第66話 カニパ(3)

「さて…!そろそろグリル焼きも仕上がったかもしれないですね!」

グリルの蓋を開けるとブワッと香りが広がった。


「焼き料理はシンプルに…サラマンダーのステーキと、焼きガニです!」

<おぉー!やっぱりカニがメッチャ立派!>

<しゃぶも焼きも一度に食べられるってめっちゃうらやましい!>

<ステーキもうまそー!>


「くーっ!しゃぶしゃぶもいいけどカニを焼いたらめちゃくちゃいい匂いがするっすよー!」

カニの匂いにつられはじめがやってくる。

「ししょー!カニ…食べたいです!」


我先に焼きガニに手を伸ばす面々。

焼きガニと言えば…何もつけなくても十分美味しいが…。

「ここに…カニ味噌があります。これをたっぷり付けて…」

カニの身の旨味と甘みに、カニの旨味が濃縮された味噌の濃厚さが追い打ちをかけてくる。


「くーっ!!!日本酒ー!!!」

熱燗もいいが、冷の冷酒をおちょこに注いで一気に飲み干す。


この組み合わせ…合わないわけがない!


「うぅ…その食べ方ズルいっす!私もやるっすよ!」

「私もやります!」

はじめも姫っちゃんも我先にとカニ味噌を付けて食べては、日本酒を飲んではうまーい!と叫んでいた。

<和んだ>

<正妻候補同士も仲いいよねー>

<【666円】絶許!絶許!絶許!絶許!絶許!絶許!絶許!>

正妻というのはよくわからないが、仲いいなーっていうのは同意だ。

微笑ましく見ている。


「あぁ…はじめx姫っちゃん=はじ姫、姫っちゃんxはじめ=姫はじ…うーんどっちもありですねー」

国立さんも日本酒をちびちびやりつつ焼きガニをつつき、その光景を眺めていた。

つぶやいている内容は聞かなかったことにしよう。


「姫路さんのAランク昇格ですか?」

「はいここ最近少しずつですが下層の攻略をしてますし、ギルドに下層素材を収める頻度が増えてきたと思ってます。昇格条件は満たしていると思いますし、検討されてもいいのかな?と思うのですがいかがでしょう?」

「そうですね――」

机を挟んで神田さんと三鷹さんが話している。

神田さんの前にはノンアルコールビールと焼きガニが置かれている。

三鷹さんはステーキをナイフとフォークで切り分けては口に運びつつ、ノンアルコールハイボールを楽しんでいるようだ。

めちゃくちゃ仕事の空気感が出ていて、近づくに近づけない空気感になっている。


<三鷹さんと神田さん…美男美女すぎるでしょ>

<眼福だわー>

<話している内容が聞こえないー!>

<二人のカップリングありかも!>

<三鷹さんはみんなのものよ!>

<神田さんに振り向かないで!>

<キーッ!神田さん許さないわよ!>


コメント欄大丈夫か?三鷹さんファンには過激な人もいるんだな…。

ただ以外だったのは、神田さんが深酒してない…だと…。

あの姿を配信してしまうと配信事故に発展する可能性があったので、不安の種がなくなって一安心した。


「さて、俺もサラマンダーのステーキいただきましょうか!

ほど良い硬さと、鶏肉に近いこともあってチキンステーキのように肉肉しいですね!

ただ鶏肉より、肉のうまみが段違いに強くて、サーロインのような脂っこさもないのでパクパク食べられます。

オリジナルスパイスを掛けてみましょうか!

…燻製感がとても合います!うーん…これは赤ワインですね!」

グラスに赤ワインを注いで一口。

肉と赤ワインってなんでこんなに合うんだろうね!



さて…焼き料理が終わったら次の料理は…これだ!


グリルから取り出したるはカニグラタン。

仕上がりはいい感じだけど、最後にバーナーで表面を軽く炙る。


パン粉の焼ける匂いが香ばしい。


「おいしそう…じゅる!」

姫っちゃん…キャラ崩壊は…してないか?

探索者って一般人よりめっちゃ食べられるんだよね…。

それもあって、姫っちゃんと俺用はみんなより量を多めに作っている。


「カニグラタンって豪華っすねー!」

二人仲良くテーブルに並んで座り、グラタンを各々の席に置くと目を輝かせている。


「「いただきます(っす)!」」

スプーンでカニの身が入ったクリーム部分と野菜の層を一緒にすくい口に運ぶ。


「こ、これは!!滑らかなクリームの中にカニの濃厚な味噌の風味、カニの身から出る旨みが一つになって…めちゃくちゃ旨いっす。ちょっと重めでくどくなりそうなクリームを野菜が緩和してくれるのでパクパクいけるっす!」

「濃厚なカニクリームと、パン粉のサクッとした食感、ほくほくのジャガイモ…最高の贅沢ですー」


はじめと姫っちゃん用にグラスを用意して赤ワインを注いでやることにした。

「うーん、白もいいっすけど、ここまで濃厚だと赤が合うっすねー!」

「わかりますー。赤の渋さが後味に丁度いいかもです」

ねーっと仲良くご飯を食べる二人。


それを背後から眺めている国立さん。

「てぇてぇー…」

グラタンを食べて、赤ワインをグビグビ飲んでいるが、飲み始めと見た目に変化はない。

どう見てもマスですね…わかりません。

<くにやんどう見ても酒強いだろ…>

<くにやんとは美味しい酒が飲めそうだ>



「これで最後のメニューになります!〆はカニ鍋です!」

<〆キタ――(゚∀゚)――!!>

<うっはぁー!!>

<カニ鍋やべぇー!!>

<足めっちゃ太い!>

<かに三昧の鍋より絶対ウマイやつ!>

結構お酒も飲んだし、〆はやっぱり鍋でしょう。


全員に野菜とカニを入れた容器を回していく。


「「はぁああああー優しい味です(っす)」」


昆布とカニベースの出汁に、じっくり野菜を煮込むことで野菜の旨味も汁に溶け込んでいる。

余談だが、色々な出汁で煮た豆腐ってめちゃくちゃ美味しいよね。


それ単体でも十分旨いが、すだちの効いたポン酢を少しかけてやるとさっぱり感が増してこれまた旨い。


〆に丁度いいな…。そう思いながら冷酒をクイッと…。

「ここまで旨いと鍋じゃ〆るに〆れんな…」

<めっちゃ豪華な料理…>

<食材費で一体いくらになるんだろ…>

<締めっていうには豪華すぎるわ!>

<うらやましい…>

<でも鍋ってことは締めは…雑炊だろ?>

<確かに…>


「雑炊…いいですねー!雑炊食べる人ー?」


「「「「「食べます(食べるっす)!」」」」」


カニ鍋の残り汁にご飯を入れて、ちょっと塩を入れて味を調える。

最後にロック鳥の溶き卵を回し入れる。

各々の鍋を食べ終えた容器に雑炊を入れて回り、刻みネギを振りかければ…。


「完成!カニ雑炊。これ最後の料理だから皆〆ますよー!」


皆の返事を聞きつつ雑炊を食べる。

出汁の効いたほっとする味だ。


……


「「「「「「ごちそうさまでした(っす)!」」」」」」


満足したみんなの顔を映し終えて、配信を終了する。


食後の余韻に浸りながらふと思う。

火山フロアで防護服不要で活動できるし、マグマとカニの甲羅があれば、鍋や焼肉ができるかもしれない。

暑い中で熱いものを食すのは定番だし、そういう配信をするのもありかな?

料理を食べ終わるまで、酒が冷たく飲めるなら試してみてもいいかもしれない!


―――――――――――

カニづくし!カニパやりたいなー!


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