第60話 下層配信~火山フロア~(2)

とりあえず全身氣を纏った状態で慎重に火山フロアに降り立った。

マグマが流れて固まった溶岩が広域的に広がってできたフロアで足場が悪い。

遠目に見えるのは活火山で赤いマグマの光がぼんやりと見える。


暑さの感想はというと…正直わからない。

試しに氣を纏うのを止めてみる火山用防護服だけで気を纏わなければ多少は暑いかもしれないが、全然我慢できる。

次に、氣を纏った状態で、防護服を少しづつ抜いていくが暑さは全く感じない。

最終的に防護服を脱いだが、特段変化はなさそうなので普段通りの姿で配信することにした。


<ふぁっ!?>

<えっ、なんで防護服脱いでんの!?>

<普段通りの恰好で火山フロアにいるんだけどw>

<【5,000円】「パンプキン」えっ、かずやんさん暑くないんですか?氣を纏っても暑いと思うんですけど…>

<パンプキンキタ――(゚∀゚)――!!>

<パンプキンも火山フロア経験あるんだ!>

<「パンプキン」ありますよ!うちのタンクは軽量の装備に切り替えてチャレンジしましたね。かずやんさんみたいな服装で挑むなんてできなくて、暑さに負けて早々に撤退しました…>

<それが普通、火山フロアとか氷山フロアを攻略できるのってSランク以上とかでしょ?>

<Sランクでもさ、この前赤羽トランジスタが雑談配信で火山フロア踏破失敗したときの話してたよな!Sランクでも挑めるけど踏破は難しいのかも?>



「パンプキンさんこんにちはー!氣を纏ってると暑さは感じないですねー。期待に応えられるかわからないけど配信していきますよ!ちなみにこのダンジョンは下層が3層でフロアボスはメルトシェルクラブらしいです!」

<メルトシェルクラブって火山のマグマに住む巨大なカニ型モンスターだっけ?>

<よく知ってるな!?>

<図鑑で見たことあったんだよ>

<カニって強いの?>

<手がかなりデカくて一撃が重いらしい、あとマグマを吸い込んで、高温の泡として吐き出して攻撃したりするらしい>

<うわー…物理的な攻撃メインじゃん…相手したくないな>

<でもカニかー…そりゃかずやんは攻めるよなー>


「ははは…カニって中々買わないじゃないですか!なので…久々のカニで結構楽しみなんですよね!」

<【1,000円】フロアボスを攻略する前提で草>

<緊張感仕事しろー>

<ひさびさというフラグどこいった>

<まあ…かずやんですし…>

<火山フロアで暑さを感じない氣を纏えるぐらいだし…>

<「はじめ」とりあえずカニ待ちで出社すればいいっすか?>

<【10,000円】「姫っちゃん」カニ料理期待していいんですか!?>

<はじめちゃんちーっす!>

<ちーっす!>

<カニ食うために出社w>

<姫っちゃんもwww>

<【666円】絶許!絶許!絶許!>



「ははは…討伐できたらな。ただ討伐できなかったらなんてないぞ?」

<うらやましい!>

<【1,000円】従業員募集してないんですか!>

<メルトシェルクラブって売ってんの?>

<高級料亭とか旅館で出てくるぐらいしか見たことないかも…>


「従業員は今はまだ募集してないんです!あれですよ?まだ討伐できると決まったわけじゃないですからね!」

<【100円】フラグ乙!>

<できないわけがない!>



さて、身体も慣らし終わったので探索を開始する。

早々に姿を現したのは…。


「あのトカゲ?サイズはワニだけど、あれは…サラマンダーですね!」

ワニみたいなサイズで見た目はトカゲはこちらに気付いたのか口を大きく開ける。


ゴウッ!!!


「うぉっ!」

先ほどいた場所がジュッ!っという音と共に地面が溶ける。

見た目はウーパールーパーみたいで可愛らしいが、サイズとやってることはえげつない。


<【1,000円】サラマンダーキタ――(゚∀゚)――!!>

<見た目はあれだけど火吹いた!?>

<溶岩が溶ける火って…えぐいな>

<サラマンダーってトカゲサイズじゃないんか!?普通にデカいんだが…>


「見た目ワニっぽいですが、味はワニっぽいんですかね?それともウーパールーパーよりなんですかね?鳥と白身魚がミックスした感じの味は想像しがたいので…どっちかにして欲しいですよね!」

<いやいや…そこは強さじゃないのかw>

<味の心配してるの草>

<地面溶けた相手の攻撃を気にしろよww>

<色々とぶっ飛んでるな…嫌いじゃない>

<でも鳥と白身魚は一緒には食べないなー>


連続して5回ほど火を吐いたところで、火を吐くのを止めたサラマンダー。

どうやら、体内の火の貯蔵量に制限があるのかもしれない。

震えるサラマンダー。


攻め時か?俺は地面を蹴り、距離を詰め――。

カチンッという音と共にサラマンダーの表皮から火が噴き出る。


近付きすぎて熱さが肌を刺す、咄嗟に近くの溶岩を蹴り飛ばし距離を取る。


「あっつ!遠距離は火を吐いて、チャージ中は身体から火が出るんですね!?これってサラマンダーの身に火が入ったりしないんですかね?」

<心配どころ(以下略>

<ドラゴンとかにもあるっていわれてるけどさ火炎袋で体内は守られてるんでしょ?>

<外皮はどうなん?>

<ゼリー状の膜を張っててその上が燃えてるんじゃないかな?>

<カチンッって音は膜を着火した音ってことか!?でもカチカチ山の狸みたいにならない?>

<例え方よw>

<視聴者も緊張感のないの草>

<【500円】耐火服でサラマンダーウールってあるだろ?ってことは自分自身は燃えない。熱さを感じているかは知らんけど>


ふむふむ…燃えない=焼けないとはならないだろうけど、ひとまず食材の心配はなさそうだ。

あとはあのサラマンダーの皮はいい値段になることも分かった!


「ありがとうございます!なるほどなるほどー…サラマンダーは食材にも素材にもなるんですね!」


シューッと身体を覆っていた火が消える。

サラマンダーがこちらに向けて口を開いた。

どうやら火のチャージが終わったようだ!


火を吐いている間が攻撃のチャンス!

改めて地面を蹴って距離を詰める。


吐き出される火に髪が少し焼かれ焦げ臭いが、気にしていられない。


2発、3発、4発の火を避け距離を詰める――。


そしてサラマンダーの目の前に到着した俺は、サラマンダーの口を無理やり閉じるように下から潜り込んでアッパーをぶちかます。

どうやら砲台と化したサラマンダーは即座に動けないようで回避する仕草もないまま宙を舞う。


重力に逆らうことなく地面に叩きつけられたサラマンダーはピクリともしなかった。


<うぉー!!>

<【1,000円】かずやん最強!かずやん最強!かずやん最強!>

<アッパーで一発って…>

<ワンパンm…>

<それ以上はいけない>


「いやーまだフロアボスでもないですからね!でも火山フロアでも自分の実力が通じるかもしれませんね!」


グロフィルターをオンにして、解体作業を開始する。

火炎袋も売れるし、皮も売れる。肉も特に傷んでなさそうだしどんな味がするのか楽しみだ。

解体したものはマジックバックに即座に詰め込んでいく。


「よし!解体も終わったので次々進んでいきますよー!!」

下層2層に向かって歩みを進めた。


―――――――――――

カニって中々買わないですよねー…


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