第63話 下層配信~火山フロア~(5)
フロアボスのメルトシェルクラブがいるフロアに足を踏み入れた。
そして…マグマの中からこんにちはーっと、のっそりと出てきた…カニ。
「うーん…こいつ…本当に強いんですかね?」
あーっと、天を仰いだ。
カニをめちゃくちゃ大きくした感じで、ハサミのある手は成人男性サイズと確かに大きい。
ただよく見るとつぶらな瞳で、ずんぐりむっくりで…うーん…弱そうだなー…。
<かずやん、人を見た目で判断してはいけない>
<それ人やない、モンスターや!>
<メルトシェルクラブはAランクモンスターだぞ…>
<つぶらな瞳すぎる…>
<なんか憎めない見た目してるな>
「えーと…出来高なかったら――」
話を割り込むようにハサミが振り落とされ、真っ赤なラインが俺の真横を過ぎ去る。
え?っと思ったときには音が遅れてやってきた。
ドンッ!
振り返ると、溶岩でできた壁が大きくえぐられ赤くドロッと溶けていた。
「っ!?…舐めるな危険ですねー。初撃が外れてよかったです」
<…は?>
<…え?>
<…なに?>
<今のなに?>
<壁えぐれてんだけど…>
<ハサミ振ったら壁がえぐれた…意味が分からん>
<メルトシェルクラブの攻撃の一つで、ハサミでマグマを掴んでバトミントンの最高速度を超える速度でぶん投げるらしい…>
<見た目と裏腹に…エグイ攻撃するな>
<バドミントンの速度ってそんなに早いの?>
<約500kmだから新幹線より早い…>
<まじかー…>
<これはかずやんピンチか?>
「確かに早いですが、でも…まだマッハには程遠いですね」
気が緩んでいたが…運が良かった。
当たっていたら流石に怪我をしていたかもしれない。
改めて気を引き締める。
「ただですね…リロードが遅すぎ…かな?」
メルトシェルクラブ…いや…カニは近くのマグマにハサミを入れて次の玉をリロードしているようだ。
一回のチャージで1発って流石に燃費が悪すぎだろう。
腕を両断しようと氣の刃を放つが、腕を庇うように前面にでてきた硬い甲羅にはじかれた。
殻の耐久力は高めらしい。
懐からの一撃はどうかな?
地面を蹴る、反応が遅くカニの懐に容易に入り込んでアッパーをブチかます。
ドフッっと鈍い音が響いたが、ダメージは入った手ごたえを感じたがトドメには至っていないようだ。
それどころか、口から泡が噴き出てくる…って…。
「あっつ!、熱い熱い!!」
無数の泡の一つ一つが高熱を帯びている。
泡だから肌に張り付くと中々取れないのが厄介すぎる!
氣を纏っているから熱いぐらいで済んでいるが、こんなのずっと受け続けるわけにはいかない。
距離を置いて、手を振るって泡を飛ばす。
「あの泡、シャレにならない熱さですね!」
<配信の最初で言ったでしょw>
<近距離は泡、遠距離はマグマ…隙はないよなー>
<見た目はあれだけど、やっぱり強いのか!?>
<Aランクモンスターだからなー…>
<ただ…ツッコまないといけない気がするんだ…緊張感のなさよ…>
<もういつものことだろ…>
<さぁ…メルトシェルクラブ…緊張感のないかずやんを懲らしめておやり>
<草>
おいっ、モンスターに肩入れするんじゃありません!
「これで美味しくなかったら…許さないからな!!」
刃が効かないなら何度でも叩けばいい!
「泡を吹きだす前に…ブチの…めーーーっす!!」
カニの懐に入り込み、腹が開く前に氣を拳に込めて振りぬいた。
一撃!
ドスンッ!
まだこんなもんじゃないよ…なっ!
二撃!!
ドゴンッ!!
これで仕上げ…だ!
三撃!!!
ズドンッ!!!
カニのつぶらな瞳は焦点が合っておらず、意識が飛んだようだ。
腹を覆っていたふんどしが真っ二つに折れ、意識を飛ばしたことでずんぐりむっくり巨大な図体の自重を支えきれなくなったようだ。
足があらぬ方向に折れ曲がりながらズシンッと地に落ちた。
「ふぅ…一丁あがりですね!」
<流れるような三連撃!>
<メルトシェルクラブだと役不足だったかー>
<ここまでデカいと、自分の自重で足が折れるんだな>
<地上に出てたのも仇になったんじゃないか?>
<メルトシェルクラブ…>
<めちゃくちゃカニパできそう>
<【30,000円】「姫っちゃん」師匠!カニ!カニ―!日本酒買って事務所に向かってますー!>
<【500円】「はじめ」くにやんも召喚してるっすよー!さーカニパやるっすよー!とりあえず先に事務所着いたんでショート動画上げとくっす!>
<【666円】絶許!絶許!絶許!絶許!絶許!絶許!>
<「三鷹」私も姫路に呼ばれたんですが…参加してよろしいので?>
<「ギルド公式」後程伺います>
<いやいや、怒涛のアカウントラッシュw>
<ギルド公式アカなにしてんだよw>
「三鷹さんと神田さんもぜひ来てください」
あっ、神田さんって言ってよかったんだっけ?
まぁ…いいか。
目の前のカニを見る。
この量はどう考えても全員揃っても食べきれないから何人来てもいいんだけどね。
とりあえず勝手に茹で上がらないようにマジックバックにカニを詰め込んでいく。
口に入らないであろうドデカい甲羅も不思議な力で押し込めることができた…謎だ。
「とりあえず…料理配信はここじゃできないので、勝利の美酒として…じゃん!金色のやつ!」
カニを詰め込んだマジックバックから金色のヤツを取り出してグイっと一気に飲み干した。
「ㇷ゚ハーっ!探索後の一杯は最高ー!!さて…配信はこれにて終了です!このあと第2部でカニとサラマンダーを使った料理配信をしていきます!良かったら見てくださいね」
<おつー!>
<マジックバックあるとダンジョンでキンキンに冷えたビール飲めるの最高すぎるなー!>
<金色のヤツ買ってくる!>
<今日はどんな料理が出てくるんだ?>
<とりあえずカニか…>
<スーパーのカニ…買うかー。でも高いよなー悩む>
<近所のかに三昧行ってくる!>
<ヤバい!俺の近所のかに三昧予約一杯だってよ!>
<これは…かずやん効果か!?>
あぁ…神田さんは深酒させないようにしないと…。
あと亮も時間が合うなら呼ぶか、ここ最近色々任せまくってたし…。
配信を終了して、頭を悩ませながらフロアポータルでダンジョンを後にした。
―――――――――――
20万pv感謝!ということで本日2話更新です(ストックがヤバいw)
次回、料理回!
「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!
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