第68話 深層配信(1)

従業員一同から深層配信の許可を貰った翌日の土曜日、今回は…配信回だ。


昔行ったことのある深層ダンジョンに挑戦することにした。

おぼろげな記憶しか残っていないが、過去に踏破した深層に挑むことで昔と今の実力差を知ることができる。


不安はあるが、ここの深層のフロアボスはうまかったはずだ。

時間になったので、配信を開始する。


「皆さん!こんにちはー!」

<こん>

<こんちゃー!>

<こんちゃーっす!>

<かずやんこんちゃー!>

<こんにちはー!>

<火山配信見たよー!>

<まじすげーな!>

<かずやん劇場!>

<【8,989円】今日の配信なにー?>


「今日の配信はですねー…深層配信をしたいと思います!」

<……>

<…>

<………>

<……>

<……>

<…>


「あれ?音声はいらなかったかな?深層配信をしたいと思います!」

ダンジョンに入ったところだったから音声途切れたかな?

<まじ?>

<まっ?>

<まじ?>

<まじで?>

<いやいや…まじ?>

<うぉー深層配信!!>

<やばいって深層配信!!>

<ガタッ!>

<ついにキタ――(゚∀゚)――!!>

<【50,000円】つ情報料の先払い>

<深層って…配信で流してる人いなくね?>

<いやいや、かずやんが過去配信してた動画があったはず>

<あーあのCGの?>

<いやいや、あれはCGではないだろ…>

<だってあれ、人間辞めた動きしてたじゃん…>

<大丈夫!今のかずやんも十分人間辞めてるから>


「はいはい…ってひどい言われよう!そして今回のダンジョンは過去自分自身が踏破した深層を今の実力で挑みたいと思ってます!正直不安しかないんですけどね…今日と明日の昼で進めるところまで進んでみようと思ってます!」

<……>

<…>

<………>

<……>

<…>


「ん?やっぱりマイクの入りが悪い?」

<【5,000円】かずやん…いま過去深層を踏破したって言った?>

<過去深層配信してたのは知ってるけど…あれ最後踏破してたの!?>

<途中で配信切れてたから、深層途中で断念したものかと…>

<いやいや…そうだとしたら…マジで偉業打ち立ててたってことじゃん!?>

<SSSランク待ったなしだろ…マジで>

<ギルド情報でSSランク探索者の深層踏破実績ってなかったよな…>


「あの時は途中でスマホの充電が切れちゃったんですよね…」

<嘘乙!>

<いやでもかずやんだぞ?>

<だって踏破したなら踏破報告するだろ普通は!>

<嘘松確定か!>

<かずやんEランクだったしギルドに近づけなかったから、踏破報告すらして無いんじゃ…>

<まじかよ…>

<今日、明日の配信見て判断すればいいんじゃない?>

<配信者数稼ぎたいからって嘘はいかんよ。嘘は!>

チャット欄が荒れている…俺なにかやっちゃいました?


「昔の話なので…なんかすみません…」

そんな会話をしながらも、立ち止まっている時間が勿体なかったので上層を駆け抜ける。

今回の配信では、下層踏破まで時間を掛けていられないので、普段より気持ち巻きで進めなければならない。

<ただ…かずやんもさ、ブランクあるからね…>

<ブランクあるの…か?>

<【50,000円】「姫っちゃん」師匠!深層頑張ってください!でも…絶対無理しないでくださいね!>

<姫っちゃんだ!>

<【1,000円】姫降臨!>

<姫降臨!>

<姫っちゃんキタ――(゚∀゚)――!!>

<姫っちゃんキタ――(゚∀゚)――!!>

<姫っちゃんキタ――(゚∀゚)――!!>

「姫っちゃん!心配ありがとう!頑張るよー!」

<【666円】絶許!>

なんでだよ!


心の中でツッコミを入れながら中層に入るも足を止めず目の前に現れたモンスターを片っ端から蹴散らしていく。

その中で道中のモンスターを一体引っ掴むと、そのまま中層フロアボスのいるフロアに突入した。


<【50,000円】「パンプキン」深層配信ですか!?めっちゃ楽しみにしてますね!>

<モンスターとお散歩してるww>

<あえて触れないパンプキンwww>


「あっパンプキンの皆さん!ありがとうございます!どこまでいけるかわからないけど頑張ります!」

いつものミノタに向かって、中層を共に過ごしたモンスターを未練無くぶん投げる。

2匹ともまとめて成仏させて中層を踏破、そしてそのままの勢いで下層に突入する。

<毎回中層踏破のネタ考えるかずやん…大変そう>

<ミノタが哀れすぎる…>

<まさかの道中モンスターに倒されるなんて…>

<「ミノタ」俺の最後ひどくない?>

<…って話しながらめっちゃ下層進んでるってw>


今回の下層は草原だ。


「あーグリフォンの群れに見つかっちゃいましたねー…」

戦わずに済むならそれがいいかなーって思っていたが、甘くない。

見つかっただけでなく、このまま最短距離を突っ切るには、目の前のグリフォンの群れをどうにかしないといけない。


「さて…ここを突っ切らないと時間のロスが激しいので一気に倒します!」

クロスさせた腕で氣の刃を作り、そして一気に解き放つ!

クロスの刃が目の前の群れを一気に切り刻んでいく。


「この倒し方だと…食材を無駄にしてしまうのが欠点ですね」

内臓が破裂して肉に付着してしまうと臭いがついてしまって食べられなくなってしまう。

ドロップ品だけマジックバックに詰め込み後ろ髪引かれるがそのまま先を進むことにした。


<めっちゃ早いww>

<一撃で群れを蹴散らしたw>

<もうAランクモンスターは目じゃないんだぜ…>

<【500円】緊張感ー!>

<食材www>

<めっちゃ悔しがってるw>

<クロスカッター!かっけー!>

<クロスカッターわかりやすくて良いネーミングだな!>

<俺も氣の刃を飛ばせるようになりたいなー>


「さて…サクサク行きましょう!」

といっても、深層以降のモンスターのドロップ品は金額が跳ね上がる。

マジックバックを持ってしまっているがゆえに、倒して放置していくことは俺にはできず、倒したら拾ってを繰り返しているとそれなりに時間が掛かってしまった。

最短距離で進んだつもりだが、結局のところプラマイゼロ進行、むしろ素材の解体時間を含めると時間が掛かってしまったまであるかもしれない。

今回のダンジョンは下層が5層といつも探索するダンジョンより深いため、フロアボス直前までで4時間経過していた。


「フロアボスに挑む前に、少し休憩しますね!配信も一時停止して20分後に再開します!」

<【500円】りょ!>

<トイレ…>

<今まで我慢してたのかよw>

<「姫っちゃん」ゆっくり休んでください!>

<「パンプキン」フロアボスの配信も待ち遠しいです!>

<乙でしたー!>


昔はそのままフロアボスに挑んで倒してから休憩していた。

今回、まだ身体は動くが普段より深い階層に挑んでいることもあるので念には念を入れて事前に休憩を入れることにした。

まあフロアボスはそこまで強くない思い出はあるが、今回のボスは毒持ちということもあって気を付けて戦う必要があるんだよね…。


配信を一時停止して、セーフゾーンで休憩をとることにした。


―――――――――――

さあ深層編開始です!


本日一つ歳をとりました。時の流れははやいっすねー


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