第67話 うれしかったっすよ
ドローンカメラの性能評価試験が終わり、試験結果とドローンカメラが販売されるならぜひ買いたいと連絡をしたところ「配信をこちらも拝見しました。火山フロアでも十分使えることが検証できたので良かったです。機材の返却は不要なので、ぜひこの製品を利用して欲しいです。」と返信を受けた。
すこし気になるのは、どこのメーカーから発売されるかわからないという点だ。
バッテリーは市販のメーカー製カメラと互換性があるみたいだが、そこのメーカーから売り出される予定はないらしい。
長時間配信も心配いらないのはうれしいが機材が壊れたら替えがないのが辛いところだ。
配信後それなりに反響はあるけど、WEBニュースでも新商品の話題が上がってこない。
むしろ俺のドローンカメラは一体どこで売ってる!?ってのがニュースになったし、Yのタイムラインも火山フロア配信がトレンド入りしていた。
はじめが編集してアップした動画は、日本ユーザより海外ユーザのアクセスが多く1日で1000万再生を突破する偉業を打ち立てた。
これには仕事を早めに切り上げて社員みんなでパーティーをしたものだ。
翌週そのテンションで氷山フロアの配信も行ったが、ドローンカメラは壊れることなく配信を終えることができた。
下層のフロアボスの生配信中に登録者数500万人を超えたと報告を受け、テンション上がってビールで乾杯してたら…フロアボスのアイス・ワームに丸飲みされてしまったのはいい思い出だ。
腹を掻っ捌いて倒したもののアイス・ワームは食べたくなかったので、道中に遭遇したブリザード・ウルフを調理して食べたんだが…これがまた旨かった!
野性味のある肉の味でスパイス掛けたらめちゃくちゃハマってな!それもあって別日にジャーキーに初挑戦したんだが、これまた酒のつまみになってー…っと話がそれるところだった。
氷山フロアから職場に戻ってきたら、はじめと国立さんにこっぴどく怒られた。
罰として一週間禁酒を言い渡された上で、「週4配信してきていいっすよ(ニッコリ」ときたもんだからその一週間はマジで拷問だったよ…。
アイツら仕事終わった後に飯を強要して作ったら目の前で酒飲みながら食うんだもん…まぁ自業自得なんだけどさ!
そんなことはあったが、どういう環境下でも配信できるドローンカメラが手に入ったのは事実だ。
未知の領域、未踏破ダンジョンを配信できる地盤ができたと言えるだろう。
あとは俺の仕上がり具合だが、下層フロアの攻略を繰り返し、全盛期には程遠いがそれなりに身体も動くようになってきた。
それにドローンカメラを使ったダンジョン配信にも慣れてきた。
昔はスマホ片手に配信してたからね。
今思えばよくあれで深層配信してたな…。
自身の実力に多少の不安は残るが、これなら深層配信に挑戦できるかもしれない。
ただ…深層配信を行うにあたり、社長という立場から従業員に同意を得る必要があった。
会社に向かうと、はじめも国立さんも仕事を開始していた。
仕事の手を止めてもらい、打ち合わせをするためのテーブルに集まってもらい、そして…本題を切り出すことにした。
「真面目な話をするから聞いてほしい。俺は社長ではあるが一人の探索者でもある…しかもSSランク探索者だ。今後ギルドや国からどんな強制ミッションが来るかわからない以上、現状に満足する=死を意味すると考えている。ただ…現状以上を目指す場合は当たり前だがリスクを伴う。配信時に命を落とすかもしれない、それで皆を路頭に迷わせるかもしれない。それでも俺はそのリスクを取ってでも…深層を挑戦したいと考えている。」
「いいんじゃないっすか?だって、それがパイセンのやりたかったことなんっすよね?自分たち…いや自分はっすけど…ブラック企業でパイセンと出会って今までなんとかやってこれた身っす。たまたま映像編集の技術があったから引き抜いてもらったっすけど…私が探索者としてのパイセンの足かせになるのは嫌っす。何かあれば華々しく散って…欲しくはないっすけど、やりたいことをやれない…そんな風にはなって欲しくないっす!」
「そうですね…私も今まで下準備メインで面白みに欠けていた仕事内容で転職してきましたが、高円寺さんの元で働くことができて感謝こそすれ、足かせにはなりたくないです。それに…路頭に迷うって言いますが…ここまで仕事できるようになると二人ともどこでもやっていけるので、その点は気にしなくて大丈夫ですよ笑」
はじめも国立さんも前向きに受け止めてくれているようだ。
「二人とも…」
「そうっすよーそれに…パイセン結構真面目な理由で話してるっすけど…どーせ深層の食材を食べたくて仕方がないだけっすよね?理由なんてそんなものでいいんっすよ」
な、なぜそれを…
「な、なぜそれを…」
あっ、思考と言葉が同時にでた。
「それは…流石に普段の配信とか料理でわかりますよ。高円寺さんの食材を手に入れた時と調理の時の目の輝きが異常すぎますし…」
「そうっす。隠せてると思ってるなら自分の配信を見るといいっすよ」
ケラケラくすくす笑うはじめと国立さん…これは…相手の方が一枚上手なのかもしれないな。
打ち合わせが終わり各自自席に戻っていくなかで、はじめが踵を返してトトトッと走ってきた。
「でも何も言わずに深層配信を始めず、自分たちに言ってくれてうれしかったっすよ」
上目遣いでこそっというはじめにドキッとして顔を背けることしかできなかった。
国立さんのキマシタワーって顔やめぃ!
―――――――――――
さぁー…準備は整いましたよー!
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