…はじめは大切な存在というわけなのかね?」

「はい!高尾さんは私にとって(従業員として)とても大切な存在です!」

「ちょっ!?おじいちゃん!?パイセンもいきなりなんなんっすか!?!?」


慌てふためくはじめを尻目に、剛三郎の目がカッ!!と見開かれる。

そして…全身に怒気を孕んだオーラを帯びていく。

なんでだよ!?


「ならん…ならん!はじめは…はじめは…お前のような者には…やれん!!」

「な、何でですか!?不安定な職業だからでしょうか?それについては先ほどご説明しましたが私に何かあった時の準備はしています。高尾さんにはどうあっても必ず幸せだったと言えるようにします!」

「ぽっと出の…何処の馬の骨か知れない奴が…はじめを…はじめを幸せにする…だと…」

「はい!必ず幸せにします!なので高尾さんを許してください!」


「………………」

「………?」

剛三郎の怒気を孕んだオーラが霧散していったように感じた。

沈黙が流れる。


「(まあ…そうっすよねー…あーうん、わかってるっす)おじいちゃん、パイセンの会社はどこを探しても見つけられないホワイト企業っす!やりがいもあるし流石に働くのがダメっていうならそれ相応の理由を教えるっすよ!」

ふてくされ気味のはじめが沈黙を破り、剛三郎さんにズビシッと指を突き付ける。


「う、うん?わ、わかった、高円寺くんの職場がホワイトだということはわかったんじゃ。だたな…。ふ、ふむ…そうじゃ!高円寺くん探索者のランクはSSランクと言ったな?」

はじめに嫌われたくないのか、先ほどと打って変わりたじたじな剛三郎さんは、急に何かひらめいたのか手をポンっと打つ。

うん…その仕草は似合わないとは口が裂けても言えない…。


「はい、SSランクになって日が浅いですが…SSランクです」

「…そうか、なら一度手合わせをしようか?わしもつい最近までちーっとばかし探索者として活動しとったんじゃ。君の実力を…本当にはじめが働く職場にふさわしいかをこの目で判断させてほしい」


腕を回しながら、こちらを見る剛三郎さん。

探索者をしていたと聞いて、その体格に納得がいった。


はじめはあーっ…と頭を押さえながら「これだから…脳筋は困るっす」とぼやくも、こうなるとどうにもならないのだろう。


「若輩者ですが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします!」

実力で判断…シンプルだが、こういうのも時には重要だろう。


「よく言った!こんな狭い場所じゃ話にならん。闘技場に行くとしようか!はじめは…ここで待っていなさい」

そういうと、ついてきなさいと言い終わるや否や先を歩きだす剛三郎さん。

その後に続き、野郎二人は闘技場に消えていった。




「…なんなんっすか…この展開…」

闘技場に消える俺の背を見届けて、はじめは…諦め交じりにため息をついた。


―――――――――――

あれ?仕事についてで来たはずなのに…なんでこんな話に?

勉強を続けると現実逃避したくなります…ね!


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