第84話 はじめの実家訪問(1)
さて…久しく来ていなかったスーツを着て、事前に用意しておいた手土産を持って、はじめの指定した駅へと向かうことにした。
「パイセン…遠いところありがとうっす」
何度か電車を乗り継ぎやってきたのは、まさかの都会…その中でも一等地と言われる千代田区番町だ。
「なあ…はじめ…俺はスーツを着てきたが…オーダーメイドでも何でもない、そこら辺にある既製品…しかもこういっちゃなんだが前の会社時代のくたびれたやつだ。…なんというかこの場所で俺は浮いた存在ではないだろうか?」
「あー…そんなの気にしなくていいっすよ。形式にこだわりたい奴が勝手にこだわってたらいいっす」
そういうはじめは、普段職場で見る姿と変わらない私服姿だった。
「そうは言うがな…」
「あー…もうめんどくさいっすねー!行くっすよ!見た目を気にする必要なんてないっす!どうせ…おじいちゃんもそこにこだわりは持ってないっす!」
場違い感を感じて右往左往している俺の背中を無視してぐいぐい押すはじめ。
「いや、背中を押されてもだな…俺ははじめの実家の場所を知らないからな?とりあえず案内してくれるか?」
「わかったっす!ではいくっすよー!」
「な、なあはじめ…俺…帰っていいか?」
俺の前にあるのはめちゃくちゃ立派な門構え…その門の周りをそびえたつ壁が覆っている。
要塞、砦…なんかそういう空気感を感じる。
番町に家を構えている時点で只者ではないが、俺の目に映るそれは他の豪邸と比較しても圧倒していた。
「ここまで来て何を言ってるっすか…ほら入るっすよ!」
入口に立っていた黒服がはじめの姿を見つけると、深々とお辞儀する。
いや…これってヤから始まる三文字の家業の家じゃないだろうか…。
「「「おかえりなさいやせ!!お嬢!!」」」
背中を押され、門をくぐると道の両脇に黒服の強面の人たちがきれいに整列していて、タイミングピッタリに頭を下げていた。
そして顔を上げるやいなや、視線だけで人を殺せるのでは?というような視線が俺を刺す…。
あの人とか…なんか唇噛みしめて血がにじみ出てるんですけど…。
いやいや…まじで目が…怖いよ。
「ほらほら…突っ立ってないで先に進むっすよ」
そんな光景を気にすることなく進むはじめ…。
「な、なあ…はじめ、はじめの家って…ヤから始まる家業だったりするのか?」
「んなっ!?そんなわけないっすよ!失礼っすねー!人の家を何だと思ってるんっすか!」
だってどう見ても…な?
「いたって普通の仕事をしてるっすよ?」
誰か…俺に普通の定義を教えてくれ…。
そんなこんなで庭を歩いていると一軒の家の前に着く。
純和風の平屋建て…だがどう見てもこれは…豪邸だ。
軒裏に城や寺でしかみない立派な
心の中で叫びつつも、自分で言うのもなんだが着眼点は独自かもしれない。
ただ…敷地を囲うように壁がそびえ立っているのに、しっかり日が差し込んでいる。
それは…バカでかい敷地を壁で囲っているからだ。
めちゃくちゃでかい家の奥に見えるのは…あれは武道館?
なんで家の敷地中にそんな設備があるんだ…!?
「ほらほらボサッとするなっすよー…ただいまっすー!」
「おぉ~はじめ~帰ってきたか…」
デレデレ顔で鼻の下を伸ばしたおじいさんが走ってくる。
そして俺と目が合うと…
「ゴ、ゴホンッ…ああ…君が高円寺君だったかな?」
気まずそうにしつつも、先ほどのことはなかったかのようにキリっとした表情に切り替わる。
うーん…この顔どこかで見たような…?
…気のせいか?
「初めまして、わしの名前は高尾剛三郎だ。君の名前ははじめから聞いているよ。よろしく高円寺くん。玄関で話というのもなんだ。はじめ、高円寺くんを応接間に連れて行きなさい。かあさん!お茶の準備を頼む!」
「…お茶ぐらい自分で淹れてください!」
「…」
「…」
「ゴ、ゴホンッ…とりあえず、はじめと高円寺くんは応接間に先に向かってくれたまえ、お茶の準備を…頼んでくる」
…剛三郎さん…自分で淹れるのかな?
「ほらほらパイセン!ここにいたらおじいちゃんがお茶の準備できないっすよ!さっさと応接間に行くっすよー!こっちっす!」
「は、はじめ…わしが準備するとは一言も…」
剛三郎さんの言葉を遮るように、はじめは俺の背を押して目的の部屋に向かっているようだった。
やっぱり剛三郎さんがお茶を準備するのかな?
―――――――――――
1日更新できなくなるとPV数が半分以下に落ちました…(ツラミ)
ストック分消化しても1話しか書けない…
書きたいことはあれど、書く時間が取れずで…すみません
「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!
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