第77話 深層配信(10)
深層5層、フロアボスのいるダンジョン最下層に到着した。
木々の間から吹き抜ける空気、木々の間にぽっかりと空いた空間にそいつは腰を下ろしていた。
「ぐるぅうぅぅう…」
ただ、このフロアの異物である俺の存在を不快に思っているのだろう威嚇してくる。
真っ白な純白の毛皮は光を反射し、まばゆい輝きを放つ。
ルビーのような深紅の瞳は見た者を魅了しそうだが、鋭い眼光がそうはさせず、見るものすべてを圧倒する。
深層フロアボスSSランクモンスター…フェンリル。
<えっ…>
<これってまさか…>
<【5,000円】フェンリルやんか!?>
<マジでいるんだ…空想上のモンスターだと思った>
<それな>
<初めて見た>
<目がメッチャキレイ…>
<でもめっちゃ怖いんやが…>
「いやー…フェンリルですねー…大きいんですよー。ちなみにモンWiki情報によるとSSランクモンスターなんですねー…」
<SSランクって…>
<緊張感ー!!!>
<いやいや…今回は相手が悪かった逃げろかずやん>
<同一ランクのモンスターと探索者だと、モンスターのほうが強いんだろ?>
<一般的にはモンスターのランクはパーティー戦を想定してつけられてるからなー>
<貴重なモンスターのシーンを見れただけでも十分出来高あるだろ?>
<でもこんなモンスターダンジョンから出てきたらヤバいだろ…>
<ゴールドバックコングと違ってマジの格上で、しかももうかずやんを敵として見てるぞ…>
<今回は不意打ちのしようがないぞ!>
「ちなみに…フェンリルの雷撃はマジでエグイので戦う場合は要注意ですよ!」
<普通の探索者はまずここまで来れないw>
<フェンリルって雷撃放ってくるんや>
<めっちゃ戦う気満々ですやん>
目の前のフェンリルがスッと立ち上がると――。
「来ます!!」
身体を氣で何重にも纏い、氣を張り詰めていた空間に何かを感じ、その方向に向かって腕をクロスしガードを固めた。
バチッっと弾ける音と光に少し遅れて、ドンッっと激しい衝撃が身体を襲う。
その衝撃は耐えきることができず、俺は地面を転がった。
「グッぅ・・・」
氣を纏っていたから、肉体的ダメージは薄いが、スキルを使わない状態から攻めに転じるのは難しいかもしれない。
「
再びバチッっと弾ける音が聞こえる。
張り詰めた氣で大体の位置を把握しつつ、その姿を視界の端にその姿を捉えたので、氣を拳に纏い振り抜いた。
拳が毛皮に触れる感覚、相手も何かを察したのか、地面を足で蹴って少し飛び身体を捻って俺の拳を回避する。
宙に浮いたフェンリルに向かって、続けざまに氣を纏った足で白い塊に蹴りを放った。
白い塊からニュッと飛び出た後ろ足、俺の蹴りを身体をバネに受け止めると、その勢いを利用して距離を取られた。
「さてはて…仕切り直しですね」
<早すぎて何が何だか…>
<かずやんが倒れて不利かと思いきや、気付いたらフェンリルが距離取ってた>
<
<むしろこのスキルがないとフェンリルを相手にできないだろ…>
<
<たしかに、あまり長引くとかずやんが不利になるな…>
「早めにケリをつけたいですが、流石にそううまくはいかないですね…もう少し打ちあってみたいと思います!」
フェンリルの動きを待たず、こちらから攻勢に出る。
地面を蹴り、瞬時に相手との間合いを詰める。
だが、フェンリルも黙って見ていてくれはしない。
バチッと雷撃が弾けると、姿がスッと消える。
消えるというよりは瞬時に最大速度に至ったか。
突如頭上に現れたという表現が適切かもしれない。
姿を現したフェンリルはもう足を振り上げており、姿を現したときには前足を振り抜いていた。
「グァァア」
モロに拳を受けたフェンリルは、拳の勢いで弾き飛ばされる。
距離を取ったフェンリル、威嚇音と共にバチバチっと紫電の雷撃を纏い始める。
「あー…これはヤバいですね。フェンリルの必殺の一撃がとんできますよー!」
<緊張感ー!!>
<必殺の一撃って?>
<フェンリルめっちゃバチバチしてる>
「GAxaaaaa!!!」
纏った雷撃が俺に向かって放たれる。
「こういう時は…氣の盾ではじきます!」
氣を盾のイメージで固めて向かってくる雷撃にぶつけた。
盾と雷撃がぶつかり、衝撃で砂煙が舞う。
雷撃が霧散し、辺りの森をなぎ倒していく。
破壊力…パネェ…。
<いやいや…氣の盾であの雷撃打ち消せるのかよ…>
<無理無理…>
<あの威力は相殺とかできねーよ!>
<手に汗握るわ>
<【5,000円】かずやんがんばれ!>
<【3,000円】負けるなかずやん!>
<【10,000円】「姫っちゃん」かずやんさんがんばってください!!>
<【50,000円】「武蔵境」滾らせてみせろ>
<!!!?????>
<武蔵境さん!!!!>
<えぇえええええええー!!!????>
<まさかの配信見てたwww>
<最強のSSランク探索者を超えるか!?>
<姫っちゃんより目立ったwww>
<【666円】ぜ、ぜつゆる…>
<絶許氏も流石に噛みつくのが怖いか…>
<いやいや…実力的にはかずやんも同等だろ>
一撃入れたが、ぱっと見ダメージを受けているようには見えない。
―――――――――――
深層編…予想以上の長編になってしまった
30万PV達成しました!
見てくれてありがとうございます!
「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!
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