第58話 スパイス

マジックバックの整理を兼ねて、時間がある時は社員食堂(無料)を行うことにした。

不要なドロップ品や、解体した肉の一部はギルドに卸しているんだけど、細切れ、ぶつ切り、スライスなどカットした肉や、ロック鳥の溶き卵などは売ることもできず自家消費しないといけない、マジックバックにはそういった物を多数入っている。


正直な話、一人暮らしでは正直使い切れない。


マジックバックに入れておけば、腐ることもないので地道に使っていけばいいというのもあるんだけど、一度探索するとめちゃくちゃ在庫が増えるんだ。

かといってそういう食材をギルドを介さずに売ったりすると、色々問題になってしまうこともあって、無料で社員還元してしまえと料理を振舞うことにした。


ただ無料で振舞うだと恐縮されてしまうので、広報活動の一環として社員食堂のメニューはYに作り方と一緒に投稿をするようにした。

これが中々評判で投稿時の反応が良い。

調理時間の掛からない料理であれば、料理の生配信を行ったりしている、そんな取り組みからかYとMouTubeで主婦層と一人暮らしの登録者数がここ最近うなぎのぼりに増えている。

また投稿と配信から見えてきたのは、栄養満点、時短、かさ増し、手抜きといったワードが特に人気がある。

使う食材はだいたい置き換え可能なので、日々のメニューを考えるうえで参考にしてくれているようだ。


中には、従業員って雇ってないんですか!?みたいなことを言ってくれるんだが…。

今のところ、はじめと国立さんが余裕をもって対応できる仕事量に収まっているので今は従業員を募集していない。


今日の社員食堂も終えたら、午後からは外回りだ。



車で行きますか?と国立さんに言われたが、都会での渋滞は致命的だし、変装すれば特に気付かれることもないので公共機関を使うことにしている。

電車を乗り継ぎ、いちむらの本社ビルにたどり着いた。


さてさて今回は…企業案件だ。

マネージャーとして国立さんが付き添ってくれている。


「はじめまして、かずやんさん!あっ高円寺様のほうがよろしいでしょうか?」

「えーと、かずやんで大丈夫ですよ」

かずやん呼びも定着したなーっとしみじみ思う。


「今回本社にご足労いただいたのは、弊社でかずやん監修のオリジナルスパイスを発売したいと思っているんです!」

では早速と、R&Dを行っているという調理室に案内されて席に着くと、分厚い企画書が手渡される。


「今回は、サンプルを30種類用意しました。もし販売して好評でしたら第2弾、3弾と続けていきたいと思ってます!」

ふんすっ!と鼻息が荒い。

企画書をパラパラとめくってみると、図と文章で何を推したいか、どういう料理に合うか、かずやんとスパイスの選定理由と…企画への熱意と愛が伝わってくる。

その中で、カレースパイスというのが目に入った。


「あっ!カレー味のスパイスですね!ターメリックとコリアンダー、クミンをはじめとして、お酒に合うようカイエンペッパーで辛味を強めてます。カレー風味でスパイスもしっかり効いているので肉や魚などの料理にベストマッチしますよ!ただどうしてもカレーはほかの味に勝ってしまうのが難点ですね。よかったらこれでお試しください」

水と、一切れのお肉にスパイスを振って出してくれたので食べてみる。

「口に入れるとカレーの風味が際立ってますね!その後はカイエンペッパーの辛味が…ってこれ…あーっ!!!か、辛くないですか!?」

「あはは…これはかずやんさんをイメージしながら作ると、どうしても辛さマシマシにしちゃったそうです」

どういうイメージをしているんだ…。

確かにお酒に合うけど、これを食べてほかのものを食べることが全く想像できないな。


「美味しいですが、これはちょっと…厳しいかもですね」

「ですよねー…ではこれなんてどうでしょうか?」


多数のスパイスにローストガーリックを食感が残るように砕いて絶妙なバランスで組み合わせたパンチと風味を追求した一品らしい。

こちらも肉や魚に合うように作られていて、スープに振りかけると格段と味に深みがでるようになっているらしい。


あらためて一切れのお肉に振りかけて食べてみる。

ローストガーリックの食感と複雑に絡み合うスパイスとハーブ、後味にふわっと香るこれは…?

「これ…めちゃくちゃ美味しいですね!後味の風味?これがまた食欲をそそります」


「おっ、あえて言わなかったんですが、風味に気付いてもらえてうれしいです!こちら燻製醤油を粉末にして少し混ぜています」

「燻製醤油ですか?醤油って燻製できるんですねー」

「そうですね。試しに燻製醤油だけ試してみますか?」

スプーンに少量の燻製醤油を入れて渡してくれる。

「うわっ!めっちゃ旨みありますね!これ出汁とか入れたんですか?」

「いえ、こちら弊社の醤油を燻製しただけなんです。」

燻製したチーズや卵も美味しいが、醤油を燻製するとこれは今までにない旨さだ。


「うん、これいいと思います!軽く振りかけて焼くだけで一品になりますし、オリーブオイルに混ぜたらドレッシングにもなりそうですね!」

「高評価でうれしいです。ほかにもこれをベースに燻製塩にしてみたパターン、ローストガーリックの分量を減らしたバージョンなど色々用意していますよ!」


このあとも様々なバリエーションのスパイスを食し、一番いいと思った組み合わせと分量の比率が見つかった。

この比率にたどり着くまで気付けば4時間経過していた。

試食を何度も繰り返して正直もう何も食べられない。


「ご協力ありがとうございます。スパイスの組み合わせと比率、いただいたご意見を元に商品開発を進めますね!」

「はい!よろしくお願いします!」

今後の計画を話し合った後いちむらの本社ビルを出る。


「お疲れ様です。高円寺さん!」

「あぁ…国立さんも結構長期戦になったけど付き合ってくれてありがとうね」

「これがマネージャーの仕事ですから!」

本日の仕事も無事終わったー。

俺監修のスパイスって全く実感がわかないが、出来上がるのが楽しみだ!


―――――――――――

アウトドアスパイスって種類が豊富に出てて選ぶ楽しみがありますねー

オリジナルスパイスは我が家では焼肉の必需品です!

かずやん監修スパイス…どんな仕上がりなのか気になるー笑


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